第四章 クーデター勃発! リシュパン城防衛戦

第26話 パーティ再編成

 後日、ゴットフリートから現状を聞くことに。


 重々しい話のためか、心なしかお茶の味もやや渋めに感じた。まあ、私は盾だから、マージョリーたんの味覚を介しての感想だが。


「ゴットフリート王子。本当にグレーデンにて、クーデターの可能性がありますの?」


「はい。それでボクは一度、城を撤退してみてはと言われて」


 グレーデンの王は高齢であり、跡継ぎ問題を抱えている。病気も発症し、

 本来、ゴットフリートが後を継ぐはずだった。しかし、優しすぎるゴットフリートの政治力を疑問視して、新たに候補を擁立しようという動きがあるらしい。


「ボクは王のために、サクラダにて薬を調達してきました。しかしその帰りに、ゲミュートと交戦になったのです」


 薬を届けて、その足でサクラダまでとんぼ返りしてきたのだという。ゲミュートを倒すために。

 たしかに、ゲミュートは倒しておきたいよね。


『ですが、ゲミュートを倒したところで、復活しますよ。あの姿は、幻影です。本体は別にいますから』


「そうだったのか。叩くなら、本体の居所を突き止めねば」


 ゴットフリートが難しい顔をする。 


「ゲミュートってなんです?」


 イーデンちゃんが、問いかけてきた。


「そうだぜ。オレも気になる。強い相手なのか?」


 ビリーも同じように質問をしてくる。口の周りが、クッキーの粒まみれだ。さては、あんまり話を聞いていなかったな?


『ゲミュートは魔王の側近で、このゲー……コホン。この世界に戦争を起こした張本人です。彼は世界を混乱させて、永遠の戦争を起こすつもりなのです』


 あっぶねえ。危うくここを「ゲーム世界だ」と言いかけたよ。


「ダテ殿といったか。キミの予言、というか、事実なんだね?」


『はい』


 王都リシュパンへの航海で、ゴットフリートに私の素性を説明してあった。飲み込みが早くて助かる。なにが発生してもおかしくない、ギスギスした国で育ったからだろう。


「ありがとう。あなた方がゼノンを倒してくれたおかげで、かなり反対派の勢力を抑えられた。感謝する。特にダテ殿、キミの采配には、目を見張る物があると、マージョリー殿下からは聞き及んでいる」


『とんでもない。事態は急変しました。もう私の助言は、通用しなくなるかもしれません』


 かといって、アドバイスの手は緩めないが。


『では、新たな戦力が加わったので、チームの再編成をします』


 この場の全員が、息を呑む。


 アマネ王女には、ゴドウィンの側についてもらう。


「それでいいのか?」


『いいよ。そっちはボスキラーばっかりで、オールラウンダーがいないでしょ?』


 ゴドウィンのパーティには、回復・マップ兵器によるザコ掃討・司令系統がいない。アマネ王女は前衛で戦わなくていいから、


「新戦力をすべてこちらに移しては、そちらの戦力がダウンするんじゃないのか?」


『大丈夫。レベルマックスの人がいるからね。それに、戦力は増強するから心配ナッシング』


 ドワーフの剣士ビリーが、「ちょっといいか?」と手を上げた。手にも、クッキーの粒が大量に。 


「なんでこっちには、タンク……だっけ? 壁役がいねえんだ?」


 マージョリーたんかイーデンちゃんを分担して、それぞれのチームで壁役にすればいいだろうと。


 つまり私たちの陣営に、壁役が二人も必要なのかと言いたいのか。


『必要ないからだよ。むしろ、ビリーたちに壁役は邪魔なんだよ』


「どういうことだ?」


『一つ、ビリーたちパーティは、回避が高い人たちで構成しているから。もう一つは、私が防衛ミッションをそちらに回さないからだよ』


 彼らには、防衛ミッションを任せていない。原因は、彼らの回避率の高さだ。

 魔法使いのシノさんでさえ、【テレポート】の魔法で敵の攻撃をサクサク避ける。

 アマネ王女の買っている鳥型インテリジェンス・アイテムも、防御ではなく回避寄りのユニットだ。


 そんな人たちに防衛ミッションなんて任せたら、効率が悪い。


 防衛型の依頼はすべてこちらで引き受けて、マージョリーたんとイーデンちゃんに任せてもらうってわけ。


『私の見た記憶だと、みんなを守るはずのイーデンちゃんが、弱いせいで回避の高いみんなが逆にイーデンちゃんを守る構図になっていた。どう考えても、非効率でしょ?』


 足りない攻撃面は、狙撃が得意なヴィル王女で補う。偵察として、カリスもいる。マージョリーたんも、攻撃寄りの壁役であるジョブ【ヴァルキリー】になった。


 もう完成されているのだ。


「ふええ。ちゃんと考えてるんだなぁ。まいったぜ」


 口笛を吹き、ビリーが両手を上げた。


「すまないが、ヴィル姫はこちらに配置するわけには?」


『ダメ。それをやると、あなたがヴィル姫のカバーばかりするようになるよ。あなたがまともに機能しなくなるから、陣営の戦力が激減するんだよ。ガマンして』


「あ、ああ。わかった」


 ゴドウィンが、肩を落とす。頭ではわかっているのだろうけど、顔は全然納得していない。


「辛抱だな、ゴドウィン。好きな女の前でいいかっこしてえ、って気持ちはわかるけどよお」


「うるさいんだよ、この非モテっ」


 ビリーに茶化されて、ゴドウィンがビリーの胸に裏拳をかます。


「うえっほ! ムキになるなって! オレがモテねえのは、女たちがオレに遠慮しているさ! 溢れ出るカリスマに、萎縮してっからな!」


 こういうことを考えているから、ビリーってモテないんだろうな。


「お待ちになって、ダテさん。王子のポジションは?」


 マージョリーたんから、至極真っ当な意見が。


『彼はスポット参戦なので、戦力には入れないよ』


 別にイジワルではない。本当のことだ。

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