第13話 悪魔のニンジャ カリス
「ダテさん、あれはやはりあの」
『来たか。やっぱり、騎士たちでは敵わなかったよね』
黒い装束のニンジャ「カリス」が、炎のエンチャントを施した二振りの短剣を携え、高笑いをした。あの姿は、【ニンジャ】だ。見た目は五〇を超えているのに、頭頂部は七三のソフトモヒカンというナイスミドルである。
ちなみに彼が二つ名に冠している『
「うおおおお!」
隊列を組んで、重装備の騎士部隊が一人の黒騎士に攻め込んだ。
「そこそこ鍛えているようだが、踏み込みが甘い! だからたやすく、よけられる!」
獣人族特有の脚力を用いて、カリスが跳躍した。太ももに装着している火薬暗器に、魔力を込める。
「フハハ! これまでよっ! 【火遁の術:ファイアーアロー】!」
マキビシの魔法が、カリスの足から発射された。
地面にマキビシが着弾して、騎士たちは足止めを食らった。数名が炎の粒を浴びて、目や足を負傷する。炎が小石や砂に混ざって、破裂したのだ。マキビシも、壊れやすいようにゆるく固めたものだろう。
あんな省エネ魔法でも、絶大な効果をもたらす。それがニンジャ魔法だ。きたない、さすがニンジャきたない。
騎士たちも、精鋭揃いだ。しかし、一人のニンジャを抑え込めない。
「くそおお! 【オーラ・スラッシュ】!」
軽装の騎士団長が、剣に炎の魔法を注ぎ込んだ。炎の剣をふるって、カリスに斬りかかる。
「フン。武術の心得は見事。だが肝心の魔力の流し込みが未熟!」
膝蹴りをぶちかまして、カリスは騎士団長の剣をたやすく叩き落とす。ついでに、騎士団長の腕までへし折った。
「トドメ!」
ニンジャの持つ黒い刃が、騎士団長の首をとらえる。
「そうはいかないわ!」
狙撃モードにしたケラウノスランチャーで、ヴィル姫が鉄塊を弾き飛ばす。
こんな遠くから撃って、重装備騎士の盾に跳弾させてニンジャの手を狙うか? しかも騎士を避けて。
それをかわすカリスも、かなりの場数を踏んでいるようだ。
どっちの戦闘力・判断力も、異次元を超越している。
レベルが高いだけでは、こんな戦闘はできない。発想すら、浮かばないであろう。
『イーデンちゃんは騎士たちの治療に専念。私が守ります!』
「お願いします。皆さん集まって!」
騎士たちを集合させて、イーデンちゃんが治療を施す。
私とマージョリーたんは、イーデンちゃんの背中を守る。
「火遁の術!」
跳躍したカリスが、太ももからマキビシ型暗器を放出する。
目を塞ぎながら、ヴィル王女が地面を撃つ。
マキビシが拡散し、王女を離れていった。
ヴィル王女がいなかったら、また私たちが守っていなかったら、治療中のイーデンちゃんがマキビシをまともに浴びていただろう。
「あえて地面を砕き、マキビシの拡散を広げたか!」
「目つぶしとイーデンちゃんが目的って、わかっちゃったもん」
二人は密着して、格闘戦へ。
「ヴィルジニー姫! ウワサに違わぬ銃士よな!」
「そっちこそ、王宮で『ブリアック・カリス』の名を知らぬ者はいないわ!」
「光栄だな。あなたはこのカリスの手にかかって死んだと、墓に刻むがよい!」
「それは、こっちのセリフよ!」
二丁の銃と、二振りの短剣が火花を散らす。
ニンジャはローグ職、いわゆる暗殺業だ。闇に紛れて、相手のノドを切り裂く。ましてカリスは獣人族だ。気配を殺して相手を仕留めることには、たけているはず。
なのにこのカリスは、正面からの切り合いを選択した。カンのいいヴィル王女に、闇討ちは通じないと考えたのだろう。
ヴィル王女も、初撃でカリスを仕留められなかったことで、正面切っての戦闘にシフトした。ここまで考えているのか。
なにより……。
「フハハ! 愉快だ! 実に愉快! 伊達や酔狂で戦闘訓練を積んでいたと高をくくっておったこの身を恥じる! 見事な腕前!」
「アンタには、ウチの領地を取られた借りがあるわ! ここで倒すわよ!」
二人とも、めちゃくちゃ楽しそうなんだよなあ。
「どうなさいました、ダテさん?」
『いやあ、あの中に入り込めないなって』
これが力の差か。
ゲーム知識があったとしても、埋められないものがある。
わたしは、打ちのめされていた。
「しかし、わたくしには二人を止める理由がございます」
『そうだね。行こう!』
マージョリーたんは、どうしてもカリスを止めなければならない理由がある。
私は、その手伝いをするんだ。
「おまたせしました。全員の治療が終わりました!」
「ありがとう。あなたはそのまま、騎士たちを守護なさって。ではダテさん、参ります!」
マージョリーたんが、カリスに攻め込む。
「火遁の術!」
玉砕覚悟のマキビシ魔法を、カリスがゼロ距離で放つ。
よけたところに、カリスの短剣がヴィル王女の銃を弾く。
「トドメだ! フハハハ! ヴィルジニー姫よ、覚悟!」
カリスの剣を、マージョリーたんが盾で防いだ。
「おやめなさい、ブリアック・カリス!」
マージョリーたんの呼びかけに、カリスが手を止める。
「マ、マージョリー様!? 殺されたのでは!?」
カリスが、棒立ちになった。
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