第56話魔王



羊の頭にコウモリの羽は、血だらけでボロボロだ。

片足になって、まともに立てない。


そんな体を左腕と右足で体を支えるみじめな悪魔。

いつ死んでもおかしくない。


そんな状態でも俺達を睨み続ける。



俺の目の前には、切断された鉤爪かぎつめの右腕が落ちていた。


【我にわざわいをもたらした者よ。なにが望みだ】


なんて恐怖を感じさせる声なんだ。


「なにも!のぞんでない」


「そうよ・・・あえて言うなら好奇心でここまで来たのよ!みんなもそうよ!」


【そんなことのために・・・ならば受入れよう】


「あ!建物が揺れだしたぞ」


【さらばだ。災いをもたらした者よ】


建物を支える支柱が倒れる。

それもドミノ倒しのように、そして落下物が・・・


「え!私達を生き埋めに・・・」



突然、光がかがやきだす。


「なんだ、このまぶしさは・・・」



「え!・・・ここって深層のダンジョンがあった場所よ」


あ、あの岩に見覚えがあるぞ。


しかし、ダンジョンの穴だけがなかった。


「私達、戻って来れたのね」


それに仲間のスケルトンも・・・白い鳥は、空を自由に飛んでいる。

ピラミッドで仲間にった魔物も健在だ。


その数は1万を超えている。


「あれから私達は、どれくらい戦ったの・・・最後のボス戦も交代で戦ったけど・・・日にちなんて分かるハズも・・・」


食べ物になる肉や野菜を収納してなかったら生きていけなかっただろう。

仲間の魔物には、魔石や倒した魔物でなんとか凌いだ。

今日は何日なんだ・・・


「我が家に帰れば分かるさ・・・今から瞬間移動を発動するから・・・全員は注目!」


「え!それって・・・」


あの悪魔を倒した時に、俺は凄まじいレベルアップを感じた。

なので、仲間を意識して瞬間移動を発動する。



「あ!我が家だ!」


「このスマホ!8月9日になってる!323日も経ったの・・・そんなに」


俺もスマホで確認。そんな・・・ギルドからの着信が一杯だ。


【帝都を発見して自衛隊とアメリカ軍と一緒に戦う積もりだ。今だに連絡が取れないが、どうか俺達の勝利を願ってくれ。・・・7月1日 田宮より】


それ以降の着信が無いぞ。


ナナも着信を見て驚いていた。


「私達も行って戦うのよ。ここにゲートからの距離情報が詳しく書いてあるわ。ユウと私達でドラゴンに乗って行ってから仲間を瞬間移動すれば、なんとかなるかも・・・」


「行くしかないな・・・」


ドラゴンの大群を引き連れて飛んだ。

そして、遅れながら飛行可能な仲間も飛んでついて来ていた。




「あと少しよ・・・あ!あれは・・・」


戦車の残骸があっちこっちに散らばっているぞ。

そして人の死体も・・・


「なんて惨い・・・」


「あれが帝都なの・・・結界が何重にも張られて・・・破壊は無理よ」


その結界越しに見えるは、儀式のような・・・

この戦いで日本人を捕まえて数が達したのか・・・なんと皆殺しにする積もりだ。


おぞましい思念が・・・


俺の怒りが頂点に達した。

暗黒魔法と光魔法を発動。黒い闇と光りが融合して結界に亀裂が幾重にも入る。

そしてバリパリッと結界を破る。


そして、仲間を一気に呼び寄せた。


ドラゴンも大暴れして、呼び寄せられた仲間も暴れだす。


「日本人には、危害を加えるな・・・助けるのが優先だ」


助けられた人達も兵を襲う。

武器を奪って兵の首を切る。

しいたげられた怒りが爆発。


生きたまま食われる住民。


スケルトンが兵を追い駆けて馬乗りになって首に噛み付く。

出血多量で死んだ兵が立上がる。そして近場の住人を襲いだす。



「なんと・・・この光景は、神の啓示と同じでは・・・これは魔王・・・魔王が復活したのか・・・我らは、間に合わなかったのか・・・」


「なにをごちゃごちゃ言ってる。お前が、この儀式の責任者か!」


「帝国を守るには仕方なかったのだ。全て魔王のお前のせいだ!!」


「お前がゲートを開かなかったら、こんなことにはならなかったんだ。思い知るがいい」


白いローブをまとう老人を結晶刀で真っ二つに斬る。


「なぜに、なぜ・・・」



俺の怒りが爆発した時に、帝国のあっちこっちの都市や村に紫の雲が発生。

そこに住んでいた全て人を殺していたらしい。


帝国が阻止しようとした災いが起きて、帝国を滅ぼした。


「ユウ!田宮さんが生きてたよ」


鎖に繋がれている田宮さんやギルドメンバーも生きていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲート向こうへ逃げた @katuniro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ