第3話 私とゴルフ②
(お願い、入って!)
そう願いながら、祈るようにして、パターを振り抜くと、コロコロと転がって、カップインしたのです。
その瞬間、周囲から大歓声が巻き起こりました。
喜びのあまり、飛び跳ねたくなる衝動を抑え、笑顔で観客席に向けて手を振りました。
その後、表彰式が行われ、トロフィーを受け取ると、私は、ようやく自分が優勝したことを実感することができました。
それから、しばらく経って、家に帰るとガルオスさんが出迎えてくれ、労いの言葉をかけてくれました。
私は、彼に抱きつき、感謝の気持ちを伝えます。
彼は優しく微笑んで、頭を撫でてくれました。
それがとても心地よく感じられ、幸せな気分に浸ることができました。
それから、二人で夕食を食べに行き、楽しい時間を過ごしたのでした。
「ミリル、この前優勝したからって調子に乗ったらだめだからな、まだまだこれからだ」
「わかってますよ〜、これからも頑張りますから!」
そんな会話をしながら、帰路につきました。
自宅に帰ると、早速お風呂に入り、疲れを癒やします。
湯船に浸かりながら、今日のことを思い出していると、自然と笑みが溢れてきました。
明日はどんな練習をしようか、と考えているうちに、だんだん眠くなってきました。
そろそろ出ようと思い、立ち上がると、目の前が真っ暗になり、その場に倒れ込んでしまいました。
(あれ、どうしたんだろう……身体が動かない……それに声も出ない……誰か助けて……!)
必死になって助けを求めようとするも虚しく響くだけで、誰も助けにきてくれませんでした。
それどころか、どんどん意識が遠のいていくような感覚に襲われ、気が遠くなっていきます。
もうダメかも、と思ったその時、誰かが私の身体を抱き上げ、ベッドまで運んでくれました。
そして、私の頭をそっと撫でる感触がありました。
その手はとても優しくて、安心感を与えてくれます。
そこで私の意識は途切れてしまいました。
次に目が覚めた時、そこには心配そうにこちらを見つめるガルオスさんの姿がありました。
どうやら、ずっと看病してくれていたようです。
「ガルオスさん、看病してくれてありがとう、それと次の大会へ向けて練習しないと」
と、起き上がる私を、彼は制止します。
「無理するな、今はゆっくり休むんだ」
そう言って、私を寝かせ、布団をかけ直してくれました。
私は、そんな彼の優しさに感謝しつつ、甘えさせてもらうことにしました。
翌日、すっかり体調も良くなり、元気になった私は、ガルオスさんと一緒に練習場に向かいました。
今日は、昨日よりも更にハードなメニューをこなし、ひたすらに素振りを繰り返します。
数時間後、クタクタになりながら、練習場を後にすると、そこにガルオスさんが待っていました。
「お疲れ様、よく頑張ったな、偉いぞ」
と言って、抱きしめてくれる彼に身を任せ、しばしの間、心地よい感覚に身を委ねていました。
それから、数日後、いよいよ大会の日がやってきました。
会場には多くの参加者が集まり、賑わっています。
その中で、私は深呼吸をしてから、競技開始の合図を待ちます。
やがて、アナウンスが流れ、試合開始です。
最初の相手は、女性の方でした。
彼女は、長い黒髪を後ろで束ねていて、凛とした雰囲気を漂わせています。
身長は高く、スレンダーで手足が長く、モデルのような体型でした。
顔立ちも整っていて、美しいという言葉がぴったり当てはまるような人です。
そんな彼女を見ていると、同性ながらも見惚れてしまいそうになります。
私も負けじと、気合いを入れ直し、試合に臨みます。
まずはお互いに挨拶を交わしてから、それぞれの立ち位置へと移動します。
そして、審判による合図とともに、プレイが始まりました。
最初はお互いの様子を見つつ、探り合いが続きましたが、次第に緊張が高まり、
ミスが出てしまいました。
結局、1打差で敗れてしまったのですが、落ち込む暇もなく、次の試合に備えなければなりません。
次は男性の相手でしたが、やはり強い人でした。
でも、負けるわけにはいきません。
精一杯戦って、勝利を掴むことができました。
その後も何度か試合をしていくうちに、だんだんとコツを掴んできて、段々と勝てるようになっていきました。
2回戦を勝ち抜いたところで、お昼休憩になりました。
ガルオスさんと合流して一緒にお弁当を食べることにしました。
サンドイッチを片手に談笑していると、ふと視線を感じました。
振り向くと、そこには例の美女がいて、こちらを睨んでいるではありませんか!
(やばい、また怒られるかも)
そう思って、身構えると、意外にも彼女は微笑み、こちらに歩み寄ってきます。
一体何の用だろう、と思っていると、突然私の手を取り、こう言いました。
「あなた、すごくいい動きをするわね、気に入ったわ、友達にならない?」
予想外の出来事に驚きつつも、私は快く承諾しました。
こうして、私は新たな友人を得ることができたのです。
それからというもの、私たちは頻繁に連絡を取り合うようになり、休日には一緒にゴルフの練習をしたり、
ラウンドしたりと、仲良く過ごしました。
そんなある日、彼女に誘われて、大会に出ることになりました。
何度目かの大会ということもあり、不安もあったのですが、
彼女の励ましもあり、勇気を出して参加することに決めました。
当日、会場に到着すると、大勢の参加者が集まっていました。
その中には、あの美女の姿もあります。
お互い目が合うと、ニッコリと微笑んで、手を振ってくれました。
そんな彼女を見て、私も嬉しくなりました。
試合が始まり、次々と名前が呼ばれていきます。
その度に緊張感が増していき、心臓がバクバクしてきました。
そして、ついに私の番が回ってきました。
名前を呼ばれ、深呼吸してから立ち上がり、打席に立ちます。
相手の球筋を見極めて、確実に仕留めていきます。
1球目を打ち返すことができましたが、残念ながらボギーとなってしまいました。
その後もチャンスがあったものの、なかなか上手くいきません。
それでも諦めずにボールを追いかけ続けました。
そうすると、奇跡的にカップインすることができたのです!
その瞬間、周りからは大きな歓声が起こり、拍手喝采を浴びました。
思わず涙ぐんでしまいます。
その後、2回ほどバーディーを取ってから、3回目はパーセーブという結果に終わりました。
今回の大会でしたが、なんとか入賞することができて良かったです。
帰り際、彼女と握手をして健闘を称えあいました。
そして次の日からは、さらなるトレーニングに打ち込むようになりました。
早朝ランニングから始まり、筋力トレーニング、ストレッチ、スイングの確認など、様々なメニューをこなしていきます。
そんな日々を繰り返しているうちに、気づけば数ヶ月が経過していました。
ある日のこと、いつものように練習場に向かっていると、後ろから声をかけられました。
振り返ると、そこには彼女が立っていました。
驚いて目を丸くする私に、彼女は微笑みながら話しかけてきました。
「おはよう、ミリル、最近頑張ってるみたいね、すごいじゃない!」
いきなり褒められて、照れてしまいます。
「でも、まだまだです。もっと練習してレジェンドになれるようにならないと!」
と答えると、彼女は笑って、背中をポンと叩きました。
「その意気よ、応援してるからね」
そう言って、去っていきました。
それから、数日間、毎日のように顔を合わせ、会話を交わす中で、少しずつ打ち解けていくことができたのです。
そんなある日、彼女からデートに誘われました。
最初は戸惑っていたのですが、せっかくの機会なので誘いに乗ることにしました。
待ち合わせ場所に行くと、すでに到着していたようで、手を振る姿が見えました。
急いで駆け寄り、挨拶をすると、彼女も笑顔で応えてくれました。
それから、二人で街を散策し始めました。
色々なお店に入ってみたり、ゲームセンターで遊んだりしているうちにあっという間に時間が過ぎていきました。
最後に訪れたのは映画館でした。
今話題の作品があったので、それを観ることにしました。
席についてしばらくすると照明が消え、スクリーンに映像が流れ始めます。
物語に引き込まれながら見ているうちに、いつのまにかクライマックスを迎えていました。
感動のあまり涙を流していると、隣に座っていた彼女にハンカチを差し出されました。
お礼を言って受け取り、涙を拭いているうちにエンドロールが流れ始めました。
外に出る頃にはすっかり暗くなっていたので、彼女を家まで送り届けることにしたのですが、
道中ずっと手を握られたままだったので、ドキドキしてしまいました。
別れ際に、キスをしてから帰路につきました。
帰宅後、ベッドに横になると、今日のことを思い出し、幸せな気分に浸りながら眠りにつきました。
翌朝、目が覚めると、早速練習に取りかかりました。
いつも通り、素振りやティーショット、パッティングの練習をした後、アプローチの練習をしました。
しばらく続けていると、急に肩を叩かれました。
振り返ると、そこにはガルオスさんが立っていました。
彼はニコニコしながら、こう言いました。
「熱心だな、感心するよ」
私は照れ臭くなってしまいましたが、素直に喜びを伝えました。
その後、彼と雑談をしていると、ふとこんなことを言われました。
「なあ、お前、今度の大会で優勝したらどうするんだ?」
私は少し考えてから答えました。
「そうですね、賞金が出たら、家族に何か買ってあげたいですね」
と答えた瞬間、ガルオスさんは一瞬驚いたような表情を見せましたが、すぐに笑顔に戻り、
「そうか、それはいいな、頑張れよ」
と言って立ち去って行きました。
それから数日の間、ひたすらにトレーニングを続けました。
そうすると、大会当日がやってきました。
会場には大勢の参加者が集まっていました。
その中に、例の美女の姿もありました。
目が合ったので、軽く会釈をすると、向こうも返してくれました。
(よし、頑張るぞ)
心の中でそう呟き、気合を入れ直します。
いよいよスタートの時が来て、一斉に飛び出します。
最初のホールでは、大きなトラブルもなく進むことができました。
続く2ホール目で事件は起こりました。
3打目のティショットを打った瞬間、右膝に激痛が走ったのです!
(痛いっ!)
と思った次の瞬間、バランスを崩してしまい、そのまま転んでしまいました。
幸いにも、擦り傷程度で済んだようですが、痛みはしばらく続きそうです。
仕方なく、棄権することに決めました。
残念ではありますが、仕方ありません……。
そう思いながら、救護室に向かいました。
そうすると、そこにあの美女の姿があったのです。
どうやら彼女も怪我をしてしまったらしく、治療を受けているところでした。
そこで、私たちはお互いに自己紹介をしました。
彼女の名前はアリスと言います。
歳は私より2つ上の20歳で、学生だそうです。
彼女は明るく社交的で、誰に対しても優しく接することのできる性格の持ち主でした。
そんな彼女に惹かれてしまう自分がいることに、私は気づき始めていたのでした。
その日以来、私は練習場に行くたびに、必ずと言っていいほど、彼女を探すようになりました。
そして、顔を合わせる度に、言葉を交わすようになっていったのです。
最初は軽い挨拶程度だったのですが、次第に距離が縮まっていくにつれて、お互いのことを話すようになっていきました。
彼女は大学に通う傍ら、プロゴルファーを目指しているそうで、そのために日夜努力を重ねているのだとか。
私も自分の目標を語ることで、共感してくれる人がいることが嬉しかったのです。
そうして話しているうち、いつしか私たちは親密な関係になっていきました。
互いに惹かれ合い、愛し合うようになったのです。
しかし、それと同時に不安を感じることもありました。
もし、私が大会で優勝できなかったら、この関係は終わってしまうのではないか、という恐怖に苛まれていたからです。
そんな時、ガルオスさんに相談してみると、意外な答えが返ってきました。
「お前は十分頑張ったじゃないか、何も心配することはない、胸を張って行けよ」
と励まされたのです。
その言葉に救われた私は、自信を取り戻し、再び大会に臨む決意を固めたのでした。
大会当日、私は緊張した面持ちで会場入りしました。
そうすると、観客席の中に、彼女の姿がありました。
彼女はこちらに気づくと、微笑んで手を振ってくれました。
それに応えるように、私も手を振り返しました。
(大丈夫、きっとうまくいく)
自分に言い聞かせるように、何度もそう繰り返しました。
そして、運命の一打が訪れました。
私は深呼吸をしてから、ゆっくりと息を吐き出すと、ボールに向かって歩み寄っていきます。
そして、クラブを振り上げ、思い切り振り抜きました。
ボールは高く舞い上がり、美しい放物線を描きながら飛んでいきます。
やがて、ストンと落ちて来て、カップインの音が響き渡りました。
その瞬間、周囲から歓声が上がるのがわかりました。
信じられない気持ちで一杯になりながら、審判の方に視線を向けると、ニッコリと笑って頷いてくれたのです。
その瞬間、涙が溢れてきました。
ようやく、夢への第一歩を踏み出すことができたのです。
その後、表彰式が行われ、トロフィーを受け取ることができました。
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