第23話 ゴーマ三姉妹と直接対決

 マージョリーたんが、メキラの剛剣を受け止める。

 地面がメリッと音を立てて、マージョリーたんの脚が埋もれた。


「なんという重さ!」


『地面がめり込んだよ!』


 レベル上げでどうこうなるコトじゃない。延命できるだけだ。


「ダテさん、マージョリーさん! こいつ!」


 イーデンちゃんの持つゼットさんが、二股に分かれる。

 ゼットさんが、【魔導砲マギ・ランチャー】に変形した。私より、やや細身で小型である。


「くらえ! 【小型魔導砲ショート・マギ・ランチャー】!」


 メキラの背後に照準を合わせて、イーデンちゃんが引き金に手をかけた。

 青い聖属性の魔力が、銃口から放たれる。

 とっさにメキラは気がついて、剣で魔導砲を受け止めようとした。しかし、脇腹をかすめる。


「ぐう!? やるじゃないか。シャクだねえ!」


 メキラの横腹が、青黒く変色した。多少、効いたみたいだ。しかし、致命傷には至らない。

 いくら強くなっても、相手は百戦錬磨のバケモノだ。

 さっきの攻撃だって、剣でわずかに【小型魔導砲】の軌道をわずかにそらしていた。あんな大型の件を扱っているのに、なんて繊細な判断力だろう。

 いざとなったら、レベル差で叩き潰せると思っていたのに。

 これではどれだけ強くなろうとも、強さの開きが縮まらない。


「わたくしとメキラのレベル差は?」


『四くらいだよ。ちなみに、イーデンちゃんとは二〇近く離れてる』


「それで、少々手こずっているのですわね?」


 マージョリーたんは、レベル六〇超えだ。ヴィル王女さえ超えて、ゲームクリア推奨レベルに到達している。もはや、完全勝利と言っていい。


 しかし、ゴーマ三姉妹は、ダウンロードコンテンツ、つまり追加シナリオの敵だ。

 クリアレベルなんて軽く超えている。


 マージョリーたんが、イーデンちゃんの側に。


「イーデンさん、わたくしが深手を負います。そのスキに、わたくしを回復なさい!」


「ゴーマ三姉妹相手に、『回復レベルアップをしろ』と!? 無茶ですマージョリーさん!」


「考えている場合ではないのです! あなたを強くするには、今はこれしかありませんのよ!」


 イーデンちゃんの手を握り、マージョリーたんが覚悟を決める。


「さあ、かかってらして!」


『マージョリーたん、絶対に死なせないから安心して!』


「はい、ダテさん。あなたがいるから無茶な作戦も思いつけるのです! あとは頼みました!」


『まるで死にに行くみたいな言い方、やめて!』


「そうでしたわね。ともに生き残りましょう、ダテさん!」


 マージョリーたんが、私を構える。


「なにをやる気かしらないが、シケた作戦だったら承知しないからね?」


「フフフ……」


 どういうわけか、マージョリーたんがメキラを嘲る。


「魔王の娘ともあろうお方が、ビビってらしてよ?」


「……んだと?」


 大型の剣を担ぎながら、メキラがこめかみに青筋を立てた。


「だって、人間ごときの立てた作戦を、邪魔なさろうとしましたわ。どうあっても、自分の有利は揺るぎないというのに!」


 アハハ! と大声を上げながら、マージョリーたんが高笑いをする。


「大したことございませんのね? 魔族の方って。もっと堂々としていらっしゃるのかと思いましたわ!」


「上等だよ。まずはテメエから殺してやる!」


「やれるものなら、やってごらんなさい!」


「だらああ!」


 メキラが、剣を振るった。


「足元がお留守でしてよ!」


 マージョリーたんは、かわさない。それどころか、盾をサーフボード代わりにして懐に飛び込む。渾身のハルバートによる一撃が、メキラのみぞおちを完全にとらえた。


 だが、メキラの腹筋を貫くに至らない。


「へへへ! 勇気ある行動だけは認めてやろう。だが、さっきの異性に比べたら大した攻撃力じゃねえんだよ!」


 マージョリーたんの腹を、メキラは思い切り蹴り飛ばす。


「ごふう!」


『マージョリーたん!?』


 盾で防御しているのに、マージョリーたんは血を吐いた。このモンスターの攻撃は、魔法防御すら貫通するのだ。


「あたしの攻撃は、低レベルのやつなら軽々と貫けるのさ! つまり、あんたはたいしたことないってことさ。じゃ、くたばりな!」


「今です。イーデンさん!」


 すぐ後ろにいたイーデンちゃんが、マージョリーたんを回復する。


【治癒からの学び】の効果により、イーデンちゃんに大量の経験値が入った。


 どの程度強くなったかというと、マージョリーたんにとどめを刺そうとしていたメキラが飛び退くほど。


「シャクだねえ! けど、嫌いじゃないよこの状況! せいぜい楽しませてくれよ!」


「あなたに勝ち目はありませんわ!」


 マージョリーたんが、私をハルバートと組み合わせた。【魔導砲】へと、変化させていく。


「準備が遅すぎるんだよ!」


 サイドから、メキラが剣を振るってきた。


「それに、攻撃してくるなら後ろで強くなったガキだろうが!」


「彼女がいなくても、わたくしだけで勝てます」


「なあ!? 上等だ! 死ねやてめ――」


 しゃべってくるメキラを、私は横へ薙いだ。


「【魔導剣マギ・ブレード】」


 パワーアップしてるのは、マージョリーたんやイーデンちゃんだけじゃない。


 一番強くなっていたのは、私だ。

 

 今までのやり取りは、私に注意を向けさせないためのブラフだった。

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