第11話 訪問者

ジェイソンはリビングのテーブルの下に敷いたカーペットをはぐる。

手招きをしてエヴァを呼ぶと、そこには扉があり、人がひとり隠れられるだけのスペースがあった。

彼女はそこにEMP付きのブラックを持って入ると、ジェイソンはすぐにカーペットを敷き直してテーブルを設置する。


「ゴンゴンゴン」

「はぁい!」


ジェイソンの家の玄関には鈴が付けられていて、開け閉めをすれば「リンリン」と音が鳴るようになっていた。


「リンリン」

「なんだ、あんたか」


その瞬間、シャワー室で体を洗っていたジョンは音に気付いた。


「もしかして、誰か来たのか?」


幸いシャワー室は家の一番奥にあり、ドアを開けてそっと廊下から確認してみる。


「オードリーだ」


ジョンはすぐに取締局が来たのを確認すると、急いで窓へ手を伸ばす。

静かに窓を開けて、外の様子を確認。

誰もいないことを確かめてから外へ出る。


一方、ジェイソンは玄関でオードリーたちを迎え入れていた。


「なんだ、あんたか」

「入っても?」

「どうぞ・・・」


彼らは家に入ると、そのままリビングへ。


「テーブルに3人分の食事・・・、さっきまで誰かいたの?」

「いたよ」

「もしかしてeasyの連中?」

「そうだけど」

「正直ね」

「あんたに嘘はつけない」

「で、連中はどこへ行ったの?」

「そんなこと知るかよ」

「ほんとに?」

「お前たちが車でゾロゾロ来てるのを窓から見て急いで出ていったよ」

「そう・・・、あなたたち!周辺を見回ってきて!」


オードリーの言葉に3人の部下が外へ出る。

ジェイソンはため息をつきながらソファーへ腰を下ろした。


「もういいか?帰ってくれ」

「あなたは連中に何をしたの?」

「とりあえず、シャワーを貸してやった。あとは食料だな」

「本当にそれだけ?」

「さっきも言ったろ!あんたに嘘はつけない」


オードリーはジェイソンに冷たい視線を向けたまま、彼に顔を近づける。


「あなたももう何もしてないわよね?」

「あぁ、もちろん!調べたかったら全部調べてみろ!何も出ねぇから」

「俺はな、過去の過ちで何年もくさい飯を食ったんだ!」

「もうあんなのはごめんだ!」


じつはオードリーは若い頃に裏稼業を行っていた時期があり、そのときに何度か逮捕されていた。


「そう・・・、わかったわ」

「でも、もし、あなたが今回の件に関与したことがわかれば・・・」

「そのときは二度と出れなくしてやるから」


オードリーはそう言うと、部下と一緒に外へ出る。

周辺の捜索に出ていた部下たちを呼ぶと車に乗ってジェイソンの家をあとにした。


ジェイソンは取締局が完全にいなくなったことを確認して、床にあるカーペットをはぐる。

中からエヴァを出してやると、玄関の鈴が鳴った。


「リンリン」


すると、玄関から入ってきたのは全裸のジョン。

エヴァとジェイソンはそれを見て大笑い。

ジョンは寒そうに体が震えている。


「だって、仕方ないだろ!こっそり外に出て隠れてたんだから!」


このあとは3人で作戦会議。

エヴァが操作し、EMP爆弾をセントラルタワーで爆破。

ジョンは車で待機し、エヴァと合流後に現場から逃走。

その後はジェイソンが用意した脱出ポイントへと向かう。

最後に隣国へ亡命して作戦完了だ。


「これならなんとかなりそうだな」

「そうね」

「ジェイソンはどうするの?」

「俺は一足早く亡命だ」

「この作戦が終わったら確実に俺も逮捕されるだろうからな」


3人はともに抱き合った。

だが、作戦が終わればジェイソンとも再び会える。

作戦は明日の午前10時に決行。

ジェイソンは一足先に国外へ逃亡するため、夜の間に出発してしまった。


「いよいよ明日ね」

「あぁ、俺たちができたのは結局ルーラーの破壊だけか」

「まだ、破壊できてないけどね」

「この作戦が上手くいけばさ、みんな少しは生きやすくなるのかな?」

「わかんない、でも、きっと少しは肩の力を抜いて生きていけるようになるんじゃない?」


次の日、2人とも朝は早かった。

しっかりと準備を整え、時が来るのを待つ。


「そろそろ行こっか?」

「そうだな」


2人は外へ出るとガレージへと向かう。

シャッターが上がると、そこにはエヴァの家で見たのと同じスポーツカーが停まっていた。


「もしかしてこれ?」

「そうよ」

「やった!俺が運転していいんだよね?」

「そうよ」

「でも、俺たちがここに乗ってきた車は?」

「あれはジェイソンが乗っていった」

「そっか」


ジョンは運転席のドアを開けると座席の後ろへ荷物を載せる。

エヴァもいくつかの荷物を載せると、助手席へ。

ジョンがスタートボタンを押すと爆音が轟き、彼の興奮が高まる。


「あまり飛ばさないで」

「目立ちたくないから」

「この車でそれは無理だろ?」


その言葉と同時にジョンはアクセルを思いっきり踏み込んだ。

車は勢いよくガレージを出て森の中へ消えていく。

いよいよ、ルーラー破壊作戦の第2部が始まった。

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