第15話犯行動機
武蔵小杉駅周辺は、夜間でも明るくライトを照らして警戒中だった。
なぜなら駅前の数棟のビルには、東京方面奪還の本部が入っている。
その1棟に、覚醒討伐本部も入っていた。
そんな、覚醒討伐本部で赤い点滅と警戒音が鳴り響く。
「え!なんて言ったの、オーちゃんが死ぬハズがないわーー!」
「夜間第3覚醒討伐部隊からの連絡だ。ドローン撮影でも異常を感知。その映像をすぐに確認したから間違いない。俺も悔しいよ」
3メートルもある天井までテーブルが当たり、ボード突き破り引っ掛かっている状態だった。
今にも落ちそうで不安定なまま、テーブルはブラブラとしている。
葵が力の抑制ができていな状態を知り覚醒討伐本部の人間は、一瞬で凍りつく。
流星群を落とす程の魔法使いが怒ったからであった。
暗黙のルールで「「下手に葵に係わるな」」と入隊時に誰彼なしに囁かれている。
前歯をへし折られた話や2度と立てなくなった男の話などが・・・噂されている。
覚醒討伐本部の夜間を任された後藤は、討伐支援者となった田宮に近づき「何とかしろ」
「え!俺が・・・」
「夜間シフトのここには・・・お前と葵しかゲート生還者はいないのが分からんのか・・・責任取って対処しろ」
田宮は、葵に近づき囁いた「気になることがあるんだ。一緒に映像を見てくれないか・・・その時に詳しく話すから」
キッと田宮を睨む葵だった。
「後藤さん、夜間の討伐はキャンセルよ。それぐらいしてもらわないとわりに合わないわ」
皆に注目されながらその場をツカツカと去った。
慌てた田宮も後を追い駆ける。
2人して映像室に入った。しかし、先客が居る。
「悪いけど2人は出てくれる!」
「え!なんでだ」
「バカ、よさないか・・・俺たち出て行くので・・・」
もう1人が強引に腕を引張り出てゆく。
USBメモリを差込んで映像を映し出す田宮。
「この映像がオーを映したものだ。こっちの映像は、ナーガから逃げてる覚醒者を追った映像だ」
「え!何が言いたいの・・・そのナーガがオーちゃんを襲って殺したのよね」
「おかしいと思わないのか・・・あの覚醒者は、もっと逃げやすい場所があったぞ。はら!この場面なら俺は右に逃げた。隠れる場所がいくらでもあったからな・・・それを左に逃げて無理してオーの後方になすり付けたようにみえないか。俺は、そんな風に見えたんだ。ほら、この場面でナーガがオーを発見して睨みを発動。石化が始まるまで10秒・・・それなの逃げた覚醒者がオーに何も言わないってあり得ないぞ」
「なんで、そんなことをするのよ・・・」
手を強く握り過ぎりて握った手から血がしたたり落ちていた。
そんな血を見ながら難しい顔をする田宮。
「だから神がかりのサチの出番だと思わないか・・・」
「成る程、サチなら全てがお見通しで、なぜそうなった原因まで分かるハズね」
「サチは、今が大変な時だがオーとミサカの頼みならやってくれると・・・」
「分かった。わたしから連絡しておくから、あの覚醒者の情報を頼むわ」
「言い出したのは俺だ。それに、オーには世話になってるからな。これぐらいして当たり前だ」
- - - - - - - -
「総理が来たぞ!」
大勢の記者やカメラマンに囲まれて仕方なく対応。
「総理、今回の事件ついてお願いします。国民に伝える義務があると思いませんか?」
「義務か・・・本当に
テレビカメラが裁判所に入っていた。それも生中継で放送されている。
まさに異例ずくめで始まった裁判である。
全世界で初めての人間以外の殺人で裁判が開かれた「オーク殺人事件」
「あなたに対する内乱罪で審議します。あなたの名前は何ですか?」
「佐藤浩二です」
「職業は何ですか?」
「自衛隊員で覚醒訓練を受けていました」
「検察官、起訴状を朗読して下さい」
「被告人は、ナーガを誘導してオー被害者を石化させて死に至らしめました。今、日本は
「被告人は、起訴状の中で違うところはありますか?」
「わたしは、殺しも内乱もやってません」
「弁護人の意見は」
「被告人は無罪です。被告人がナーガを誘導したことはありません。これは事故です。内乱罪にあたりません」
「検察官、冒頭陳情をどうぞ」
「被告人は、5月21日の0時35分にナーガに遭遇。ドローン撮影で容易に逃げられたのにワザとオー被害者まで誘導したことは映像でも明らかです。被害者オーに「危ない」の一言も発していません。そして、石化したことを確認したのに報告もありません。我々検察官は有罪判決を求めます」
「弁護人、意見を」
「映像には、そう見えるかもしれませんが被告人は追われていてパニックになってオー氏のところへ行ってしまったのです。パニックなら「危ない」も言えないまま見て逃げただけです。なんの悪意もありません。被告人の無罪は明らかです」
「それでは、証人尋問に移ります」
ツカツカと現れたのは、まさに有名な[神がかりのサチ]であった。
覚醒者になって病人や重傷者に手を触れて、自分自身に病気や重傷を移転させて完治させる奇跡を披露。
病気や重傷を移転させて、痛みも身を持って受けるシーンは感動しかない。
しかし、彼女には知られてない、もう1つの能力があった。
「証人、被告人の考えを話して下さい」
「被告人は、新宿奪回作戦に参加して多くの仲間をオークに殺されました。自身もオークに恐怖して仲間を見捨てて逃げたのです。それが許せなく、オークのオーを殺すことを考えるようになって計画を立てて実行しました。本人の心は、そい言ってます」
「検察官は以上です」
「弁護人は反対尋問を・・・」
「これが証人とは・・・資料を読みましたが、相手の心が読み取れるなんて信じられません」
「それなら、あなたの人生で恥ずかしいことを思いだして下さい」
「なにを失礼な・・・」
「あなたは、中学生の頃にエロ漫画を女性店員に差出すことができずに万引きしましたね」
「なにをバカなことを言うんだ。捕まってもいないのに・・・」
弁護人はしまったと思った。
「まだまだあります。司法修習生時代に電車で痴漢をして見つかりそうになり他人に罪までなすり付けましたね。その人の名を言いましょうか・・・」
「嘘だ!嘘を言うなーー!!」
弁護人は、証人のサチを殴りかかる。
しかし、サチがギュットと弁護士の手を掴んだ。
「放せ、放しやがれーー!」
警備の人によって取り押さえられた。
弁護士は、その場で泣き崩れた。そして傍聴席がざわつきだした。
「お前は、それでも弁護士か・・・弁護士失格だ!」
「辞めろ!辞めろ!」
「静粛に!」
裁判長は、裁判が不可能と感じる。
弁護士がわめき散らして法廷の外へ連れ出されたからだ。
「休廷にします」
テレビでの生中継が止まり、特番ニュースに切り替わる。
「佐藤浩二の弁護士が捕まりましたね」
「あれじゃー犯人にされた人は可哀想だ。わたしが無料で弁護を引き受けよう・・・同じ弁護士として情けないわ」
「それでは弁護士資格剥奪ですか・・・?」
「当たり前です。あんな者に弁護する資格などないわ!」
裁判所は、代わりに国選弁護人をつけて再開。
その日に判決が・・・被告人の死刑判決がくだされた。
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