第27話 サブクエスト
『ゴットフリートは、戦力として見ないほうがいいね。王都の仕事が忙しくなるから』
彼は戦闘より、内政面で役立ってもらう。
「そうですの、ダテさん? 司令役にピッタリと思いましたのに」
『司令塔にも、難しいかな』
指示役はこちらにヴィル姫、エースチームにはアマネ姫がいる。これ以上の指揮官は必要ない。
『強いんだけどね。彼の強さはどちらかというと、防衛向きなんだ。もうウチは防御は足りているから』
近々、城の防衛戦がある。
「たしかに、ダテ殿のおっしゃるとおりだ。ボクの攻撃は雑魚モンスターには十分通用したが、ゲミュートの撃退はできなかった」
『そういうこと』
ゴットフリートのジョブは【フェンサー】だ。大盾で攻撃を防ぎながら、レイピアで魔法攻撃を行う職業である。肉弾戦には向かない。ましてやボスキラー役なんて、荷が重すぎる。
だからゴットフリートには、内政面でがんばってもらうことにした。
「ですが、どうやって?」
『サブクエストだよ』
このゲームには、【サブクエスト】というイベントがある。
戦闘ではなく、内政で味方を増やすイベントだ。
『現在、ゼノンがリシュパンの勢力下にあるでしょ? それは、内政イベントをやったおかげなんだ』
ヴィル王女に動いてもらい、ゼノンを打倒してもらったのだ。
「王女が、ゼノンを収めていたとは。わたくし、初めて聞きましたわ」
『おとなしいアマネ姫と違って、ヴィル王女は勝手に動くからね』
その特性があるせいで、王女は私たちが見たほうがいい。というより、ゴドウィンたちの手に余るのだ。
『今回は、グレーデンに味方を増やすよ。そうやって、ゴットフリートが政治でも活躍できるってアピールするんだ』
まずは、リシュパンの王様を説得する。
「我々リシュパンは、出過ぎたマネをしたのでは?」
リシュパン王は、私たちがゼノンを倒したことについて、グレーデンの面子を潰したのではときにしていたのだ。
「それは、もったなきお言葉。不甲斐ない我々グレーデンの落ち度でございます」
「そうおっしゃってくださると。して、交易関係の話ですが、難しいかもと」
同じ王都同士、リシュパンもグレーデンとは馬が合わなかった。
グレーデンは、勢力争いが耐えない。
そのとばっちりを受けるのではないかと、リシュパンは警戒をしている。誰の味方をするかも、慎重になっていた。
「リシュパン国王。今はいがみ合っている場合ではございません。ともに魔王打倒を達成いたしましょう」
「わかっておるのだが、問題はその後だ。交易面では、どのようなメリットが?」
「といいますと?」
「あなた方は、軍事国家でしょうに。軍事力をいただいても、我々には他国と戦争を起こす気はござらん」
魔王軍打倒の最前列にいるリシュパンは、民衆の経済力を気にしているらしい。戦争にかまけて、民の生活を脅かしているのではないかと。
「オヤジィ、そういう意味じゃ、あたしらリシュパンだって軍事国家だわ。よそから見ていれば、オーバーテクノロジーに囲まれた大国なのよ?」
「そういうが、ヴィルジニー。リシュパニウムは医術や交通にも貢献している。戦闘に使うだけではないのだ」
リシュパンとしては、戦争より交易などで需要を得たいのだ。
「現在グレーデンは、サクラダとも交流をしております。リシュパンに直接、貿易ができるように手配いたしますわ」
サクラダの姫であるアマネ様が、助け船を出す。
「それはありがたい」
こうして、グレーデンとリシュパンは協力関係を築く。
「大丈夫ですの? 勝手に約束してしまって」
『現在のグレーデン指導者は、実質ゴットフリートだよ。大丈夫だって』
アマネ姫はサクラダへと帰ることになった。リシュパンと交流することを、国王へ報告するために。
姫の護衛には、私たちがなる。
その前に、サブリナの工房にて装備品の整理だ。
妖怪軍団との戦闘で、大量の素材や装備が手に入っている。
各々が、装備を更新していく。
不用品はすべて錬金ツボで溶かし、私の強化素材に。レベルがカンストしている以上、私の強化はサブリナ頼みになる。
「不用品や、低レベルの素材だけでいいのかい? 強い素材は、全部ゼットにあげちゃってさ』
『私より、ゼットさんの強化を優先して。お願い』
「心得たよ」
サブリナは、ゼットさんも錬金ツボの中へ。
私はプレイヤースキルで乗り切れる。ゼットさんはそうはいかない。それに、弱い装備品からもいい素材は取れる。要は高価さより、実用性が大事なのだ。
「二つとも、ほとんど別物になっているんだけどね」
パワーアップした【魔神の盾】は、もはや原型をとどめていなかった。
すごいぞ。【魔力回復:中】まで手に入った。もう、私は不沈艦に近い。
これでイーデンちゃんが、戦闘に集中できる。
『見違えたねゼットさん』
『あなたほどではありません、ダテさん。武器にはなるわ、マップ兵器にはなるわ。ワタシにはマネができません』
『いやいや、ゼットさんだって、【コピー】の技能で私と同じ武器になれるじゃん。
【エナジーシールド】まで手に入ったからね』
『ですが、あなたの攻撃力まではコピーできません』
続いて、技能の見直しだ。
「あたしは、あたしは?」
さっそくヴィル王女が、私に意見を求めてくる。
『王女は今後、後衛に回ってもらいます』
「えーっ!?」
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