第20話 大入道の身体を伝ってバトル

「わああああああ!」


 イーデンちゃんを中心に、青白いオーラが戦場を包み込む。


『出力最大。イーデンさんの魔法によって、妖怪軍団の八三%が壊滅。お見事です』


 そばについているゼットさんが、イーデンちゃんの戦力を分析する。


 アマネ姫たちサクラダの面々を長年苦しめてきた妖怪の群れが、イーデンちゃんの魔法一発で跡形もなく消し飛んだ。


 その威力も凄まじいが、私たちがノーダメージというのが脅威を物語る。


『マージョリーたん、あれがイーデンちゃんの本気だよ』 


「そんな魔法がございますの、ダテさん?」


『ございます。イーデンちゃんにだけは』


 さっきも、アマネ姫がマップ兵器を作動中に引き返した。攻撃魔法が、味方に当たってしまうからである。


 マージョリーたんの【ウイング・ブラスター】でさえ、味方のもとで放つとフレンドリーファイアになってしまう。


 しかし、イーデンちゃんは敵と味方を自動的に判別してくれる魔法を持つ。


「なんてやつだ! サクラダじゅうの妖怪どもが、おっ死んじまった!」


 とはいえ、まだ大物が残っていた。

 その大入道ギガンテスさえも、片膝を突いてうなだれている。

 よく見ると、左足のヒザから下がなくなっていた。

 こんな巨大なモンスターにも、イーデンちゃんの魔法は通じるのだ。


「なにをへばってるんだい、大入道! 立って戦うんだよ!」


 ゴーマ三姉妹の次女メキラが、大入道を罵倒する。


「メスガキは、黙れ」


 心無い言葉に激昂したのか、大入道の標的がメキラへと移った。凶悪な拳をメキラの腹に当てる。


「ぼご!? 上等じゃないか。相手してやるよ!」


 メキラが大剣を両手に持ち直して、大入道の顔に切りかかった。


「やれ、大百足センチピード。このクソアマを始末しろ」


「はっ。大入道様」


 ムカデの妖怪とメキラが、戦闘になる。腹に一撃をもらったというのに、かえって元気になっていた。


「我々も、大入道に攻撃をします!」


「はい。参りますわ」


 大入道の右足に、私たちは飛び移った。

 太ももだけでも、島くらいの広さがある。


「ダテさん、このルートで合っていますの?」


『合っていると思うよ』


 実はこのルートは、「ダウンロード・コンテンツ」なのだ。いわゆる、追加要素である。なので、私も詳しくない。楽しみながら、攻略してみるか!


「様子を見に来たら、バカ姉だった」


 帰ったと思われた三女のフィゼが、様子を見に来た。


「やはり、メキラ姉に任せるんじゃなかった」


「チームプレーってのが性に合わないのさ。戦績なんて、出し抜いてなんぼだろうが」


「そんなんじゃ、次期魔王候補からもハブられる」


「はあ? あたしだけが頂点に立っていれば、魔界は安泰だろうがよ。シャクだねえ」


 主にメキラのせいで、妖怪たちは統率が取れていない。協力しようとしていない今が狙い目か。


「とにかく、あのイーデンって子、要注意」


「はあ? 全員殺せば問題なしだろ。消えな」


「あっそ。じゃあ手は貸さないから。おやすみ」


 フィゼからのアドバイスも、メキラは意に介さない。

 メキラはどこまでも、個人主義のようだ。


「ニンゲンごときが、妖怪の長である我を止められるとでも?」


 ドドド、と太ももの先に鬼火が立った。青白い炎は、ズタ布に身を包んだドクロの形を取る。


「先へ行きたくば、この餓者髑髏リッチを止めてみせろ!」


 ドクロが、行き先を通せんぼした。


「頭を直接狙えば、いいんじゃないの?」


 大入道の頭に、ヴィル王女が狙撃しようとする。


「よしなさい。敵の標的が移ります。ここは、同士討ちを狙いましょう」


 アマネ姫が機転を利かせて、ヴィル王女を止めた。


「そうなの?」


 妖怪軍団のボスである大入道の正体は、魔力の塊だ。物理的な攻撃は一切効かない。それこそ魔族の攻撃しか受け付けないだろう。


 見た限り、メキラでさえ互角である。


 そんな相手に、私たちでは敵わない。


『少しずつ弱らせて、頭を討ちます』


「だそうですわ、王女、おとなしく自重なさってください」


 私とマージョリーたんで、ヴィル姫を説得する。


「わかったわよ。あのガイコツを止めましょ」


「ですねっ。攻略を開始します。式神!」


 アマネ姫が、折り紙を大量に撒き散らした。紙が、東洋の甲冑を着た武士の姿を取る。


「魔力で作った式神です。これで相手の出方を伺いましょう」


 侍衆が、リッチに切りかかった。


 リッチがスケルトンを召喚して、侍たちを襲わせる。


 だが、スケルトンは、侍たちの剣のサビとなった。


「ホホホ、こんな弱っちい式神で倒せると思われているとはねえ」


 リッチは手から放った鬼火で、侍の集団を一網打尽に。


『想像通りです。では、【魔導砲マギ・ランチャー】スタンバイ』


 私は、大型ランチャーに変形を完了した。レベルアップにて、発射可能になった私の形態である。


 アマネ姫のお取り作戦で、あらかじめ発動しておいたのだ。


『撃てます』 


「直撃させますわ!」


 マージョリーたんが、引き金を引く。


「な、データにはない攻撃だと!? おおおおおお!?」


 金色に輝く光芒が伸びて、リッチを一瞬で溶かした。


「なぜ、一撃で?」


「わたくしたちの前に出てきたからですわ」


 マージョリーたんが、私を元の盾に戻した。


「ぬう、このメス共も面倒だ」


 大入道の拳が、振ってくる。


 私たちは、すかさずよけた。左腕に、飛び移る。


 今度は、左腕が戦闘ステージのようだ。

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