旅人

星々を巡る旅人は



数多の星を巡ります




多くの道を辿ります




綺麗に整えられた綺麗な道を辿ります





旅人は嫌な気持ちになり居心地悪く、その道を歩きます






旅人は





ある日ある星に辿り着きます






冷たく硬いブロック






寒さが乱立する可哀想な場所でした







人々は瓦礫のような心で、いつも何かを求めています








どれだけ手に入ろうが、人々はいつも求めています









乾いた砂漠で喉が渇くのと同じよう








いつも何かを求めています









自分が何を欲しいのか









単純なこたえを失くした人も、飽きることなく求めています








満たされないことを不満がり、自分だけしか見えません








硬い心がぶつかって








硬い心がぶつかって









大きな爆破が起こります









誰かのせいだと誰かを指差す人々は









誰も自分を疑いません









みんながみんな、誰かに指をつきつけます










偽物の正義は炎の雨を降らします








何もかもが粉々で






何もかもがぐちゃぐちゃです







それでも誰も変わりません






ひとびとは誰かを指差し叫びます





瞳はいつでも鏡同然







硬い街は壊されて








誰かを責める心だけ










尖った鎧を身に纏い








炎の荒地に残されます









旅人は何も言わず去りました








別の星に向かうのです








いつかのいつかにある星で、旅人は大きく息を吸いこみました








緑に溢れた高原に









誰にもつくれぬ澄んだ水








誰にもつくれぬ清い風








いつか消え去ったいきものまでもが








豊かな土地に羽を休め







戯れ








必要なだけの争いで











穏やかな時を過ご星










誰もかれも多くは求めません









誰もかれもが知恵も持ち得ません









知恵を持たない人々は、何もかもを責め立てず






何もかもを本能に従います







旅人は嬉しく思います








そんな彼の足元を、りんごを抱えた蛇がそーろそろ






真っ赤なりんご






甘く香る魅惑の実








世界を知ってるまっかな球体







旅人は蛇を裂きました






焼きました







りんごを踏みつけ砕きます






何度も何度も砕きます






そうして二度とその身が実らぬよう






ゆらめく炎に投げ込みます







誰のもとにも届きません








若い生き物は2人







空っぽのままです







旅人はにっこり






世界を集めた赤い実は







塵になり風と消えます








今日も変わらずのどかなままです







平和です








無知です








本能のままです








何も知り得ぬこともまた、幸せなのだと








旅人は厩(うまや)の奥に消えました







空っぽの星は







いつまでも空っぽでしたが








いつまでも豊かなままでした






何もなく







何も失われない星は








今日ものどかに巡ります

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