第46話 イーデンちゃんの中の人 熱愛報道
「ダテさん、おっしゃっている意味がわかりませんわ」
『イーデンちゃんの母親には、人間の恋人がいたんだよ』
ひとまずマージョリーたんには、設定上のシナリオを説明する。
実際のところ、イーデンちゃんの中の人は不倫をしたのだ。
イーデンちゃんの中の人は、当時若手ナンバーワンと言われていた。
このゲームは、トップ声優を生み出し続けていたシリーズである。当然、注目度は高かった。
しかし、スキャンダルが女性誌にすっぱ抜かれてしまう。
『人気女性声優の〇〇、ゲーム会社社長とお泊りデート!』
報道はたちまち、ネットで拡散された。しかも、妻子ある男性との交際ということがなおのことタチが悪い。
イーデンちゃんがいい子なだけに、この声優さんの悪評は後味が悪いよね。演じたキャラは、何も悪くないのに。
叩かれても、女性声優は開き直り、未だに業界を干されている。
この報道があったせいで、イーデンちゃんの設定は大幅に変えられた。
「我は、貴様の母を愛していた。しかし、人間の男と結ばれ、逃げたのだ」
二人は愛し合っていると思われたが、イーデンちゃんの母親には、当時交際していた男性がいたのである。イーデンちゃんの母親は、彼の元へ逃げていった。
「怒りに震えた我はケフェスを差し向け、ふたりとも殺害した。お前が生きているとわかっていたが、彼女と同じ年齢になったら殺すと決断したのだ。彼女と同じ苦しみを与えようと」
世話してあげた新人声優を、寝取られたと誤解したんだね。その人には脚本家に対する愛情なんてなかったのに。
しかし、思い上がった脚本家は、シナリオの中で新人声優を殺すことしか考えられなくなった。
「あなたが母を、大切な人から奪ったのではありませんか! あなたに愛を語る資格なんてない!」
「黙れ! おまえなど産まれなければよかったのだ! 誰にも愛されずに死ね! この我のように!」
魔王が、ギルガムの死体に魔法をかける。
「貴様らなど、我自らが手を下すまでもない! ええい、いつまでも寝ておるではないわ。カコデーモン!」
ギルガムのこめかみから、羊のような角が生えてきた。からだもマグマのような赤へと変貌し、体格もたくましくなる。
「やれ、カコデーモン! こやつらを殺せ!」
デーモン化したギルガムを残して、魔王は消えていく。
「ンフフ。人間に化けて世界を魔族のものにというワシの計画を踏みにじりおって。ワシの腹の中で後悔するがいい。ンフフ」
ギルガムの皮を脱ぎ捨てたカコデーモンが、不敵に笑った。
「まさか、ギルガムの正体が魔族だったとは」
『レベルだけなら、ゴーマ三姉妹と互角ほどだろうか』
「それほどの実力か」
『レベルだけで言えばね。今のあなたでも、十分勝てるよ。決着をつけておいで』
「わかった。ダテ殿」
シールドから剣を取り出して、ゴットフリートがカコデーモンを迎え撃つ。
おそらくこれが、彼にとって最後の戦いになる。
「このゴットフリート・グレーデン、長年の因縁を断つ!」
ゴットフリートが、カコデーモンに斬りかかった。
「ほざけ、小僧が! 魔族に翻弄され、国を救えなかったくせに!」
カコデーモンの爪が、ゴットフリートの腕をかすめる。
カウンターで、ゴットフリートはカコデーモンのデップリした腹を剣で切り裂いた。
「大地の怒りを受けよ、【アークサンダー】!」
裂けた腹に、ゴットフリートが大地からの電流を流す。
「にぎゃあああ!」
カコデーモンが、体内に注がれる稲妻に焼かれた。目から煙を上げて、肉体が炭化する。
「終わった……。ありがとう、イーデン殿。ダテ殿。ゼット殿、それに、マージョリー殿下」
剣を収めて、みんなの前でゴットフリートがひざまずく。
「本来なら、魔王の元まで同行するのが筋であるが、グレーデンの立て直しをせねばならぬ。ここで離脱することを、お許し願いたい」
『大丈夫。そういう展開だから。今までありがとう、ゴットフリート。いいえ、もうひとりのゲミュート』
「やはり、お気づきだったか。ダテ殿は」
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