第45話 怒りのダブルマップ兵器

 グレーデンの城にたどり着いた。


「砦は制覇しました。避難してくださいまし!」


 マージョリーたんとイーデンちゃんの誘導で、住民たちを近隣の村まで逃がす。


 この街が完全に占領されていれば、マップ兵器で一撃なんだけど……。


「ダテさん、それはさすがにやりすぎですわ」


『だよね。さすがにゲーム脳すぎる』


 ゲーム画面だと、街なかでもお構いなしにマップ兵器をぶっ飛ばしているが、あれは廃墟って設定なんだよね。


 武器を持って戦おうとしている人もいたが、凶器を取り上げて避難させる。


「おお、マージョリー殿!」


 城まで行くと、ゴットフリート王子が魔物と戦っていた。


「ゴットフリートさま! ギルガムはどうなさいました?」


「ギルガム伯は、城の中だ。しかし、特殊な結界が張られて入れない!」


 黒塗りガラス調のトーム型結界が、城の周辺を覆っている。

 ここまで来て、通せんぼされるとは。


「アマネ姫がテンラを突撃させて破壊しようとしたが、ダメだった。内部から発生装置を壊さねば、ならないらしい」


 詰みじゃん、それ!


「わかりました。わたくしの【ウイング・ブラスター】なら、破壊できるかもしれません」


『それならいけるかも!』


 こんなときにすぐに判断できるマージョリーたん、頼もしい!


「結界が開いたら、直後にわたしも、【アルカナ・フラッシュ】で敵を一掃します!」


 ダブルのマップ兵器で畳み掛ける作戦か。いいね。


『ザコはお願い。ギルガムはゴットフリートに任せよう』


「承知しました。では早速! ウイング・ブラスターッ!」


 私はマージョリーたんの背中に、羽根を展開した。下から上に、城をなぞるように飛ぶ。

 ウイング・ブラスターは、魔物や魔族を内部から破壊する技だ。これなら、ドーム内にある結界発生装置も壊せるはず。

 上に展開するマップ兵器なんて、初めて見たけどね。

 発生装置は、王の間の中央に配置されていた。ウイング・ブラスターの衝撃波を受けて、粉々に。


 ドーム状の黒塗りガラスが消えた。結界が、剥がされたのである。


「よし。アルカナ・フラッシュ!」


 今度はイーデンちゃんが、ドーム状の衝撃波を打ち込む。


 ザコの魔物が一掃されて、王城にいる敵の気配は二つだけとなった。

 一つはギルガムだろう。もう一つは魔王に違いない。


「きき、貴様ら!?」


 玉座に座る太った男性が、ギルガムか。


 魔王は彼の後ろに立っており、不気味な存在感を示す。仮面から、目しか出していない。驚異的なのは、ダブルでマップ兵器を食らったのにピンピンしているところなんだよね。


「おい、魔王ゴーマ! さっさとワシを助けんか! 誰がこの付近一帯の反リシュパン派と統一したと思っておるんだ!?」


 往生際悪く、ギルガムが魔王の襟を引っ張って前へ立たせようとした。実質的な指揮官は、ギルガムだったらしい。


「そうだ。だからもうお前に用はない」


 だが、魔王ゴーマは動かなかった。念力でギルガムを、ゴットフリートの前まで突き出す。


 ゴットフリートは、ギルガムを斬り捨てた。弁解さえ聞こうともせず。


「早くこうしておけば、犠牲を出さずに済んだ」


「おのれゴットフリート、貴様さえいなければ」


 ギルガムは、悪党らしいセリフを吐いて息絶えた。


「貴様が女神の加護を受けた、インテリジェンス・アイテムか。我の計画をことごとく邪魔をして」


『それはこっちのセリフだよ! マージョリーたんを殺すだけのエネミーのくせに!』


「ほざけ小娘が! 我はイーデンを手にし、新たな魔王とする! そのためには、貴様の存在は邪魔なのだ! 我が描いたバッドエンドの邪魔をするな!」


 やはり魔王は、心の支えを奪ってイーデンちゃんを悪堕ちさせる気だ。クソシナリオと一緒だな。


「一つお聞きします。ケフェスを殺したのも、あなたですね」


「うむ。それも我だ」


「だったら、手加減はしません」


 イーデンちゃんのオーラが、さらに膨れ上がる。【神格化】するつもりだろう。

 彼は実質、イーデンちゃんにとってのラスボスだ。


「なぜこんなことを!」


「貴様の母が悪いのだ! 他の男に現を抜かしおって!」


 ははーん。こいつ、イーデンちゃんの中の人のことを言っているな。


「魔王はなんの話をしていますの、ダテさん?」


『熱愛報道だよ』


 イーデンちゃんの中の人は、熱愛報道で干されたのだ。

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