第14話 革命軍
車が道路に出ると周囲を飛んでいたAIライトが一斉にそちらを向く。
「気付くのはやっ!」
ジョンはアクセルを一気に踏み込む。
幸い、国民はみな自宅待機を命じられているため、道路に車はいない。
車はけたたましい音を響かせながら猛加速していく。
AIライトは一斉に車の追跡を開始。
それと同時にすべての取締局員、警官、軍へ連絡を入れ、追跡中であることを知らせた。
取締局のオードリーもすぐにライトからの知らせに気づく。
追跡中のAIライトの映像を見ると、周囲の局員へ追跡するよう指示を出し、自身はヘリコプターへ乗り込んだ。
一方ジョンとエヴァの方には左右後方から次々と追手の車が増えてくる。
明らかに逃げきれる状態じゃない。
「これはさすがにやばいね」
冷や汗を流しながらジョンがつぶやく。
「最初からわかってたじゃん」
エヴァは追手を巻くために助手席で武器の準備を整える。
彼女は窓を開けると静かに手りゅう弾を投げた。
「ドォーーーーン!!!」
後ろでは追手の車が爆発し、それが連鎖して玉突き事故を起こす。
後ろに再び追手の車が迫ったのを確認すると、2個目の手りゅう弾を投げる。
「ドォーーーーン!!!」
爆発した車を交わしながらも追手の車は次々に迫ってくる。
「ったく、キリがないわね」
と、その瞬間に何かに気付いたエヴァは視線が上に上がる。
「ヘリだ!」
上空から数台のヘリコプターも追跡に参加。
エヴァは銃を取り出し、ヘリの方へ射撃をしようとすると、いきなり車が右折。
体が大きく反対側へと傾く。
「危ないじゃない!」
「前からも来たんだ!」
ジョンは前から迫る車を上手に交わしながら脱出ポイントへと進む。
郊外の街を抜け、田舎の方へと差し掛かったところで、道の先に何かが見える。
「今度はバリケードだ!」
道の先には何台もの車が停まって道を封鎖し、武器を構えた取締局員や警官たちが見える。
ジョンは急いで車をUターン。今度は街の方目掛けて進んでいく。
「これはほんとにまずいな」
「さすがに打つ手がないわね」
車が大通りに出ると、歩道にスナイパーが構えているのが見える。
「やばい!」
スナイパーはしっかりと照準を合わせて発砲。
弾丸は車のボディを貫き、エンジン部分へ当たる。
すると、車はみるみるうちに動かなくなり、路肩へ停車。
2人は急いで車から降り、近くの建物へ飛び込んだ。
「あれはなんだ?」
「おそらく電気系統を破壊するようなモノを撃ち込まれたのね」
追手は彼らが入っていった建物の正面側に続々と車を止める。
1台のヘリコプターが道路へ降りると、中からはオードリーが。
手には拡声器を持ち、彼女はそれを使って中の2人に声をかけた。
「もう逃げられないわよ」
建物の正面には各部隊が整列し、武器を構えていつでも突入する準備を整える。
一方、ジョンとエヴァは階段脇の床に座り込み、息を整えていた。
「どうする?」
「もうあきらめるしかないか・・・」
すると、階段下の壁が突然開き、中から人が出てくる。
驚く2人の顔を見て出てきた人物が小声で手招きをした。
「こっちこっち」
ジョンとエヴァは訳が分からないまま、その人物の言われたとおり階段下へ。
その人物が扉を閉めると、階段下の壁は綺麗に元通りになった。
中には下へと続く階段があり、2人はその人物のあとを追う。
階段を降りた先は下水道になっていて、暗い中をドンドン奥へと進んでいく。
ある程度歩いたところで、助けてくれた人物が口を開いた。
「君たち危なかったね?」
「あなたは?」
ジョンとエヴァは少し警戒しながらなぜ助けてくれたのかを問う。
「そりゃああなたたちを助けたいと思ったからですよ」
「僕はロバート。よろしく」
「俺たちはジョンとエヴァ」
「ニュース見たから知ってるよ」
「それよりあなたは?」
「黙ってついてきて、すぐにわかるから」
ジョンとエヴァの2人はロバートの後ろを歩く。
しばらく歩くと、ドアのある場所で立ち止まった。
ロバートがカギを使って開けると、中にはもうひとつドアが見える。
その横には暗証コードを入力する機器と網膜スキャンを行う機器が付いていて、彼が識別を行うとドアが開いた。
「どうぞ」
中へ入るとそこには大きな空間が広がっていて、たくさんの人が忙しそうに何かの作業をしている。
「ここは?」
「ようこそ、僕たちは『Turn over』。革命軍さ」
ロバートが2人に説明しようとすると、近くにいた男が彼に声をかける。
「リーダーのとこへ行ってこい」
「わかりました」
「こっちへ来てください」
ロバートは2人を奥へと誘う。
「地下にこんな空間があったなんて・・・」
「あぁ、すごいな」
革命軍という存在自体聞いたことがなかった2人は奥へと歩きながら周囲を見回す。
少し見ただけでもエヴァたちの「easy」と比べ、何倍も組織力があるように感じた。
「ここです」
ロバートが立ち止まると、そこには木でできた立派なドアがあった。
彼がドアを開けると、奥に誰か座っている。
「こちらへ」
ジョンとエヴァは恐る恐る中へと入った。
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