第4話

 はあぁぁぁ。

 放課後まで生き残ったあ。陽キャが俺につっかかってこようとはしていたけど、栞が上手く持っていってくれた。

 でもなあ、絶対悪化してるんだよな。


 俺は深いため息を再度吐く。

 下からは楽しそうな喧騒が聞こえる。

 放課後といってもまだ明るいな。


 俺は放課後になるなり急いで屋上に向かった。陽キャに絡まれる前に。

 こっちの方が安全と判断した。


 フェンスから、下を見ていると後ろの扉が音を立てて開く。


「おまたせ、悠成……って、その姿、学校で大丈夫なの?」


 後ろを振り返ると少し驚いた表情をする栞がいた。

 生まれつきの金髪をたなびかせながら歩いてくる。


「まあ、見られなければ」


 今の俺は、鳥ノ巣ウィッグと厚底の伊達メガネを取った昔の姿だ。

 まあ、今でもたまにこの格好をするんだけど。今回は誠意を見せるためにもこの姿がいいと思った。


「いろいろ話したいことがあるんだけどね。時間もなさそうだし、手短に言うよ?」


 真剣な表情をする栞。アイドルとしての表情ではなく、1人の女性としての表情。

 懐かしいな。昔、何度も告白された時もこんな表情だっけな。


「好きです。トップアイドルになれたよ。付き合って?」


 ああ、嫌いだなあ。これに応えられない俺が。二度目になるのかな、栞を裏切るのは。


「……ごめん。付き合えない。本当にごめん」


「……どうして?」


 だよな。理由を聞かれるのは当然。


「うち母子家庭なんだ。それで、貧乏で付き合うためのお金がないんだ。今もバイトをやってて、時間も取れない」


 よくある話ではないかもだけれど、珍しくはないだろう。

 俺は高校に入ってから自分の学費を稼ぐためにバイトをしている。無理言って、家から離れた学校にしたんだし当然だ。


「栞が嫌いなわけではないんだけど、俺と付き合っても、栞は幸せにできない。だから、ごめん」


 栞に頭を下げる。


 トップアイドルになるために本当に頑張ったと思う。それを踏みにじっていると思ったら心が痛かった。


「私がお金払うよ。だから、付き合って?」


 ……あれ?解決しちゃったかも。


「いやいやいやいや!栞が頑張って稼いだお金だろ!?貰えないって!」


 同級生からお金を貰うって、そんな恥ずかしいことできるか!


「悠成のために使いたいから気にしないでいいよ。それに、結婚資金まであるんだよ。結婚式はどこがいいかなあ?」


 栞が笑顔で話す。

 ヤバい。本気だ。


「ほ、本当に無理だから!自分で稼ぐから大丈夫!じゃっ、バイトあるからバイバイ!!」


 逃げて有耶無耶にしよう。

 俺は屋上の扉から中に入り全力で走った。


「あっ、悠成、その姿でっ……ああ、行っちゃった」



◆◇◆◇◆◇


 逃げたものの、バイトがあるのは本当で、結構時間も危ないっていうのも事実だった。


 俺はすぐに靴箱に行き靴に履き替えて外に出る。

 俺はがむしゃらに走った。


 人は少なくて、ぶつかることはなさそう。


『え、待って!あの人ヤバくない?』

『うそうそ!あんなカッコいい人いた!?』

『話しかけようよ……ってもういない!速っ!?』


 なんだか、やけに騒がしかったけど気にする余裕もなく、家まで走って帰った。







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ラブコメ週間ランキングで89位になれました!

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