第42話 -柔らかい何か-

あーーーーーーーーーーーーーーーー。

どうしよ。

遠くから魔法使うのズルくね?

いやズルではないけどズルくね?

本当にどうしよ。

ちょつとずつでも近づくか?

いや、あっちの方が早いだろうし距離を取られるだけだな。

本当どうしたものか。


「ラックーーーー!ちょっと来てー!」

後ろから僕を呼ぶ声がする。

えっと……シュン君?今のこの惨状が見えないかな?

僕今かなりピンチなんだけど?


「ごめんこっちから来た方が早かったわ。」

「!?

ビビったぁ……マジでやめてくんない?というか今戦闘中なんだけど?」

「あー。マ?」

「マ。というかみたらわかるでしょ。」

「いいや。君なら攻撃当たらないでしょ。」

「いや当たるかもよ?」

「それでさ。」


続けんのかよ。

その僕の心は伝わらない。

「それでさ、少女拾ったんだけどどうしたらいいと思う?」

「は?」

シュンの隣を見る。

そこには、シュンに手を握られた、めっちゃビクビクしてる少女がいた。


「……そういう趣味?」

「引くなぁ!ドン引きのその顔やめろ!あとロリコンじゃねぇ!本当に拾っただけだ!」

「攫ったんじゃなくて?」

「1人で泣いてたからとりあえずラッキーのところ連れてきただけだ!」


「連れてこないでもらえるかな!?というかなんで僕んとこなのよ!?」

「いやー、ラックといたらこの子のお姉ちゃんと会えたりしないかなと。」

「……いや僕のLUKはそこまで万能じゃねえ!」

普通に迷惑なんだが。


「というか魔法飛んでこないね。」

塔の方を向く。

……ん?

「ねぇ、シュン。」

「どした?」

「なんか人……というかさっき戦ってた魔女が空飛んでるんだけど?」

「は?んな訳飛んでる!?」


僕と戦っていた魔女は、こちらへ猛スピードで飛んできていた。


「ユキーーーーーーーー!!!!!」

そう魔女が叫ぶと、

「お姉ちゃああああああああん!!!」

僕の後方から叫び声がする。

そして飛んできた魔女は、その勢いのまま、ユキと呼ばれた少女に抱きつく。


「……ラックくん?」

「少女のお姉ちゃんさっきまで戦ってた人とかありえる!?」

すると、魔女はギロッと僕を睨む。

え……怖いんだが?

「あのねえ!アンタ!何で私の魔法が当たらないのよ!?私の魔法lv結構高いのよ!?おかしいじゃ、キャッ!」

僕の方に歩いてきた魔女が転ぶ。

そして僕の視界は真っ黒になる。


ぷにゅ


こけた魔女の体を、貧弱な僕の体が何とか倒れないように耐える。

しかし、高身長な魔女、低……一般的な高校生よりも少し小さい身長の僕。


つまり、僕の顔には、何が柔らかいものが触れていた。

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