私と彼女の『百合』戦争。——百合少女はわからせたい——
上埜さがり
第1話 夢中りめんばー
『百合……だっけ。こういうの、ちょっとわからないな』
私の理性を失わせるのは、大抵こういう言葉から始まる会話だった。
『女性同士の恋愛がどうこう言うわけじゃないけど……ちょっと夢見がちって感じ』
夢を見て何が悪いのか。外国のプリンセスだって、日本のかぐや姫だって、そんなキラキラした物語を目にして、いつだって人間は目を輝かせてきたんじゃないか。
『別にさ、それ、男の子が相手でも良くない? って思っちゃうんだ』
良くない。NLにも、BLにも、言うまでもなくGLにも、それぞれに意味や意義があり、それぞれに輝くものがある。
そしてその輝きは、決して混じることのない、いわば固く結晶化された宝石みたいなものなんだ。私は専ら百合専だが。
『そうやって話す時のわかちゃん……あはは、ごめんね。でも、ちょっと……キモいよ』
キモ、くて、何が悪い!
自分の好きなものを否定されて、黙っていられなくて、そして奮い立つ私の姿が気持ち悪くたって、何が悪い! あ、ごめん、ちょっと涙出そう。
……わからせてやる。この目の前の、『私は現実を知ってるから、そんな夢物語に憧れたりしないんだよね、ぷぷぷ』とでも言いたげな、お年頃の女をわからせてやる。
ありとあらゆる手を尽くして、百合沼にハマらせて、最終的に『あぁ、百合ってこんなに素晴らしいんだね! 私の目が曇ってたみたい!』などと、そのリップを塗ってプルプルになった唇から吐き出させてやる。絶対に、絶対に——。
「わからせてやる!! ぁ痛ってぇ!!」
寝ぼけてベッドボードぶん殴っちゃった。手が、手が痛ひ。
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