第5話

「ただいま〜」


 美々の母親である藤田祐子が帰宅して玄関のドアを開けると、床がものであふれていた。


 「ちょっと!美々!ものを散らかしてなにやってるの!」


 リビングの扉を開けると、美々が泣きじゃくりながら探し物をしていたら。


「お母さん、無いの。美々の子供の頃の写真や動画が」


 遂にこのときが来てしまったと祐子は悟った。かなり前からこの状況を想定してシミュレーションをして準備をしていた。しかしながら、実際に遂行するとなると気が重く、緊張してしまう。でも、やらないといけない。私たち家族のためにも、そして、人類のためにも。


 

 気がつくとベットで寝ていた。写真を探していたはずなのに。


「再起動しました。パスコードを入れてください」


 また、どこからか分からないが声が聞こえる。次に目を開いたらお母さんが目の前にいた。


「美々、起きた?」


「お母さん」


「なにか聞きたいことがあるんでしょ?」


「わたしの、私の子供の頃の記憶はあるのに写真や動画がどこにもないの」


「ごめんね。思い出として記憶は用意したけど、写真や動画は準備してなかったの」


「どういうこと?私はお母さんの子どもじゃないの?」

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