第29話 光がみつかり、闇は消え去ったが、まだ謎は残っている。

 ロイドは一呼吸置いて説明しだした。

 

「働き手はこの村の人じゃなくてもいい。村の外からお金が必要な人を探して費用を払って物を運んでもらうんだ。購入した商品に一手間加えて価値を高めれば十分に元は取れる。そうやって俺たちは少なくとも村に出たりせずにこの村で生きている」


 そうだったのか……。

 俺たちとリリィが出会った花畑にあった、あの摘んでいた花にきっと秘密がある。あの花は恐らく商品の価値をあげる何かだったのだ。

 だからロイドはリリィに秘密だって口止めしたんだ。

 別に外に出なくても生活できるのであれば、別に働き手である男性がいなくなっても村は何らかの方法で収入を確保することができるはずだ。


 俺はまた暗闇アイツに向かって行った。


 「ロイドの話からすると、つまり、この世界から人がいなくならない限り、人が物を欲しがる限り、この村は存続する。暗闇で絶望してない、光はある」


 そう、俺がこの村の『光』を告げてから、真っ暗闇の中、地面が揺れ始めた。


「!? シュウ!」


「どうした!? ミヅキ?」


 ミヅキは祈っていた手を外し、そのまま中にあった俺の手をミヅキの足元に持っていた。

 ど、どういうこと!?

 ん? これは右足……? ひざ下が……あ、る。

 ミヅキの足が戻ったんだ!


 周囲はぼんやりとした明るさを取り戻し、ミヅキはまた祈り始めた。

 俺の隣で彼女は宙に浮いた。繋がれたままの手が上に持ち上げられた。


 俺は実感した。

 彼女は紛れもなく、だ。

 

「私はまだココにいる。……明日が来ることは心細くて辛い……けど、まだ……感じたい、……お願い、元に戻って」


 ミヅキはそのままゆっくりと降りてきた。

 手を伸ばしたミヅキはリリィと手を繋いだ。そして繋いだ手を見て何やら促す。その様子に対してリリィは頷き、ロイドにも手を伸ばし、最終的にロイドと俺の手が繋がり、皆で円のような形で繋がった。その真ん中が光り出す。その光が広がって、周囲全てを白く輝かせて暗闇を吹っ飛ばした。


 気がつくと俺たちは光が燦燦さんさんと降り注ぐあの花畑に倒れていた。


 ◇ ◇


「あ、あの何が起きたのですか?」


 俺とミヅキはテッドの家でテッドの父親から聞かれた。

 

 そりゃそうだろう。

 いきなり辺り一面の真っ暗闇が太陽の光を取り戻したのだから。

 

 ……でも、俺、正直何が起きたのかよくわからない。

 どうもこの村周辺の暗闇は去ったことと、この村の闇の病みにかかっていた人の病気の症状が一斉になくなったらしい。


 だから今、ここにはテッド、そしてテッドの両親と俺たちがリビングに集まっている。

 初めてテッドの姿を俺は見た。俺と同じくらいか、背が高い(羨ましい)分、俺より少しだけ年齢も上に見える普通の青年。


 俺は横で座っているミヅキを見た。

 ミヅキは相変わらず、俺の裾を握って斜め下をみており一言も話すようなそぶりは見せない。


 これは何も言うつもりなさそうだな。

 俺が何か言おうと口を開こうとした所で、テッドが先に言葉を発した。

 

「……奇跡ってあるんですね……。またこうやって人前に出ることができると思ってなくて……」

 

 俺はテッドがミヅキをチラチラ見ながら発言してる様子を見て、”あ、そうか。彼女が聖女と知ってると知られちゃいけないから、こんな言い方してるのか”と思った。


「お二人が何かやってくれたんですよね!? やっぱりそこのお嬢さんは聖女様なんですね……ほんとうに有難いことです。この村を救ってくださって、ありがとうございます」


 母親が涙を流しながら”聖女”と口火を切った。

 父親はそれに続いて「ありがとうございました」と頭を下げながら言う。

 

 テッドの両親は二人でよかったと言いあい、その後、今後を話し合うために村の集まりに出掛けて行った。

 残ったのはテッドと俺たち。


「あの、ほんとにありがとう……。あの……最後に会った時、ロイドの話が出たと思うんだが……ロイドが何か関わっているのか?」


 テッドは丁寧な姿勢を崩さずに口調だけ親しみのあるタメ口に戻して俺に聞いてきた。

 

 そうだよな。気になるよな。

 どう言おうかな。それにしてもテッド、俺も君に聞きたいことがあるんだよ。

 この村の若者が闇の病みにかかった真相を教えてくれよ。

 俺はうすうす感じているが、心の中でもやっとしていることを解決したかった。

 そう、結局、暗闇アイツはどこからこの村にどうやって入ってきて闇の病みを流行らせたんだ!?


 まぁ、知らなくても問題はなくなったみたいだからそのままでもいいんだけれども、気にはなってる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る