第22話 爆発

「ドォーーーーン!!!」

「ドォーーーーン!!!」


爆発音は何度も聞こえ、収容所内は一気に騒然となる。

刑務官たちはみな音が聞こえる方へと向かい、囚人たちはどうしたらいいのかわからず、パニック状態。

ジョンも訳が分からず、辺りを警戒する。


「ドォーーーーン!!!」


今度は近くで爆発音が聞こえる。

明らかに囚人エリアの中で爆発したようだ。

ジョンは居房から出て音のした方を見る。

すると、ひとつの居房の中から煙が上がっているのが見えた。


「ドォーーーーン!!!」


今度はジョンのいた居房の2つ隣から爆発が。

彼はものすごい爆音と爆風に思わず床へ伏せる。


「みんな!こっちよ!」


先ほど爆発した居房の中から声が聞こえる。

囚人たちを外へ逃がしているようだ。

ジョンが顔を上げると、爆発した居房の中からエヴァが出てきた。

彼女は居房から出ると、伏せているジョンに気付き、急いで駆けつける。


「ジョン!ジョンなの?」

「・・・」

「早くこっちへ!」


ジョンはエヴァに肩をかしてもらい、そのまま爆発した壁から外へ。

収容所の外にはすでに多くの武装した革命軍たちが集まっていて、全員で収容所へ攻撃をしかけていた。


「もう少し!頑張って!」


エヴァはジョンを支えながら車まで運ぶと、彼を後部座席へ乗せる。

彼女は急いで車を発進。

ジョンは車内から外の様子を黙って見ていた。


「ジョン、おかえりなさい」


エヴァは後ろへ座るジョンに声をかける。


「ありがとう、エヴァ」

「大丈夫?ケガは無い?」

「あぁ、ところでこれは何なんだ?」

「あなたを助けに来たのよ!」

「もちろんあなただけじゃない。収容所のみんなを解放する目的もあった」

「そうか・・・」


しばらく車を走らせると、どこかの倉庫のような場所へ車を止める。

そこには革命軍のアジトへつながる道があり、ジョンはエヴァと2人でアジトへ戻った。


「あらかた終わればみんなも帰ってくるから」

「エヴァは戻らなくていいのか?」

「私はジョンを助けに来ただけだから」

「そうか・・・」

「とりあえずシャワーでも浴びてきなよ」

「わかった」


ジョンはシャワーを浴びながら収容所での出来事を振り返っていた。


「俺は助かったんだな・・・」


自身は無事に収容所の外へ出ることができた。

だが、一緒に脱獄を企てていたクリスの安否はわからない。


「クリス・・・」


シャワーから出たジョンは部屋へ戻ろうとすると、続々と革命軍のメンバーがアジトに帰ってきていた。

その中には若いロバートの姿もあり、ジョンに気が付くと駆け寄ってくる。


「ジョーン!無事だったんだね!」

「あぁ」

「心配したよ!もうあんなムチャクチャはしないでよ!」

「わかった」


ジョンは久しぶりに柔らかい笑みを浮かべ、ロバートと抱き合う。

エヴァの部屋へ戻ると、その少しあとにシャワーを浴び終えたエヴァも部屋に入ってきた。


「なんで革命軍はここまで思い切ったことしたんだ?」

「武力行使よ」

「じゃあ、もしかしてこれからまだ・・・」

「そうよ。これから本格的に国をひっくり返すの」

「そうか」

「ごめんね。ジョンはイヤになって逃げだしたのに・・・」

「また、ここに連れ帰っちゃって・・・」


エヴァは申し訳なさそうな表情でうつむく。

ジョンは彼女の肩に手を置くと優しく微笑んだ。


「助けてくれてありがとう」


2人は強く抱き合い、無事だったことに改めて涙を流した。


一方、革命軍のアジトにはほぼ全員が戻り、負傷者も出たが、死人は無かった。

これは全員が作戦通りに動けたからであり、リーダー・ブルースの指揮官としての能力の高さがあってこそのものだった。

ジョンとエヴァは戻ったブルースから呼ばれる、彼の部屋へ足を運んだ。


「ジョン、無事だったんだな」

「あぁ、助けてくれてありがとう」

「エヴァもよくやった」

「えぇ」

「今後我々はルーラーの破壊作戦を決行する」

「!?」


ジョンはルーラー破壊と聞いて驚く。

一度は失敗し、ルーラーの守りの固さがどれほどのものなのか身に染みてわかっていたからだ。


「もちろん難しいのはわかっている」

「だが、オードリーを含め、我々のメンバーは取締局や警察、軍から政府内部にまで潜入している」

「今は作戦成功のために色々と動いてくれているところだ」

「作戦当日は彼らがルーラーまでの道を切り開いてくれる」

「あとは我々が直接出向いて破壊するだけだ」


とても強い口調でそう言い放つブルースを見て、ジョンは「できるかもしれない」と感じた。

この男なら本当にやれるかもしれないと。


「作戦には俺も加えてくれ!」

「大丈夫か?」

「あぁ、俺もみんなと一緒に戦いたい」

「ちなみに作戦には私も参加するわよ」

「で、作戦決行はいつなんだ?」

「明日だ」


ジョンはブルースの言葉に再び驚く。


「今日あれだけのことをしたのに?」

「あぁそうだ。今なら国中が混乱している」

「この機を逃せば今後ルーラーを破壊できるチャンスは無くなるだろう」

「わかった」


ジョンは最後の戦いを前にもう一度消えかけていた闘志を燃やす。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る