第21話 土蜘蛛戦
「ダテさん、モンスターの動きが、やけに鈍りましたわね?」
『たしかに』
マージョリーたんと同じことを、私も感じていた。
腕の大きさからして、すぐに抜けそうな気がするけど。
「大入道は、自分の身体を配下の妖怪に管理させているのです。その一体を倒したことで、魔力のめぐりが悪くなったようですね」
アマネ姫によると、大入道は強い妖怪の集合体だという。たしかに、日本でも有名な妖怪ばかりだ。
足を制御していた妖怪は退治したので、もうコイツは歩くことができない。
『エリートを分散配置しないで一点集中させるって、愚策中の愚策なんだけどね』
本来は優秀な人って、各地に散らせて役割分担をさせる。その方が、戦局は長続きするから。なのに、大入道はそれをしなかった。
「権力争いの結果です。ああいう事態が起きてしまっては、実力者を手元に置くしかなかったのでしょう」
すぐ近くで起きている妖怪大戦争を、アマネ姫が指差す。
『あー』
共闘していたゴーマ三姉妹に、寝首をかかれたからか。
そもそも次女のメキラは、チーム戦がめちゃ苦手なようだし。触ってくるものは全て敵って感じだ。
「あははは! やっぱ世界全部を敵に回すって、楽しすぎる! 全部、殺していいもん!」
無数の
「ああ、殺したい! 全部ぶっ潰してあたしが魔族の頂点に立つんだ! きゃははは!」
メキラは、自分の強さに酔いしれている。ああいうのを「無能な働き者」っていうんだろうな。
案外、妖怪軍団にメキラをよこしたのも、魔王が無能な自分の娘を殺すためだったのかも。
「ダテさん、こちらも来ました!」
今度は、腕が盛り上がって、戦車のような大きさのクモが現れた。
「この
女土蜘蛛が、大量の小グモを生み出す。
「ザコはお任せを。マキビシ!」
カリスが飛び上がって、小グモの大群へとマキビシを撃ち込んだ。
その途端、土蜘蛛は大入道のアゴに糸をつけて飛び上がる。
『あ、やばい待ってカリス!』
私の警告が届いたのは、カリスがマキビシを撃った後だった。
「くお!?」
カリスのマキビシを受けて、小グモが大爆発を起こす。
「なんと!?」
『くうう。出たよ、マップ兵器殺し!』
このクモ共は、撃墜されると誘爆を起こすのだ。
親である土蜘蛛はそれをわかっていたから、ギリギリのところで誘爆を避けたのである。私たちを油断させるために。
「うざいわね! これでも喰らいなさい!」
ヴィル王女が、【ケラウノス・ランチャー】を土蜘蛛本体に向けて放った。親玉を潰せば小グモも死ぬと、即座に判断したのだろう。推理と、自分の思考を即行動に転換できる適応力がすごい。このお姫様って、まさかゲーム脳なのでは?
だが、小雲が【援護防御】でカバーする。またしても誘爆によって、周囲にダメージが。
敵味方問わず、大打撃を負う。
『ごめん! ちゃんと伝えておけば』
「でも、構いませんわ。イーデンさん!」
イーデンちゃんに、マージョリーたんが指示を出す。
『治療レベルアップを狙う? ここで?』
「他に手はありませんわ! お願いします」
マージョリーたんに懇願されて、イーデンちゃんが回復魔法【エリアヒール】を使う。【アルカナ・フラッシュ】の治癒版だ。
全員を治療したことによって、イーデンちゃんが大幅にパワーアップした。
「イーデンさん、ここはわたくしとあなたのダブルタンク職で、突破します! ついてらして!」
「はい!」
マージョリーたんが私を、イーデンちゃんがゼットさんを正面に構えた。
「おおおおおおお!」
「やああああああ!」
小グモの群れを、二人は盾で潰していく。
「ジャンプです!」
「はい!」
マージョリーたんの合図で、イーデンちゃんが土蜘蛛の前で跳躍した。土蜘蛛へ、剣を突きつける。飛び道具を使ったら、また小グモが反応してしまう。接近戦しか手段はなかった。だが、届かない。
「ムダよ! ワタシには遠距離攻撃しか……なあ!?」
イーデンちゃんの足元に、マージョリーたんが魔法を詠唱する。
「【トルネード】!」
本来これは、全方位にダメージを与える魔法だ。
「血迷ったのかしら? 誘爆を引き起こす小グモのど真ん中で全体攻撃魔法なんて……な!?」
イーデンちゃんがゼットさんの上に乗って、トルネードに巻き込まれていく。そのまま、イーデンちゃんは土蜘蛛のいる位置まで上昇した。
マージョリーたんは小グモ相手に魔法を唱えず、イーデンちゃんを浮かせるために使ったのだ。
「くそお!」
土蜘蛛が、大百足の死骸を掴む。死体をムチのようにしならせ、イーデンちゃんを叩き落とす気だ。
だが、大百足はトルネードに飲まれて分解されていく。
「くらえええ!」
土蜘蛛の眉間に、イーデンちゃんの剣が突き刺さる。
なんてことのない、特殊効果もないただの一撃だ。
しかし、あっという間に土蜘蛛がミイラのように干からびた。
小グモたちが、自動的に爆発を起こす。
自分から戦わない策士系のキャラは弱いって、相場が決まっているね。
岩山が崩れて、大入道の肩から先が埋もれた。
私は巨大化して、落下してくる岩石を防ぐ。
「おのれ!」
岩を弾き飛ばしながら、大入道が仰向けになる。
『今度は、胴体がフィールドになるみたい!』
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