第10話
こっちがどんだけ開け放とうと、
あっちが開けてくれなければ風は吹かない。
俺は狩人。
羊を思う存分納得できるまで追い回す。
横の狼に身の危険を感じるまでは競り合う。
「昼は?」
「もう帰って寝る。」
「今昼。」
「昼に間に合えば適当に食う。」
「次の昼?」
「一夜漬けだから、もう帰って寝る。」
「試験に合わせて仕事調整して貰ってるじゃん。
せっかくだし食べて帰んない?」
粘るねー.
何それ,1人で食いたくないからか,
俺と食いたいからか少し気にはなるけどー.
「何度も言わせんなって。
寝不足舐めんな。」
にこにこ笑いながら肩をとんっと押す。
向こうも、にこにこ笑いながら、
「明日一緒なら一緒しよ。」
と残して、そそそそ居なくなる。
ははっ穏やかじゃない。
出口からリュックも見えなくなって。
も一回見直したって見えなくって。
動く。
別に去り際の挨拶がしたい訳じゃ無い。
見られたら事だ。
辺りを見回す。
ちょうどトートバッグを机に立てた所だった。
行かせない。
「なぁ話がある。」
通路を滑るように進んで退路を塞ぐ。
「いー点取れましたか?」
感謝の一言位聞かせて貰ってもいい。
「何なんですか?」
見上げる目が強気で、あんま相手にしないタイプの人種。
ばっちり顔面決まってて、そこに割く時間があるんなら
完璧にとって来てるんだろうなぁって推測できた。
こいつはそういう奴なんだな。まーいいや。
「借り返して。」
「どんなですか?」
「今言いにくいから。
ここ人いなくなるまで待つか場所変えたい。」
「人気のないとこで?」
「あー…
こっちも人ぐらい選ぶから。
無いわ。」
「怖いんですけど」
まーそーか。
「とあるもの見て意見が聞きたい」
「とあるもの?」
「あー…
動画見て知ってる事教えて欲しい」
「何見せる気ですか」
だからっ
「それがっ今っこんなとこで言えないんだって」
「やばいもの?」
「あーまーやばいっちゃやばい。」
分かったように頷くので、溜め息が出そうになった。
結局場所替え.
空き教室片っ端から探してった.
小さめの部屋が良かったけど,
なんか無駄に広いとこしか無くて.
教室の隅に違和感まざまざの怪しい二人組.
イヤホン嫌そうに受け取る所が,
もう嫌だ.
やだけど,頼みの綱なんだ.
「何見せてんですか」
「プロから見て何か分かる事無い?」
「何でですか?」
「この子が気になるから。
これだけじゃ、あいちゃん判断してくれない。」
「あいちゃん?」
「えーあいちゃん。」
「AI?」
「そうそう。
そもそもこれ切り抜きなのか素人なのか。
何でもいいから。
分かる事無い?」
「悪い事に加担するんなら困るんですけど。」
「あー…
個人的な事。
俺、なんかこの子で反応するんだ。
だから、何か手がかりが欲しい。」
「きも」
「そう言うなって。
男は死活問題なんだよ。
これからどうするんだって時に救世主現るみたいな。
どうやって生きてきゃいいんだって時に飯あーみたいな。
もう試験期間終わったし、いーだろーよ。
別に俺と一戦してとか治せよとか言ってる訳じゃないんだし。
お前のピンチ救ってやったじゃん。」
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