第31話 ガチャでモンスターをテイム

 途中、モンスターに遭遇した。妖怪軍団ではない。魔王軍がサクラダを占領しに来たのだ。


「これ以上の狼藉は、許しません! 【テンラ・突撃】!」


 生きるインテリジェンス・アイテムであるテンラが、アマネ姫を乗せて羽ばたく。

 翼から炎魔法が噴き出し、上空から魔物たちを焼き払った。


『相変わらずすごいですね、アマネ様のマップ兵器は』


「マップ兵器……とやらは知りませんが、全体攻撃魔法においては、マージョリー様に遅れを取ることはないと自覚しております」


 範囲はマージョリーたんより狭い。

 といっても、マージョリーたんの攻撃範囲が広すぎるだけだからなあ。



 アマネ姫が、サクラダ王国に帰ってきた。


 ヴィル姫が代表となり、交渉用の書状を読み上げる。


 こうして、リシュパンとサクラダは協力関係になった。


 だがサクラダは、魔王軍の魔物たちが増えてきたという。


 魔物たちをどうにかしない限り、まともに船を出せないだろうとのこと。実際私たちも、かなり迂回してサクラダに入ったくらいだ。


 用事を済ませてから、魔物掃討に向かおうかな?


「それでダテさん、この国でなにをいたしますの?」


『モンスターをテイムするんだよ』


 サクラダには、モンスターを乗り物にできるイベントがあるのだ。


「テイム? たしか魔物を仲間にするとおっしゃっていましたね?」


『そうなんだ。サクラダには、魔物をテイムできる【ガチャ】があってさ』


「ガチャ、とはなんですの?」


 そのご説明は、アマネ姫に託す。


「こちらへどうぞ」


 アマネ姫の案内で、城の内部にある神社のような場所へ。


 地下へと降りていくと、滝つぼのような形をしたガシャマシーンが。背の低い滝からは、常に水が流れている。天井には大きな穴があって、空が見えた。特徴的なのは、滝の横にガチャのような回転式レバーがあることだ。現実のガチャマシーンより大きい。バラエティ番組で使うセットみたいな大きさだ。


「レバーを回すと、あなたに適合したテイムモンスターが、手に入ります」


 カリスがいなくなる以上、大幅なパワーアップが必要である。移動力も必要だ。


「でもここから出てくる魔物って、インテリジェンス・アイテムなんですよね?」


「全部がそうとは限りません。ワタシの場合が、たまたま特級の【SSSSRスーパー・スペシャル・シャイニング・シークレット・レア】を引いただけでして」


 まるで子どもが考えたような等級名だなあ、なんて言っちゃいけないか。 


 つまり、もうガチャからインテリジェンス・アイテムが出てくることはないらしい。


『本来サクラダにはこれをやりにきたんだけど、事情が変わったので』


「ゲミュートが攻めてきましたものね」


 じゃあ、さっそく回してみよう。


「ただし、回せるのはお一人だけです。選ばれたもののみが、魔物をテイムできます。ですが、あなた方の誰が有資格者なのかは、ワタシでもわかりません。どなたが回しますか?」


「はいはいあたしあたし!」


 ヴィル王女が手を上げて、真っ先に回したがった。

 ガチャの確率と順番は関係ないから、いいかもね。


『じゃあ王女、回しちゃって』


「いくわよ。ガッチャンコ!」


 変な掛け声とともに、ヴィル王女はレバーを回転させた。

 白いボールが、滝の上から落ちてくる。ドンブラコと、私たちのそばまで流れてきた。


 これは……。


 カプセルが、ひとりでにパカッと開く。その中には。


「え、ハズレ!?」


 何も入っていなかった。ハズレという紙が入っていただけ。


「なんでよ! 選ばれしものっていったら、お姫様でしょうが! 同じ姫であるこのあたしが、ハズレを引くなんて!」


「一回しか回せないのよね!? どうしよう!」


「大丈夫です。ハズレが出た場合は、再抽選ができますよ」


 では、と、マージョリーたんがガチャを引く。

 しかし、今度もハズレだった。


「わたくし、こういったクジ運は悪かったのでしたわ」


 必然的に、残ったのはイーデンちゃんのみ。まるで示し合わせたかのような、めぐり合わせ。


「では、お願いします」


 イーデンちゃんが、ガチャを回す。


「色が違うわ!」


 紫色のカプセルが、滝から落ちてくる。


URウルトラレアですね」


 ドボンと滝ツボに落ちて、私たちの元へ流れ着いた。

 ボールは光を放つ。紫色の稲光が地面に着弾し、モンスターの形を取った。


「これは?」


「大きい、ネコちゃんです」


 イーデンちゃんのテイムモンスターは、紫色のネコだ。全長三メートルくらいはあるだろう。しかし、ずっと寝ていてやる気がなさそう。こちらをチラッと見て、すぐに目を閉じてしまった。

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