第11話 アイテム改造と、技能取得

「はあ。なるほど。それで?」


 渾身の言い訳だったのだが、サブリナはさして驚かない。


「え、だってすごいことではありませんの? 魔神とお話できているのですよ?」


「まあね。ジンデル家の創始者が武装に封じた魔神が、蘇ったんだと仮定して、しゃべれても普通だよね?」


 どうもサブリナは、普通に受け入れちゃっている。

 こういう現象に慣れっこなのだろう。


「でもいいわね。装備と会話できるなんて。うらやましいわ。退屈しなさそうね」


 もっともらしいリアクションをしてくれるのは、ヴィル王女だけである。そうそう。こういう反応が欲しかったんだよね。


「まあ、強い装備なのは変わりないさ。おいで。もっと強くしてやろう」


 毒々しい色を放つツボまで、サブリナはみんなをつれてきた。


「錬金ツボだ。このツボの中に、金属を投下!」


 白い金属を、サブリナは壺の中へ投げ込む。


「ダテ。先にアンタの番だ」


『私は別に』


「サービスだ。一段階だけな。改造される感覚は、掴んでおいたほうがいいだろう。ほらよ!」


『おわっと』


 盾状態のまま、私はツボの中へ。

 ああ、金属と自分が混ざり合っているのがわかる。点滴を受けた感覚かな? 血液に冷たいものが入り込む感じである。


「こんなもんかな?」


 しばらく液体の中に浸かっていると、ペンチで引き上げられた。


「感想は?」


『なんだか、強くなった気がします』


「よかった。お次は、そのゼットとやらだ。ほら」


 サブリナが、ゼットさんにリシュパニウムを配合する。

 ゼットさんが、さらに固くなった。


「あんたは、もういいのかい?」


『私の力は未知数なので、状況に応じて。ひとまずゼットさんを』


 今できる上限いっぱいまで、ゼットさん改造してもらう。お金はかかるけど、仕方がない。イーデンちゃんには、強くなってもらわないと。


「ゼットさん、立派になられて」


『まだまだです』


 マージョリーたんに褒められても、ゼットさんは謙遜する。

 まあ、お話が進めばもっと強くなるからね。

 ウィル王女の銃も、改造を終える。


『それではサブリナ、最後にこれをフル改造してください』


 サブリナに、【回復の杖:小】を見せた。


「はいよ。安くしといてやる」


 なにもサブリナは、インテリジェンス・アイテムだけを改造するわけじゃない。こういった一般的なマジックアイテムも改造できる。


「そらダテ。【特大】まで改造してやったよ」


『ありがとうございます』


 調べたところ、本当に【回復の杖:特大】となっていた。

 これで、準備は揃ったね。


『イーデンちゃん、しばらくあなたは、回復要員ね』


「はい」


 回復の杖を受け取って、イーデンちゃんがうなずく。


『他には、技能の見直しですね』


 ヴィル王女が退屈してしまったので、切り出すことができなかったが。


 攻撃用の【スキル】とは違い、【技能】はキャラが本来持っている力のことである。


 まずは、マージョリーたん。所持している技能は、以下の通りである。

【不沈艦】は、常に防御力二倍。【倹約家】は、戦闘スキル発動で消費する魔力が少ない。他には敵を倒したときに取得する金額が増える、【大富豪】を持つ。あとひとつ枠があるので、そこにいい感じの技能を入れよう。


 ヴィル王女の目玉技能は、【誘爆】である。相手を撃墜すると、周囲の敵にも爆風が通るのだ。倒した相手の体力が大きいほど、周囲に入るダメージが大きい。他は【精神統一】。使ったスキルポイントを回復する。【魔力+一五】はそのままの意味だ。【激励】は、攻撃力アップのバフを撒く。


 イーデンちゃんは、まだレベルが五だ。技能を、何も持っていない。


「みなさんすごいです。わたしは足手まといですね」


 とんでもない!


『これから、強くなるから安心して』


「そうなんですか?」


『マジで、ありえないくらい強くなる。ヴィル様すら凌駕するからね』


「わたしにそんな力が」


 主人公だからね。

 そんな主人公イーデンちゃんに、私は【治癒からの学び】の書を渡す。


「この技能は?」


『クリアしたときに、手に入れた』


「どうやって使えば……」


 イーデンちゃんが迷っていると、サブリナが「読めばいい」と教えた。

 本を読むと、体内に取り込まれていく。なるほど、こういう仕組みか。


「強くなった気がします」


『これからだよ、強くなるのは』


「用途がわかりません」


『使えば、チートスキルだってわかるから』


 取得条件が過酷すぎて、「没データでは?」とさえウワサされていた。「マージョリーたんを生存させること」だし。絶対イベントで死ぬキャラを生かせとか、絶対取らせる気がないでしょ。


「まだ準備はできていませんわ。仲間の配置は?」


 今のところ、盾役が二人と、ガンスリンガーが一人しかいない。仲間の枠は、あと二人分ある。


「ダテさん、仲間の数が足りませんわ?」


 マージョリーたんが、私にだけ聞こえる声で聞いてくる。


『これから増やすんだよ』


『仲間は、これから集めるんだ』


「その口ぶりだと、お心あたりがあるのですね?」


『まあね。とにかくお城で待機を……』


 そこまで言いかけて、騎士から報告が。

 ゼノン公国が、魔物を伴って攻め込んできたらしい。 


 おいでなすったか。


 まあ、相手はゼノンだ。肩慣らしにはちょうどいい。イメトレ通り、イーデンちゃんを鍛えて……。


「じゃ、外で魔物退治よ!」


 あちゃあ。そうなるよねえ。


 お姫様は、いい出したら止まらない。

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