第9話

「そもそも業種で契約内容が細かに違いますよ」

って…

はっ?

どこ食いついてんだっよっ!!!

はーーーーーっ

あーーーーーっ

「あーもーいいや。

早く帰って。」

別にこっちも、てめーに彼氏がいようがいまいが

かんけーねーんだよっ。

なんかもう久しぶりに髪の毛掻きむしった。

あんましないのに。セット乱れるからやんないのに。普段。

なんか

じゃあお願いしますって言われ無くて,

ホッとしてた.

あぁ俺,急に換えてって言われたら嫌だったんだなって.

蒸し返さない.

と思って,と思ったのに掛けてしまった,帰る背中に…

「じゃあ何で出直さなかったの」

って投げかけてた.

寒い中,座り込んで

唇真っ青にするまで.

1階なら,その薄着を何とか出来るだろう.

一枚なんか羽織ってくりゃいーじゃん.

パッといってパッと帰る.

それが出来る距離.

ゆらっと髪が流れて,

「帰った時に帰ってくるんじゃないかと思って」

って返答を,動く口見ながらぼんやり聞いて.

あぁそれ思った事あんなって.

どうしても立ち上がれなかった,あの日は俺にもあったなって.

冷たくなってくる尻と気持ちと.

俺,これ電車乗る瞬間に,

待ち合わせ場所に現れるんじゃないかって.

待てども待てども

現れない人に

暫く

よく分からなかった.

何かあったんじゃないかって不安や心配する気持ちは,

何かあったんだろうけど何が起こってるのか分からないになった.

だけど,

繋がらない電話と消えたSNSに.

おぉこれは…と.

手当たり次第に尋ねた連絡は,

全て無駄に終わって,もう忘れろよとしか戻って来なかった.

出来るなら,出来るんなら,

こんなにも必死こいてねーよって…

叫びたかった.

流石に変な奴になるから出来なかったけど.

あいつ出てからおかしくなったとか,お高くなったとか,

言われたくないし,笑って地元に帰りたいってのもある.

軌道に乗ったら,呼び寄せるからって.

あの俺の言葉は何だったのかなって.

俺まだ学生だけど.

必ず…

必ず…

迎えに行くからって.

嬉しそうに見えたのは

自分の願望だけだったのか.

もうよく分からなくなってた.

体も繋がったのに.

やっと繋げられたのに.

そういうのって,どうでもいい事なのか.

俺はさ.

それを機に切られた側なのか.

嘘だろ.

「待たれて嬉しかったなんてキモいですよ.」

「えっ…」

あ…

泣いてた.

静かに.

どうする.

どうする?

そういう事にしとく?

あー…

あっあー!!!

「さっ最近,じょ…

情緒不安定で…

これ…

ホームシックかもしんない…

も…もう,とにかく帰ってよ」

「言われなくても帰りますから.

慰めるなんてなれ合いはしませんから」

何だろう,

もう,お前に用はねー的な.

この空間で空気一緒に吸いたくない的な.

そんな一瞥だけ残して行ける…

てめーがすげーよっ!

「そういうとこ女々しいですね」

最後の捨て台詞は

更に

余計だっ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る