第30話 カリス離脱
『マージョリーたんのお屋敷に戻って、カリスには孤児たちを守ってもらおうかなって思うんだよ』
カリスの離脱により、戦力は大幅にダウンする。だが攻略面で言えば、特にカリスがいなくても問題はない。マージョリーたんはレベルカンストに近いし、イーデンちゃんや相棒のゼットさんも育っている。
また、カリスは城の防衛向きだ。密偵だった経験上、夜襲の対策なども取りやすい。いざとなったら、マップ兵器の【マキビシ】もある。
だから私は、思い切ってカリスを残す決断をした。
これが吉と出るか凶と出るか、わからない。
しかし、イーデンちゃんを精神的に追い込むため、敵が孤児を狙ってくる可能性も捨てきれなかった。先手を打つ必要がある。
『みんなもいいよね?』
私は周りに、相談をしてみた。
「ボクは、ダテ殿の提案は、よき判断だと思います」
「俺も、ゴットフリート王子に賛成だ。歴戦のニンジャが離脱するのは痛いが、王国の護衛に当たってくれるなら心強い。悔しいが、近衛兵よりあてになるだろう」
男性陣から、反対の声は上がらない。
「いいかどうかはともかく、孤児たちの面倒を見てくださるのは、助かります。もしよろしければ」
イーデンちゃんも、賛成の様子。
「我は、しょせん殺し屋の身。汚れ仕事が板についている者が、平穏な生活など望んではいかんのです」
『やり直せばいいだけじゃん。周りの声を聞いたでしょ? あんたの意志に反対する人なんて、この場の誰もいないよ』
夕食に出席している面々全員が、カリスに同情していた。
「もったいなき、お言葉でございます。ですが、この身一つではお屋敷だけでなくお城の警護もままなりませぬ」
「だったらみんな、ウチに住めばいいわ」
ヴィル王女が、アドバイスをする。
「お城の拡張くらい、いくらでもしてあげるわ。連戦につぐ連戦で、孤児たちも数が増えているわ。だから、ちょうどいいと思っていたの。いいわよね、マージョリー」
「もちろんですわ」
そのために、王城とジンデル邸の間に訓練場を設けたくらいだからね。
ここでマージョリーたんから「お父様、よろしくて?」なんて言葉が出ない辺り、ジンデル家って超のつく親バカだ。娘の判断は全面肯定ってさぁ、筋金入りじゃね?。
マージョリーたんだけではない。サブリナも立ち上がる。
「いい仕事があるんだ。鉱石の分析や帳簿整理、子どもが覚えるには骨が折れるが、簡単な計算ばかりだから大丈夫だろ。給料は少ないが、三色昼寝はつけてやる」
「感謝いたします」
「いいってことよ。倉庫番に困っていたんだよ」
こうして、カリス問題は滞りなく解決した。
『ごめん、ヴィル姫様。納得していないよね?』
「どうしてよ? 最強の守護神が手に入ったのよ。これ以上心強いことはないわ」
『元は敵だったんだよ? それでも受け入れるつもりなの?』
「事情があったのでしょ? 今は解消されている。あのねダテちゃん、あたしは自分の意見が通らないと気がすまないオテンバとは、出来が違うのよ。意見を通すなら、こちらも筋を通すわ」
ありゃあ。私はヴィル姫を見くびっていた。わがままなお姫様なんて、フィクションの中だけなのかもね。
「ではみなさん、留守をお願いします」
アマネ王女と出発する日がやってきた。
サブリナ指揮の元、リシュパンの城の拡張をするらしい。
「本当に、俺たちがいかなくていいのか、マージョリー」
「護衛ですから。ゴドウィン、王子をよろしく」
「もちろんだ」
『雷鳴』チームの目的は王子の護衛で、私たちの目的はアマネ姫の警護だ。
しかし、私にはまだやることがある。
「とはいえダテさん、戦力ダウンは否めません。ダテさん、どう対処なさるのです?」
「全然大丈夫。アテはあるからさ」
そう。護衛ミッションは最初だけ。
実は、サクラダにこそ用事があるのだ。
新戦力を得るという、最優先の用件が。
「どのような仲間をお探しで?」
『モンスター』
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