第23話 最後の戦い

「決行は明日の夜19時だ。それまでゆっくり体を休めてくれ」

「エヴァはジョンに作戦を教えてやってくれ」


2人は部屋に戻ると早速エヴァが作戦の説明してくれた。

まずは19時前に国側に潜入している革命軍メンバー国のあちこちに誤報を飛ばし、かく乱する。

このときは実際に爆破なども行い、警察や取締局、軍をセントラルタワーの警備から引き剝がす。


ある程度経ったところで残りの革命軍メンバーでセントラルタワーを占拠。

ルーラーの部屋へ侵入後は爆破し、すみやかに退散。


「なるほど、意外にシンプルだな」

「そうね。でも、この混乱している最中に国中でテロ行為を行えばさらに混乱させることができる」

「たしかに」


今は収容所を破壊したばかりで、外には囚人たちも溢れかえっているため、軍や警察などはそちらに手を割かれている。

そこへさらに国のあちこちでテロ行為を装えば、自然とルーラーの警備は手薄になる。


「よくこんな作戦思いついたな」

「これは私がブルースに進言したのよ」

「エヴァが?やるな」

「でも、この作戦ができるのは革命軍のみんながいるから」

「まるで映画みたいだな」

「ほんとにそうね」


作戦について話したあと、2人はしばしの眠りにつく。

他の革命軍メンバーも夜の作戦のために眠りにつくものが多く、アジトは珍しく静まり返った。

まるで嵐の前の静けさだ。


それから数時間が経過し、ジョンが目を覚ます。

エヴァはまだ寝ているようで、時計はすでに12時を回っていた。


「よく寝たな・・・」


ジョンは目覚めると収容所でクリスを助けられなかったことがフラッシュバックをする。

突然のショックな出来事が寝起きの彼を襲った。


「クリス・・・すまない・・・」


ジョンの独り言にエヴァが目を覚ますと、そっと彼の隣に座り、優しく肩を抱いた。


「大変だったのね」

「クリスを助けられなかった・・・」

「収容所の人?」

「あぁ」

「ほら肩の力抜いて」


エヴァはそう言うと彼の肩を揉みほぐす。

ジョンは彼女のマッサージで少し力が抜けたのか楽な表情になった。


「俺さ、ここを出ていったときから心と体がおかしいんだ」

「おそらくストレスね」

「さっきみたいに気が付いたら体はガチガチに力んでて、息はしづらいし、すぐに怒りや悲しみの感情に飲み込まれちまう・・・」

「大丈夫よ・・・私がいるから」


エヴァは苦しそうなジョンを優しく抱きしめる。

ジョンは彼女のやさしさに涙を流した。


「俺の心と体、元に戻るかな?」

「大丈夫」

「いつも何かに怯えてて、すべてに対して怒りを向けてる」

「大丈夫」

「前がどんなだったのかもわからない」

「大丈夫」

「今は普通を装うので精一杯なんだ」

「大丈夫」


ジョンは自分の心と体の制御が完全に利かなくなっていた。

頭の中はいつも嫌な思い出がフラッシュバックし、とてもまともな思考ができない。

さらにフラッシュバックにくっついた感情が一気にあふれ出し、悲しみや怒りといった感情に簡単に飲み込まれてしまう。


体は頭のてっぺんから足の先まで力んでガチガチ。

呼吸はしづらく、まるで首が絞めつけられているような感覚で、顔や頭はいつも火照っていた。

そんな状態でも生きていかなければいけないため、彼はいつも無理に平然を装っていたのだ。


「ごめん。少しだけ落ち着いたよ」

「うん。もう無理はしなくていいからね」

「でも、今回の作戦だけは頑張るよ。無理してでも必ずルーラーを破壊する」

「じゃあ頑張るのはこれでもう最後」

「あぁ」


ひとしきり会話をしたあとは腹ごしらえ。

その後はエヴァの進言で一緒に革命軍の医師の元へ向かい、ジョンに役立つ薬を処方してもらった。


「どう?」

「薬が効いてきたよ」

「楽になった?」

「あぁ、ありがとう」

「でも、本当にダメなときは言ってよ」

「わかったよ」


2人は部屋に戻ると作戦の準備に取り掛かる。

一通り装備を整えたあとは作戦の再確認。

ルーラーまでのルートや各部隊の動きを確認し、ジョンとエヴァはルーラー破壊の実行部隊に入ることになった。

これは過去にEMPでも破壊できなかったことに対するリベンジだ。

時計はすでに18時半を過ぎ、いよいよそのときが迫る。


アジトにいる大半が下水道へと入り、セントラルタワーにもっとも近い出口へと向かう。

メンバーは全員が覚悟を決めた顔をしていて、ジョンとエヴァも最後までやりきる覚悟で臨む。


「作戦始まりました!」


地上ではすでに国のあちこちでテロを装った誤報や爆破が行われ、警察と取締局、軍は慌ただしく動き出す。

セントラルタワーの入り口まで近づくと、外から大きな声や車が行き交うことが音が聞こえてきた。


「始まったんだな」


ジョンはより一層気を引き締める。


「これが我々の最後の戦いになる!」

「皆準備はいいか!」


ブルースのその言葉に全員が静かに腕を上げる。


「いくぞぉ!!!」


ブルースの合図とともに革命軍は外へと飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る