第44話 姉妹、最期の戦い

 マージョリーたんを回復させたことで、イーデンちゃんがレベルアップしていく。【治癒からの学び】によって、マージョリーたんから学びを得たからだ。


「な、なんですって!? ありえない! 戦いによって、戦闘経験は上がるのに!」


「これが、あんたたちとわたしの違いです。攻略にも、穴はあります。こういう戦い方だって、あるんですよ」


 イーデンちゃんが、【神格化】を発動させた。青白いオーラを発し、神へと近づいていく。


「ダテさん、わたくし、姉として誇らしいですわ。妹が、あんなに強く育って」


『そうだね、マージョリーたん。あなたの妹は、強いんだ』


 ゼットさんの造形も、オーラでできたヨロイのような姿になった。


「とはいえ、これで互角というもの! 武器さえレベルアップなんてバカなマネは、あなたには!」


 ケフェスが刀を振るい、稲妻の竜巻を起こす。


 砦を放り出して、辺りにいた魔物たちが撤退していった。それだけの威力なのだろう。実際、余波だけで魔物たちの身体が砕けていく。


「大技を食らって、終わりです。【サンダーストーム】!」


 ケフェスの刀が、稲妻を帯びてさらに鋭さを増す。


「こんなもの!」


 ゼットさんが折りたたまれ、ロングソードへと変化した。


「いきます。【魔導斬マギ・スラッシュ】!」


 ロングソードで、イーデンちゃんが稲妻の嵐を切断する。


「バカな!? ボクの最大級の技が!?」


 稲妻を斬られて、ケフェスが無防備になった。

 だが、無理な体勢で斬ったせいで、イーデンちゃんも転倒をしてしまう。

 好機と見たか、ケフェスがイーデンちゃんを刀で突き刺そうとした。


「トドメです!」


 イーデンちゃんが、グルンと身体を回転させる。ケフェスの腹を切り裂いた。

 あの体勢から持ち直そうともせず、当てに行くか。


「ぐう!?」


 脇に届いたと思えば、ケフェスの身体が消えた。


「これは【テレポート】!?」


 気がつけば、ケフェスが背後に。


 ようやくイーデンちゃんもヒザを立てて、身体を起こせた。


 しかし、すでにケフェスは兜割りの構えに。


 イーデンちゃんは、ケフェスに背中をぶつけた。


「ぐふうう!」


 ケフェスの背中から、イーデンちゃんのロングソードが飛び出す。


 イーデンちゃんはロングソードを抜き、残心の構えに。


「ば、ばかな。ボクが、人間に。人間なんかに」


 腹の傷を押さえながら、ケフェスが膝をつく。


「人間だとなめてかかったから、あなたは負けたんです」


「そうですね。ボクとしたことが、相手の力量を見誤るとは。やはり、子供の頃に殺しておくのでした。あなたの力は、神に届くと思っていたから」


 息も絶え絶えに、ケフェスは正座をする。


「さあ、トドメを。まだ、ボクは生きている」


「しません。あなたには、もう仲間だっていません。撤退なさい。まだ命があるうちに。早く!」


「逃げたところで、フィゼに殺されるだけです。ですよね?」


 ケフェスがフィゼに、皮肉めいた笑みを向けた。


 しかしフィゼは、ケフェスを相手にしない。


「めんどくさ。死にたかったら勝手に死ねばいい」


 フィゼは、この場から退散する。


「意外と、気弱ですね。さあ、斬りなさい」


「斬りません。退きなさい」


「なぜ? ボクはあなたの母親の仇です」


「仇だとしても、わたしはあなたを殺したくない! たしかにわたしは、あなたが憎い! でも、切り捨てるのは違う。間違ってる」


 イーデンちゃんは、剣を収めた。


「憎しみからは何も生まないなんて、キレイごとは言いません。苦しみながらそのまま死ねとさえ、思っています。だけどあなたを殺したら、母さえ殺してしまいそうなんです」


『イーデンさん……!?』


 ゼットさんが、赤く警告色を発する。


『上空から高エネルギー反応! 来ます!』


 ケフェスが強制的に、イーデンちゃんを後ろへ突き飛ばす。

 次の瞬間、黒い稲妻が、ケフェスめがけて飛来した。

 ケフェスが黒雷を受けて、灰になる。

 イーデンちゃんが、ケフェスだった灰を掴む。


「誰が!? いったい誰が!?」


 仇を目の前で殺され、イーデンちゃんが怒りを爆発させた。


『魔王だよ』


 さっきの稲妻も、イーデンちゃんを狙っての攻撃だろう。


「そうですか。ダテさん。魔王を倒しましょう。彼こそ、この世界をこんなふうにしてしまったやつなんですよね」


『うん。彼こそ、このゲームのシナリオライターだろう』


 ゲミュートは黒幕ではあるが、実質的に力を持つのは魔王だ。


『魔王の現在地は……グレーデン!?』


 グレーデンは今、ゴットフリートが向かっているではないか。

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