魔女と調律師
@SenaYukigi
プロローグ S-05719863と魔女のお家
私はS-05719863といいます。製造年月日は2751年7月13日で少し古いですが、流石に皆とお話することはできます。
新しいみんなは終末を知りません。私もそんなに詳しくは無いですが、ニンゲンという生き物がまだいた頃に、彼らが居なくなってしまった時期のことを、そう言うみたいです。
みんなはあんまり興味が無いみたいだけれど、ここから遠い遠い森の中に、魔女さんとお弟子さんが住んでいます。魔女さんは、「私はただのニンゲンだよ、魔女なんかじゃない」って言ってますが、いくらみんなより賢くない私でもそんな嘘には騙されません。
ニンゲンは終末のときにみんな居なくなったし、魔女さんは不思議な魔法を使うのです。
魔女さんのお家には、黒くて大きなモノがあります。魔女さんは「これは楽器で、ピアノと言うんだよ」と教えてくれました。データにないので本当かどうかは分かりませんが、私もピアノって呼ぶことにします。
ピアノには白と黒のスイッチがたくさんついていて、押してみるとそれぞれ色んな音が鳴ります。本当に音が鳴るだけで、なんの意味があるのかは分からないし、なんでそんなものがあるのかも、最初は理解できませんでした。
でも、魔女さんが魔法を使った時は違います。魔女さんが座って、2本しかない腕でそれを触ると、沢山の音が重なり合って、私もみんなも誰も聞いたことのない、素敵な音が流れます。
魔女さんは私が来ると平均して320秒、その魔法を使ってみせてくれます。
私はそれが大好きです。
魔女さんは「これを音楽って言うんだよ、ニンゲンはこれが大好きなの。でも、私はそんなに上手くないのよ。本当は、【彼】の方が、上手いのよ」と言って、お弟子さんの方を見ます。
お弟子さんは私よりも古いアンドロイドですが、私より滑らかに動きます。きっと魔女さんが魔法で整備してるのだと思います。
私はお弟子さんがピアノの魔法を使ってるのを見たことがありません。だから、魔女さんが言ってるのが本当かどうか、分かりません。
私は魔女さんの魔法が好きだから、あとは魔女さんの言ってることが本当かどうか興味があるから、毎日、魔女さんのお家に行ってます。
みんなにも情報を流しているけれど、みんな警戒して来てくれません。
また明日も行ってみようと思います。
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