第12話 爆破

ジェイソンのガレージから出た車は勢いよく森の中を進んでいく。

2人は車の中で改めて作戦について話し合っていた。


「街に入ったら私を公園で下ろして」

「了解!俺は駐車場で待機してればいいんだな?」

「えぇ、EMPを使用したあとはすぐにあなたの元へ向かうわ」


2時間近く車を走らせたところで街が見えてきた。

ジョンは計画で決めたセントラルタワーからちょうど1㎞離れた公園へ向かうとエヴァを下ろす。

彼女は車から降りると手で小さくガッツポーズを取った。

ジョンはそれを見ると黙って頷き、その場をあとにする。


「いよいよだ」


ジョンは公園から離れると、1.5㎞地点の駐車場へと向かった。


「上手くいくかな?」


頭の中で強烈な不安がよぎる。

手は汗でびっしょり濡れ、ハンドルを持つ手は震えていた。


「やっぱ怖いよな、そりゃそうだ。やってることはテロリストだもん」


一方エヴァは公園で隅の方にあるベンチへ腰かけ、バッグの中からEMP付きのブラックを取り出し、用意を進めていた。


「よっ!何やってんだよ」


エヴァの後ろから聞きなれた声がする。


「ブラッド・・・」

「おまえ、よくあの状況で逃げられたな。今度はそうはいかねぇぞ」


ブラッドはエヴァの背中に拳銃を突きつけ、ニヤリと笑う。

エヴァは怒りで歯を食いしばると両手をあげた。


「なんで裏切ったの?」

「はぁ?そんなの金に決まってるだろ?」

「そう・・・、で、easyの他の仲間は?」

「たぶん収容所じゃねぇかな?でも、激しく抵抗してたヤツは撃たれてたからな」

「死んでるヤツもいるんじゃねぇか?」

「そう・・・」


エヴァは落ち着いた表情になると、静かに息を吐く。

その瞬間、エヴァが銃を掴むと、ブラッドは驚いて発砲。

銃口を一瞬でずらして銃弾を交わしたエヴァはそのままブラッドの喉目掛けて思い切りパンチを打ち込む。

まともに食らったブラッドが倒れ込むと、エヴァが今度はブラッドに銃口を突き付けた。


「どう?」

「(声にならない声で)俺の負けだ!」


苦しそうな表情で両手を上げるブラッド。

幸い銃にはサイレンサーが付いており、公園にはほとんど人がいなかったため、発砲は誰にも気付かれていない。


「あんたのせいでみんな捕まった」

「死んでしまったかもしれないメンバーもいる」

「私はあなたを許せない」


その言葉と同時にエヴァが発砲。ブラッドは息絶えた。

彼女はブラッドの体を近くの植木まで引きずっていく、すると、彼の上着のポケットからスマホが落ちた。

彼女がスマホを取ろうと手を伸ばすと、画面には「オードリー」の文字が。


「やばい!」

「ここに取締局の連中が来る」


彼女はバッグから出していたEMP付きブラックをしまうと、すぐにその場を離れる。

走り出すと同時にパトカーがこちらへ向かう音が聞こえた。


「もうすぐそこまで来てる」


エヴァは目立たないように茂みの中を走り、公園の反対側の出口へ向かった。

ある程度走ったところでパトカーの音が止んだことに気付くと、彼女は先ほどまでブラッドといた場所へ視線を向ける。

公園の入り口には取締局の車とパトカーが並んでいて、座っていたベンチの方へ取締局員が向かっているのが見えた。


「ブラッドはどこ?」

「たしかこの辺りのはずだけど・・・」


オードリーの言葉に部下や警官たちが周囲を捜索。

すぐにブラッドは発見され、警官たちが公園の入り口まで運び出す。


「やられちゃったのね・・・」

「まだ近くにいるはずよ!」

「公園内と周囲一帯を捜索して!」


遠くからその様子をうかがっていたエヴァは反対の入り口から公園の外へ。

なるべく目立たないように歩き、近くの建物へと入った。

彼女はそのまま屋上へと上がると、再びEMP付きブラックの準備を始める。


「次こそ成功させる!」


エヴァはゴーグルを身に着け、リモコンを手に取るとブラックを起動。

ステルスモードへ切り替えると、セントラルタワー目指して機体を飛ばせる。


空から見ると、公園内はすでに捜索が始まっていて、公園の入り口には続々と取締局の車とパトカーが集まっている。

公園のさらに先にはセントラルタワーが見え、はやる気持ちを抑えながらも彼女はブラックを進めた。

セントラルタワーが近づくと機体の高度を下げ、タワーの2階部分まで寄せる。


「ふぅー」


エヴァは息を吐くと、リモコンにある爆破ボタンを押した。


「ズーーーン!!!」


遠くの方でものすごい爆発音が響く。

彼女はゴーグルを外すとタワーの方を見つめた。

衝撃波は一瞬で辺りへ広がり、周囲の建物からは次々に明かりが消える。

爆発音を聞いた取締局員や警官たちは何が起こったのかわからず、一帯は騒然としていた。


「無線が使えません!」

「こっちもだ!」

「車も動かないぞ!」


それを見たオードリーは取り乱している取締局員と警官たちに喝を入れる。


「静かに!!!!」


その場にいた全員がオードリーの方へ向いた。

彼女は皆を集めると冷静に支持を出す。

周囲の捜索は継続させ、自身は数人を引き連れ、セントラルタワーへ向かうことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る