第17話 逮捕

「バンッ!」


談笑していたブルースとオードリーの元へロバートが駆け込んできた。


「はぁはぁ・・・」

「あの、ジョンさんが・・・」

「何があった?」

「ここを・・・出ていきました・・・」

「何だって!?」


ブルースとオードリーの2人は顔を見合わすとすぐに部屋を出る。

外にいた革命軍メンバーにジョンのあとを追うよう指示を出すと、エヴァのいる部屋へと向かう。

部屋の中にはエヴァがひとりテレビを見ながらソファーに座っていた。


「エヴァ!大変!ジョンがここを出ていった」


それを聞いて青ざめるエヴァ。


「一体何を考えてるんだ!」


ブルースはそう言うと壁を手で殴り、怒りを抑えようとする。

オードリーはブルースの肩をポンと叩くと他のメンバーたちと一緒に下水道へと向かった。

一方、ジョンは革命軍のアジトを出てからひたすら走り続けていた。


「はぁ、はぁ、はぁ」


ジョンはかなり息切れしている様子で、意識は少し朦朧としていた。

肉体的な疲れだけでなく、精神的なダメージも大きく、身体はあまり言うことを聞かない。

それでも彼は出口を目指した。


ロバートからもらった地図を見る限り、出口はもう目の前だ。

彼が外へ出ると、そこは街にあるトンネル入り口の脇で、すぐに辺りを見回し、身を隠せる場所を探す。

すると、すぐ近くに橋があるのを見つけ、その下に身を潜めることにした。


ジョンは急激なストレスに襲われ、恐怖や不安に押しつぶされそうになる。

彼は壁にもたれるように座ると、持っていたタバコをくわえて火をつけた。


「俺はなんでこんな状況になったんだ?」

「全部自分のため、みんなのため、国のためを思ってやったことだ」

「なのになんで上手くいかない!」


ジョンは自分が経験したことに納得がいかなかった。

エヴァたちと一緒に計画を立てても実行前にスパイによって壊滅。

2人になってからはEMPを使うもルーラーの破壊はできず、今では国中に厳戒態勢が敷かれ、指名手配。


「俺がやることは全部裏目に出てる」

「まるで絶対上手くいかないよう何か見えない力でも働いているみたいだ」

「この世界は俺が苦しんでるのを笑ってる」

「漫画や映画の中の主人公ならどんな窮地になっても必ずそれをクリアできる」

「でも俺は?全部失敗だ」

「なんだったら、指名手配になって人生は終わった!終わったんだよ!」


ジョンはタバコを思い切り投げ捨てる。


「一体誰のせいだよ?この国か?それともエヴァか?」

「お前らが俺にやらせたんだろ!」

「俺のことそそのかして、ヤル気にさせて、いいように使ってただけだろ!」

「もう何かに振り回されるのはイヤだ・・・」

「自分の思い通りの人生を生きたいよ・・・」


ジョンは両足に顔をうずめ、ひとり涙を流した。

一体自分は何がしたかったのか、どうすればよかったのか。

そうした疑問ばかりが頭に浮かぶ。


「ザッザッザッ」


突然、彼に近寄る足音が聞こえた。

ジョンはゆっくり顔を上げると、周りはすでに軍に囲まれていた。


「今回の事件の犯人だな」


銃を持った軍人が彼にそう声をかけると、ジョンは黙って頷く。


「連行しろ」


手錠をかけられたジョンは車に乗せられると、そのままどこかへと連れていかれた。


その頃、革命軍ではジョンが見つからなかったことに全員が彼の安否をあきらめていた。

エヴァは酷く落ち込み、そんな彼女をロバートが慰める。

ブルースとオードリーは彼に何があったのかをエヴァに聞いた。


「ジョンは失敗続きだった作戦や国から指名手配されたことに絶望していた」

「そうか・・・」

「私があのときジョンを仲間に引き入れてしまったから・・・」

「・・・」


部屋の中は重苦しい空気に包まれ、その場にいた全員が下を向く。

そんな空気を破ってロバートが彼の救出を進言した。


「どうにかして彼を助けられないかな?」

「それは難しいわね。今は軍が主導権を握っている」

「ジョンやエヴァを捕まえられなかった取締局は完全に蚊帳の外」

「私がいくら言っても取り調べすらさせてもらえないでしょうね」


オードリーが改めてジョンの救出が困難であることを伝える。


「わかった。とりあえず今は休もう」

「その代わり、後日今後についての会議を行う」

「解散」


ブルースがそう言うと、全員が彼の部屋から外へ出る。

エヴァは相変わらず落ち込んだまま。

ジョンの人生を自分が壊してしまったと悔いていた。


「私って最低ね」


部屋に戻った彼女はソファーに腰をおろすと、これまでの活動を振り返っていた。

easyのみんなと活動していた頃やジョンとの出会い、裏切りに遭いながらも逃げのび、ジェイソンに救われたこと。

彼女にとっては作戦が失敗して悔しい思いもしたが、ジョンとの出会いや一緒にした活動はとても良い思い出でもあった。


「たしかにジョンの救出は難しいかもしれない」

「でも、この国をひっくり返すことができればどうにかできるかもしれない」


エヴァはジョンのことを思うと再び闘志に火がつく。

彼の想いを無駄にしないためにも彼女は再び戦うことを決意した。

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