第7話 スパイ
翌日からeasyの幹部7人とジョンでルーラー破壊のための下調べを開始。
建物の図面を見てルーラーの正確な場所を把握したあとは、実際にセントラルタワーに足を運ぶ。
警備員やAIライトの動き、どこから侵入すればルーラーがある場所までいけるのかなど、確認すべきことをすべてチェックする。
また、当日の作戦をどのように進めるのか話し合い、いくつものプランを決めた。
これらすべてのことを幹部7人にジョンを含んだ全員が納得するまで綿密に計画を立てる。
そして、全員が納得するまで半年の時間が経った。
「いよいよ明日ね」
「そうだな」
「緊張してる?」
「してるよ。やっぱり怖いものは怖い」
「私も同じ」
ジョンはエヴァと明日のことを話しながら準備を進める。
2人は不安そうにしながらも互いに励まし合い、気を紛らわそうとしていた。
「本当に壊せるかな?」
「わからない。でも、作戦が成功すればきっと国も変わる」
「そうだな、AIによる支配とコントロールが終わればみんな自由だ」
「そしたら、これをきっかけに私たちの仲間も増えるかも」
「全部終わったときにはみんな自分たちの意志で生きていけるんだ」
明るい未来を想像して笑顔を浮かべる2人。
と、その時、部屋に何かが投げ込まれた。
それを見たエヴァはすぐに気付いてジョンの上に覆いかぶさる。
「バンッ!」
投げ込まれたのは閃光弾。
エヴァはすぐにジョンを起こすと、入り口へ向かって銃を発砲。
訳が分からず混乱しているジョンを引っ張りながらエヴァは窓際へと近づく。
「逃げるわよ!」
エヴァは窓ガラスを割るとジョンと外へ。
今度はお返しとばかりに手りゅう弾のピンを抜いて中へ投げ込む。
「来て!」
「バーーーーン!!!!」
ものすごい衝撃と音に2人は地面に倒れ込んだ。
「一体何なんだよ」
「わからない!でも、逃げなきゃいけないのだけは確かね!」
そう言うと、エヴァはおまけにもうひとつ手りゅう弾を投げ込む。
「バーーーーン!!!!」
「行くよ!」
エヴァは道路に止めてあった自分のバイクへ急いで乗るとエンジンをかける。
ジョンも彼女の後ろへと飛び乗るとけたたましい排気音を響かせ急発進。
「バイクで逃げたぞ!」
2人を襲撃したと思われる人物の大声が聞こえる。
すると、すぐに取締局の車3台が盛スピードで近づいてきた。
「あなたとバイクに乗るといつも追われるわね」
エヴァは悪態をつくとさらにスピードを上げる。
だが、追ってくる車をなかなか引きはがすことはできない。
「バッグの中に手りゅう弾が入ってる!」
ジョンはその言葉に彼女が背負っているバッグから手りゅう弾を取り出す。
「どうすればいいんだ?」
「ピンを抜いて車目掛けて投げるのよ!」
ジョンは手りゅう弾のピンを抜くと後ろから迫る車へ投げつける。
手りゅう弾は命中とともに大きな爆発を起こし、1台が大破。
その後ろからすぐに2台目、3台目の車が迫ってくる。
ジョンはバッグからもうひとつ手りゅう弾を取り出すと同じように車目掛けてそれを投げる。
「バーーーーン!!!!」
2台目の車も大破し、残るは1台。
だが、手持ちの手りゅう弾は底を着いた。
「銃を使って!」
エヴァはジョンに銃を手渡す。
「そのまま引き金を引けば撃てるから!」
ジョンは後ろを向くと運転席に狙いを定める。
心を落ち着かせてよく狙い、照準が合った瞬間、彼は引き金を引いた。
「バンッ!」
彼の撃った弾丸は運転手の額へ命中。
追手の車はそのまま路肩に停車していた車へ激突し、なんとか逃げ切ることができた。
追手から逃れたあとはそのまま街の郊外を目指して走り、誰にも教えていないエヴァの隠れ家へと向かった。
この隠れ家は本当に緊急事態のためにエヴァが用意したもので、彼女の用心深さが伺える。
隠れ家に到着するとバイクはガレージの中へ隠し、2人は家の中へ。
部屋に入るとジョンとエヴァはソファーへ座った。
「私以外の幹部の中にスパイがいた」
「はっ?」
「じゃないと今のは説明できない」
悔しそうな表情でタバコに火をつけるエヴァ。
「一体誰が?」
「きっとブラッドね、バイクに乗って逃げるとき、彼が大声で取締局を呼んでいた」
「なんで?」
「わからない。もしかすると、彼以外にも裏切者がいたのかも」
「これからどうするんだ?」
「・・・もうアジトには戻れない、作戦も・・・半年もかけて練りに練ったのに・・・」
エヴァは涙を流しながら顔を伏せる。
ジョンもさすがに大きなショックを受けたのか、同じようにうなだれた。
部屋には少しの間沈黙が訪れる。
エヴァはタバコを吸い終わると「シャワー」とだけ言って部屋を出る。
ジョンはテーブルに置かれていたテレビのリモコンを操作し電源をつけた。
「犯人は2名。現在も捕まってはおらず、逃走中とのことです」
テレビではすでにジョンとエヴァのことがニュースになっていて、どの番組でも速報として大々的に取り扱われていた。
「それはそうだ。こんな大きな事件、この国ではまず起きない。」
ジョンはボソッとつぶやき、ソファーへもたれ込んだ。
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