第47話 ゴットフリートの正体

 ゴットフリートの正体は、もう一人のゲミュートである。


 私が指摘すると、ゴットフリートは否定しなかった。


「ダテちゃん、あたしは外しておいたほうがいいかしら?」


 ヴィル王女が、私にお伺いを立てる。

 どうしよう。大事な話なんだけど、みんなの耳にも入れておかないと。


『王女は、みなさんを呼んできてください。先にマージョリーたんとイーデンちゃんに事情を説明するので』


「わかったわ。すぐ近くにいるはずだから呼んでくるわ」


 ヴィル王女を外へ出して、話を続けた。


「ダテさん、どういうことですの?」


『ゴットフリート王子は、ゲミュートもであるってこと? 事実だよ』


 彼は主人公であり、また別ルートの敵でもある。


『実は私、ゴットフリートルートは遊んでないんだよね。マージョリーたんが死んだ状態からスタートするから』


 王子の目的が、マージョリーたんの仇を取ることだから。

 だが、彼がゲミュートであることは、攻略サイトにも載っていない。

 それでも、私は今回の冒険で彼がゲミュートだと確信した。


「ダテ殿は、いつボクがゲミュートだと、お気づきになられましたか?」


『だって、シナリオが優遇されすぎなんだもん。イーデンちゃんはあんなにも酷い扱いなのに、ゴットフリートは名誉に傷ひとつつかない』


 なお、ここの場面はゴットフリートを主人公にしていると、イーデンちゃんが中盤で魔王と相打ちになって死ぬ。続く最終章で、本物の魔王であるゲミュートをゴットフリートが倒して、エンディングとなる。


 サブキャラになっても、イーデンちゃんは最期まで報われないのだ。


『それに、決定的な証拠がある。ゴットフリートルートに、ゲミュートなんて敵は出ない』


「確かな情報ですの? ダテさん?」


『シナリオ上、そうなっているよ』


 悲しいが、これは事実なのである。

 私は確証を得るために、マージョリーたんからゴットフリートを離していた。


『つまりゴットフリート・グレーデン卿。あなたは、脚本家の分身だよ。それも、良心の方』


 彼は、脚本家がこのゲームに残した、最後の良心だと思う。


「そんな。王子が、敵だったなんて」


「マージョリー殿下。すべてダテ殿のおっしゃるとおりです。ボクが悪堕ちした姿が、ゲミュートなのです。彼こそ、魔王を作り出した。その際に、清らかだった部分は捨てた。それが、ボクなのです」


 ゴットフリートが、再びひざまずく。


「頭を上げてくださいまし、ゴットフリート様。あなたを責める理由はございませんわ」


「ありがとう。ですが、聞いていただきたいことが……」


 王子は、自分の宿命をマージョリーたんに語る。


 ゴットフリート王子の言葉に、マージョリーたんはヒザから崩れ落ちた。


「な、なんですって?」

  





 ゲミュートを倒せば、ゴットフリートも消滅する。

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