第20話オークション




我が家に帰ってのんびりしてたら、急にフッとスマホを思い出す。


あの事件後は、着信やバイブ音がうるさいのでサイレントスイッチオン状態のままだった。


え!どれだけのメールだよ。

もうスライドさせるのも疲れる程にメールが来てるぞ。


「なんだこれは・・・」


「何かあったの」


「そっちにも来てないかな、政府のメールが・・・政府が海外のコミュニケーションアプリ使用禁止にしただろう。だからメールを見たら一杯だよ。迷惑メールも重犯罪になって良かったんだが、政府メールが・・・」


「それなら完全無視でいいよ。わたしも無視だし」


「これって日本に逃げた人からだよ」


「メール交換でもしてたの」


「うん・・・」


「警護オークの1体が死んだことが書いてるわ。ごめんなさいってあやまってる」


「日本に行って色々驚いたけど、1番驚いたのが覚醒者として第一線で活躍してることよ。年俸1億円ってニュースにもなってるの知らないの」


「1億円って本当かよ・・・シズなら1億円も楽だな」


「それはダメよ。どうしてもって時に使うべきよ。シズが言ったでしょ・・・未来はコロコロ変わるって。それってシズや私たちが原因かも」


「おいおい、怖いこと言うなよ」


「シズが言うには、あの男の1人を殺した場面も見たって・・・」


「・・・・・・・・・」


皆が互いの顔を見渡している。

それ程の衝撃の内容だった。

あの時は、たしかに俺ってイラッとしてたな・・・俺が対応してたら殺していたのか・・・


嫌な考えを振り払うように、スマホを見た。


「田宮さんのメールだ。武器や魔物の素材が欲しいって、リサには悪いが待ち合わせ場所と日時を連絡してくれないかな・・・」


「素材を日本政府に売るの・・・きっとここの素材を日本経済の活力剤にする積りよ」


「仕方ないだろ。錬金術で作った武器は、ゴブを筆頭に嫌だって・・・なんて言ったと思う。へなちょこ武器なんか使いたくないって、結晶武器がお気に入りで手放さないだよ。だから在庫が一杯なんだよ。せっかく作った者として使われない武器を見る度に落ち込む気持ちって分かるか・・・」




「行って来たよ。すぐに会いたいって・・・場所は例の競馬場。人が多くて下手なことができないから」


「いい考えらだ。早速行くか」


「あれ!もう行ったの・・・」




不景気だと競馬場は儲かるって本当なんだな。

競馬新聞を一生懸命見てるよ。



「あ!田宮さんだ」


「ちょっと待て、どうやら囲まれたみたいだな。全て知ってる顔だ」


「田宮さん、わたしをだましたの・・・信じられない」


「何か勘違いしてるよ。武器を持って来たんだろ。武器を買いたい連中を連れてきただけだから変な心配は無用だ。それに命の恩人を裏切れないよ」


ああ勘違いか・・・だから殺気がなかったんだな。


「ここで見せられないから近くのホテルで見せてくれるかい。荷物はどこに・・・」


「新たに習得したんだ。有名なポケットみたいになんでも持ち運べるから大丈夫だよ」


「え!そんなのがあるのか・・・」


何もない所からヌーウッと剣を引き抜く。


「分かるぞ!凄く切れる剣だぞ。ドラゴンでも切れる名剣に違いない」


「彼は鑑定を習得して、なんでも鑑定が出来るんだ。彼が言えば間違いなく名剣なんだろう。この剣の相場は・・・」


「いやいや考えてないよ」





ホテルの部屋でずらりと並んだ武器。


鑑定士は、紙に書きなぐって貼り付けるのに必死だ。

もう、驚愕する覚醒者。


今まで使った剣や刀や槍がおもちゃのようなレベル差でどうしようもない。


「この大斧で軽くなったり重くなったりするって、あり得ない使用方法だぜ。え、魔力に反応するのか」


自分に合った武器が欲しくてたまらない連中だ。

全然知らない者も混じってるぞ。


沢山の武器があっても1番の武器を選ぶのが人間だ。


もう、何人かは睨みあっている。

何か切っ掛けがあれば騒動になるだろう。


田宮も危機感をいだく。


「これはオークションだ。金で勝ち負けを決めよう」


「ローンもありか!」


ゴブらに作った武器だからな、金には執着してないぜ。


なんだよ一斉に俺を見るな。


「仕方ないな・・・ローンもありだ」


「やったぜーー返済期間は」


「おいおいやめないか・・・こうなったらギルドみたいな組織を作ろう。そこで金のやり取りするんだ。今後も必要になってくるだろうし、榊も新たな武器も作ってくれるハズだからな」


「俺は賛成だ。しかし、女性を連れて来なかったのは不味いぞ。女性の魔法攻撃を爆上げする杖があるからな」


「お前らで杖が欲しい奴はいるか・・・居ないようだな。ならこっちが管理して女性達に話してオークションを再開するってのはどうだ」


「それなら文句もあるまい」


「女性陣は、怒らすとやっかいだからなーー」


思い思いの金額と名前を書いて、欲しい武器の下に隠す。


「この刀の最高金額は、1億5千万円。大谷に決まったぞ」


「ワイバーンの素材が売れて助かったぜ。一週間前なら払うことも出来なかったぜ。現金で払うからな!」


「ワイバーンってそんなに儲かるのか」


「儲かるぜ。死体の状態が良ければの話だ。主に倒すのは魔法使いだ。丸焦げやバラバラなら2千万だな」


「奴はどうやって倒したんだ」


「超高層ビルからダイブして仕留めたらしいぞ。むちゃする奴だからな」


こっちの覚醒者は、儲かってんだな。





葵美咲香あおいみさかの手の中には魔法の杖があった。

遠く離れた海にメテオを発動。



それを高性能カメラがとらえ続ける。


「上空にエネルギー反応が!高度と規模で被害予測範囲2キロです」



「今までの2倍の流星群だぞ。なんなんだこの破壊力は」


「特別ゲート省庁の見解は」


「魔法の杖は解析不能と報告が上がってます」


「何て役立たずな省庁だ。潰してしまえ」


「総理、それはおやめ下さい。まだ1ヶ月しか経ってません。誰がやっても無理です」


「それで、どこの誰だか分かってるのかね。ここで分かりませんでは済まないぞ」


「は、はい。持って来たのは田宮ですが、榊勇がゲート向こうから持って来た物だと」


「例の男だな・・・連絡は取れたのかね」


「電話もメールも完全に無視です」


テーブルを思いっ切り叩く総理だった。


「総理、血がでてます」


「うるさい!それぐらい分かってる!」



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