第27話 闇の病みにかかっていない最後の一人、それがこの村の希望
目を覚ましたかと思ったらリリィは一言告げて、ぐったりとした。
俺はリリィを最初、俺が寝ていた場所に同じように横にそっと寝かせた。
それからどれくらいたっただろうか?
部屋の外が騒々しい。
「リリィ? リリィ!」
ロイドの声が聞こえた俺は鉄格子の扉沿いに外の様子を見ると、端にロイドとミヅキが見えた。
「ここだ!」
俺は声を出した。
その声に反応し、こちらに向かって二人は走ってきた。
「シュウ!」
ミヅキが鉄格子に手を添えた途端、いとも簡単に扉は開いた。
さすが聖女様とも言うべき動作に見惚れるのもそこそこにすぐさま入ってきたロイドにリリィを渡した。
よしっ、鉄格子の扉の外に出て、こんな所から出よう、そう思った時だった。
『みつけた』
鉄格子の扉の外に出た我々の目の前に、黒いローブが急に現れた。
ローブの中には……実態がない。
え? 幽霊!?
実体のないローブの腕部分がこちら側に延びてきた。そうするとロイドの手の中にいるリリィが浮かび、そのまま空中を移動してそのローブの手元にきた。
「お前は何者だ。
『それはこうするなということか?』
そのローブは空中に浮かぶリリィを人形のように扱い、首を折り曲げたのだ。
リリィはそのまま床に倒れた。顔はみるみるうちに青ざめていく。
そのローブからくっくっくという低い笑い声が
『妹は死んだよ』
「な、んだと……」
ロイドは驚き、そのまま床に突っ伏した。そのまま彼はリリィのそばに寄って身体を抱きよせた。
涙を流している様子のロイドにそのローブは非情にも『妹の命は戻らない、お前は何を望むのか』と言った。
「……もう、何も、何もいらない……」
『そうか、絶望したか。これで……最後の人間を手に入れた』
ローブはハハハハハと笑った。
その高笑いの声が廊下中に響き渡った。
『さぁ、光は失われ、暗闇一色だ。聖女よ、我々の勝ちだよ。望みどおり、身体の一部をいただこうか』
ミヅキは耳を塞ぎ、床に膝をついた。
その途端、廊下の柱に、一定間隔に存在している
「いやぁぁぁぁあ」
ミヅキが叫んだ。
「ミヅキ、大丈夫?」
「……シュウ、わたし、わたしの身体……足が、足が……」
「ミヅキ、落ち着け」
俺は叫ぶミヅキを宥めながら、考える。
この地の光とは一体、なんだったのか。
……実態のない
そうか……ロイドが光、この村の最後の希望の光だったのか。
だから、そのロイドが絶望したことで暗闇一色になると
「ミヅキ、……足がどうしたんだ?」
「ない、ないの、右の足がひざ下からなくなってしまったの」
俺はこの村に来た時、見たメモの内容を思い出す。
『これはゲーム。光を探すゲーム。
見つけられたら願いを1つ叶えてあげる。
見つけられなかったら、身体の一部をもらうね。』
つまり、今、あのメモの通りのことが起きているのだ。
――光を探し出すこと、それがミッションだ。
俺はどこにいるのか、何者かわからない
「おい、暗闇、お前の望むような展開になったと思ってるのか? そこに光はある、ここは暗闇なんかじゃない、お前の負けだよ」
『何を言うんだ? 何の力を持たない人間よ』
そう言って
俺はやっとわかった。
この村の光は人じゃないんだ。
だから、ロイドが……働き手となる若い男性がいなくても、この村は終わりじゃない。希望はある。
「ロイド、若い男性がいなくても、この村は終わりじゃない。そうだろ?」
俺はロイドに聞いたが、リリィが亡くなって、もはやロイドは抜け殻となっていた。
「もう何もいらない、知らない。俺はもうこの世が暗闇であろうと、死んでもかまわない」
「ミヅキ、ミヅキ、どこにいるんだ?」
周囲のどこかにいるミヅキを探したが見つからない。
今更ながらだが、あの紐で繋いでおけば……。俺はミヅキとの間に紐がないことを悔やんだ。
「ミヅキ、足は戻る、光をみつけたんだ」
俺は見えないミヅキに向かって言う。
真っ暗闇の中で俺の声だけが空間に響いている。
「あのメモには、光をみつけたらと書いてあったじゃないか、みつけたのに身体を奪うなんて契約違反だ! おいっ! 何か言え」
闇の中からは何も返ってこない。
あのメモの通りに光をみつけたのに……。
俺はいくつかの手がかりを元にここまででわかったことを頭の中で整理しなおした。
それにしても俺だけではそれを証明することはできない。
ここまでか……そう思った。
……いや……こっちには扉をいとも簡単に開けられる聖女様がいるじゃないか。
そうだ。ミヅキなら……なんとかできるはずだ。
俺は半ばやけっぱちになって、
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