第32話 ハズレア? ケット・シーのトシオ

 これが、【ウルトラレア】ってこと? 全然、やる気が感じられないんだけど?


「強そうじゃありませんわね?」


「【ケット・シー】ですね。探索系なら最強なんですが、戦闘には不向きです」


 あー。素材採取系か。ならば使いようで、とんでもなく強いアイテムを見つけるかも。


「もし、ケット・シーさん。こちらを向いてくださいにゃ」


 マージョリーたんが、珍しく猫なで声で、ケット・シーに話しかけた。


「意外とマージョリー様って、おちゃめな一面がありますね」


「おちゃ……顔が熱くなってまいりましたわ」


 赤く染まった頬を手で隠しながら、マージョリーたんがうずくまる。

 だが、ケット・シーは一瞬こちらに視線を送っただけで、そっぽ向いてしまった。

 やばいな。いわゆる「ハズレア」か? マージョリーたんの超絶かわいさに、眉一つ動かさないとは。


「さすが、イーデンさんですわ!」


「カワイイわね。名前をつけましょう」


 イーデンちゃんは悩んだ挙げ句、「トシオ」と名付けた。

 トシオは名前をもらうと、イーデンちゃんを手で引き寄せる。抱きまくらのようにイーデンちゃんを抱え込んで、また眠ってしまった。


「どうしましょう? 動けませんわ」


「インテリジェンス・アイテムに収納できます」


「そうですか。ではゼットさん。お願いしますわ。イーデンさん、盾を構えてみてください」


 イーデンちゃんが、指示通りに盾を構える。

 盾の中央にある青い宝石が光って、トシオを収納した。


「うわっと」


 支えを失ったイーデンちゃんが、コロンと転がる。


「任意のときに、出し入れできますから」


「ありがとうございます」


 立ち上がって、イーデンちゃんはアマネ姫に礼を言う。


『ただ、これでわかったことがあるよ』


「どうしました、ダテさん?」


『私ではなく、イーデンちゃんにガチャの権利があったってこと』


「つまり?」


『プレイヤーではなく、キャラクターに資格があるってわけ』


 ガチャはたいてい、プレイヤーが引くものである。


 私は、この世界のプレイヤーだ。しかし、私は恩恵を受けられなかった。

 代わりに、主人公であるイーデンちゃんが、レアが引いている。

 このガチャはプレイヤーの私ではなく、主人公のイーデンちゃんに反応した。


「だから、わたくしにも引かせたのですね。プレイヤーであるあなたに、ガチャを回す資格があるかどうかテストするために」


『うん。これでハッキリしたよ』


 この作品の攻撃標的は、間違いなくイーデンちゃんである。

 私ではない。

 


 帰りも、魔物たちに襲われた。やはり、武装したガイコツばかり。サクラダまでの道中で襲撃してきたモンスターと、同じタイプである。


「出力低めで参ります! 【ウイング・ブラスター】!」


 マージョリーたんの掛け声と共に、私は翼を生やす。

 私にマージョリーたんが捕まって、魔物の群れに突撃していった。

 翼の間に、魔術を狂わせる波動を起こす。

 波動に飲み込まれ、モンスターたちが内部から破壊されていった。


「どういう原理なのです、その技は?」


「わかりませんわ。ダテさんが偉大だとしか」


 サクラダの城へと、どうにか戻ってきた。

 兵隊が、魔物たちの出没地点を発見したと報告が。

 彼らは妖怪軍団の根城だった『大入道ギガンテス』の跡地にダンジョンを作り、サクラダと交戦をしている。


「また、ダンジョン内にはゴーマ三姉妹の長女を発見したと」


 ゴドウィンたち【雷鳴】が遭遇したという、ゴーマ三姉妹の長女か。どんな顔をしているのか。


「ダンジョンの攻略は我々に任せて、あなたたちは城の防衛にかかりなさい」


「はっ!」


 アマネ姫が、兵を下がらせた。




 姫とともにダンジョンへ。



 

 目玉があった眼窩が、入口になっていた。

 土くれとなった大入道の体内へ、潜入する。

 大入道は、本当に石になっていた。

 天井が低く、浮遊するタイプのマップ兵器は使用できない。


『アマネ姫、ここではあなたの【テンラ・突撃】が使えませんので』


 もちろん、マージョリーたんの【ウイング・ブラスター】も。


「心得ました、ダテさま。お願いしますね」


 姫が、テンラを地上へ下ろす。


「テンラちゃんは、全体攻撃系以外ではなにができるの?」


「火を吐きます。また翼がナイフになっていて、敵を追尾する機能があります」


 かなり多角的な攻撃が、得意なようだ。


『召喚獣のレベルも上げておこう』


「はい。トシオ、出ておいで」


 イーデンちゃんが、トシオを召喚する。だが、相変わらずやる気がなさそう。


「ですが、道案内してくださっていますわね」


 トテトテと進んでいく。

 その先に、トラップがある気配がない。


『罠避けしてくれているんだ。すごいな』


 優秀なのか、自分が痛い目にあいたくないのか、わからないけど。


「とはいえ、めぼしいアイテムを拾ってくださいませんわね」


 たしかに。探索系最強だと思っていたのだが、なにも掘り出さない。

 気がつけば、最短ルートでボス部屋まで来てしまった。

 うーん、さっさと片付けてこいってか?


 ボス部屋には、男装の麗人が。


「よくボクの居場所がわかりましたね。ボクはゴーマ三姉妹長女、ケフェス」

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