第18話 収容所

ジョンは護送車へ乗せられると、そのまま軍本部へと移送。

移送中の彼はただ下を向き、黙って過ごす。

軍本部へ着くと取調室へと連れていかれた。


「この前のEMP爆弾を使ったテロはお前がやったのか?」

「あぁ・・・」

「素直に認めるんだな」


取調官はマジックミラーの向こう側へ顔で何か合図をする。

おそらく容疑を認めたことを伝えたのだろう。


「お前、仲間がもうひとりいただろ?」

「もう別れた・・・」

「どこにいるんだ?」

「わからない・・・」


ジョンは胸ぐらをつかまれると、目の前にはすごい剣幕の取調官が迫る。

それでも表情ひとつ変えないジョンに取調官は手を離すと「まぁいい」と言って一旦部屋の外へ。

ほどなくして取調官が戻ってくると、ジョンは牢屋へ入れられた。


それから数日間はひとり牢屋で過ごした彼は再び護送車へ乗せられる。

どうやら別の場所へ移送されるようだ。

ジョンは自分がどこへ連れて行かれるのかもわからなかったが、質問もすることなく、ただ黙って過ごす。


「やっと死ねるのか・・・」


ジョンは自分がした行いから死刑は免れないと思っていた。

そして、彼はそれを強く望んでいた。

だが、現実は違った。


彼の乗せた車は国の端にある収容所へ到着。

ここは犯罪を犯した者はもちろん点数が70点を下回った者や長期間に渡って波長が乱れていた者などが収容される場所。

ジョンは収容所の奥へ連れていかれ、ゲートを入ったところで手錠を外される。


「お前は今日からここで過ごすんだ」


ここでようやくジョンは自分がさらなる地獄へ連れてこられたことに気付いた。

周りを見ると、いかにも悪そうなヤツばかりで、とても穏やかになど過ごせそうもない。


「嘘だろ・・・」


ジョンはさらに絶望の底へと落とされたのだ。


「おい!ちょっと待ってくれ!」

「なんだよこれ!死刑じゃないのか?」


ジョンは振り返ってさっき自分をここへ連れてきた軍人に声をかける。


「何言ってんだ?」

「お前はここで残りの人生を過ごすんだよ」


そう言い残してその軍人は去っていく。

すると、ジョンの肩に何か棒のようなものが置かれる。

彼が振り返るとゴツイ刑務官が立っていた。


「こっちだ」


ジョンは刑務官に呼ばれるとあとをついていく。


「ここがお前の部屋だ」


ジョンは自分が過ごす居房の前に連れてこられる。

中には老人がひとり座っていて、その老人は彼に気付くと手を上げた。


「新入りか?」

「あぁ、頼んだぞ」


そう言うと刑務官はその場から去っていく。

ジョンが牢屋へ入ると、その老人が笑顔で声をかけてきた。


「わしはアーノルドってんだ。よろしくな」

「・・・」

「お前、どうしてここに来た?盗みか?殺しか?」

「国家転覆・・・」

「はぁ?」


それを聞いたアーノルドは声をあげて笑う。

ジョンは向かいのベッドに腰を下ろすと、そのまま寝転がった。


「国家転覆って・・・それは本当か?」

「・・・あぁ」

「なんでそんなことを・・・」

「俺にももうわかんねぇよ・・・」


ジョンの反応を見たアーノルドはばつが悪いのか、気を紛らわそうとベッドの下から何やら雑誌を取り出す。


「ほれ」


アーノルドが差し出したそれはポルノ雑誌だった。

なんとかふざけて場を和ませようとしてくれたのだ。

ジョンもそれを感じ取ったのか「ありがとう」とつぶやく。


「まぁ、今日来たばかりだしな」

「あとは晩メシを食べるだけだから」

「その時間までのんびりしとけばえぇ」


アーノルドは自分のベッドへ座り込むと、マットレスの下にさっきの雑誌を隠す。


「それ?どうやって手に入れたんだ?」

「これは刑務官を買収して手に入れたんだ」

「他にもあるのか?」

「ポルノ雑誌なんかは簡単には手に入らないが、普通の雑誌ぐらいなら購入できる」

「そうか・・・」


ジョンはアーノルドと会話することで少しだけ気が紛れたような気がした。

そのまま晩御飯の時間まで過ごした2人は揃って食堂へ。

食堂は収容所の中にいくつかあるようで、2人は自分たちの居房から一番近い食堂へ入る。


食堂に入るとガラの悪そうな連中ばかりが目につき、居心地のいい感じはしない。

カウンターに並んで食事を受け取ると、2人は隣同士で座る。


「すごく雰囲気悪いな」

「ここは見た目どおりのヤツしかおらんからのぉ」


会話をしながら食事をしていると、ジョンの前にひとりの男が立った。


「新入りか?」


そう言うとその男はジョンの食事をひっくり返す。


「すまねぇな」


その男はジョンに笑いながら謝罪をすると、彼に顔を近づける。


「文句があるなら言えよ!」


明らかに喧嘩を売っている態度の男にジョンは「ないよ」とだけ返す。

異変に気付いた刑務官が飛んでくるが、その男は「コイツのメシ当たってこぼしちまった」と言い、なんとかごまかした。

その男の態度にジョンはイラッとするが、刑務官が来たため、もう一度食事をもらい、なんとかその場を済ませた。

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