第4話「そして悪霊の神々が伝説で導かれし者たち」(中編)
そしてファンファーレと共にオープニングテーマが流れた
「おぉぉ……流石に今のゲーム機と比べると音数も少ないけどいつものテーマソングだぜおい」
「時代を感じるなぁ……やべえちょっと感動してる……はよスタートしようぜ」
「おうよ……あれ?」
「え、どうした?」
「”Aボタン押してるのにゲームが始まらない”……!?」
「なん……だと……!?」
「そ、それだけじゃねえ!?”十字キー押してるの”に矢印(→)が動かねぇ……!?」
「な、なんだと……!?ま、まさかバグったのか……!?」
「あの中古屋騙しやがったな動作保証してるつったぞ!?!?」
「お、落ち着け、落ち着いて全部のボタン押してみるんだ!!」
「あ、セレクトで動くのか、そんでスタートボタンで始めるのか」
「良かった……悪い中古屋はいなかったんだね……ぐすん」
「ごめんね中古屋……今度また買い物してあげるから……ゆるしてね♡」
「しょうもねえ事言ってねえではよしろ」
「突然の辛辣」
茶番を終え、ようやくゲームを始めた、キャラクターの名前を決めるようだ
「名前どうすっかね?」
「”う■こ”か”ち■こ”でいいんじゃね?」
「”ま■こ”にしよう」
おお ま■こ !
ゆうしゃトロトロの ちをひくものよ!
そなたのくるのをまっていたぞ!
「……って、下ネタを名前にするのOKなんこの時代!?冗談だったのに!?」
「昔は規制が緩かったって言うけど本当だったんだなぁ……」
「この時代に戻してくれよ……〇ふぱふOKならチ■コもマ■コもOKだろうよ……」
ゆけ ま■こ !
りゅうだいまおうをたおし そのてから
おうごんのたまたまを とりもどしてくれ
「ていうかさっきから気になってたんだがよ、勇者トロトロの伝説といい竜大魔王といい……」
「ああ、お前も気付いたか、俺らの世界で実際に存在した歴史上の登場人物よな」
「……え、ほんとにコレ異世界から来たソフトなの?エーコーが作った歴史物って訳じゃなくて?」
「記録が確かならオラクエは間違いなく原初のソフトの1つだよ、こっちの世界のもんじゃない」
原初のソフトとはアミリ―コンピューターがこの世界にやってきた時に一緒に来たゲームソフト数本の事である
ウルトラマルオブラザーズ、いわおマン、ザビウス、悪魔お嬢様ドラキュリア、爆弾野郎……等々、今も続いているのもあれば消えてしまったシリーズもあるが、これらのゲームが徹底的に研究され後々のこの世界のゲームの基礎となった、そして今2人が遊んでるオラゴンクエストもその1つである
因みにオラクエは元々エニックスクスという会社が版権を持っていたが、今は諸々がありスクスクッエニという会社が続編の権利を取得、今も続く大ヒットシリーズとなった。
わしからの せんべつじゃ !
うけとれい!
「お、おい、コレってまさか……」
「ま、間違いねぇ……」
ゴクリ……喉を鳴らして赤髪はボタンを押して次のメッセージを出現させる
ま■こは120えん手に入れた!
ま■こはたいまつを手に入れた!
「うおおおおおおおおぉぉぉおぉ!?ま、まさかこの王は伝説の……!?」
「ま、間違いねぇ、遥か昔、まだ冒険者ギルドも無く職業もスキルの概念もない時代!多くのまだ16になったばかりの若者を”お前は伝説の勇者の子孫だ!”と嘯いて騙し、120円と松明だけ持たせて150万人もの若者を魔王の元に決死隊として送り込んだ……世紀の悪逆非道のヤダモームの王、スルワ16世だーーッ!!??」
「こ、こんな部屋にいられるか!俺は冒険の旅にでる!!」
とびらはかたくとざされている!
「こ、これも歴史通りなのかぁぁぁ!?」
「す、すげえ、スルワ16世がかつて若者を王の間に閉じ込めて「はい」と言うまで部屋に閉じ込めた歴史まで再現してんのか!?」
「ほ、本当にコレ異世界人が作ったのか!?異世界人って実はこっちの世界の人間なんじゃねぇのか!?」
「いやこの世界に来たと言う”転生者”や”転移者”が言うにはこちらとは全然違う歴史と生活形式だというのは確認済みの筈だ……」
「で、コレどうやって出るんだ?」
「分からん、歴史では王の間に宝箱があって、魔王討伐を受ける代わりにその鍵が手に入る筈だったそうだが……」
「あ、椅子の後ろに宝箱あるわ」
「自分で相手を閉じ込めて無理矢理はいと言わせた挙句、冒険に出る為の諸々の道具は自分で取らせた上に、閉じ込めた扉の鍵は自分で取れって中々極まってんな」
「しかもそれが史実だってんだからやべえ奴だよな、歴オタや大河ドラマで大人気な訳だよスルワ16世」
王の間を出て城を出た、目指すは近くの村だ、ま■こは東に向かい歩いていく
順調に歩を進めるま■こ……しかし!!
すらいむがあらわれた!
「す、スライムが序盤の敵だと……!?」
「そ、そんな……物理攻撃無効で魔法しか効かない強力モンスターの代表格スライムが序盤だなんて……!」
「「リアルだなぁ……」」
「スライムって幼体だと実は結構弱いんだよな、そういうところまで再現してるとかすげえなオラクエ、本当に異世界人が作ってんのかよ」
「うーむ、この限られた容量でここまでのリアリティ……」
「「やはり大人向けゲームの最高峰は伊達じゃないな」」
すらいむのこうげき ! ま■こはしんでしまった !
「……あー、装備無いからか」
「歴史でも城から近くの村に行くまでに何百人もスライムに殺されたらしいな……」
「幼体でも素手だと普通に死にかねんからな、あいつら顔に引っ付いてきて呼吸できないようにしてくるし」
「コアなファンの間では初代こそシミュレーターとして完璧に近い完成度を誇っていたというが、良く分かるな」
おお ゆうしゃよ しんでしまうとはなさけない!
「この辺も再現か……」
「ああ、死んだ若者を回収しては蘇生魔法をかけて口汚く罵った挙句、本人が諦めるまで何度も何度も魔王討伐に向かわせたとかいう話だな」
「頑なに軍隊出さなかったんだってなこの王」
「何がこの王をそこまでさせたんだろうな、完全にサイコパスやんけ、軍隊動かした方がぜってえはええだろ」
「あ、所持金半分になってる」
「死んだ奴の懐から蘇生代とかいって所持金半分奪った逸話も再現か……どこまで作り込んであるんだこのゲームは」
その後も色々あったがなんとか隣の村に行き装備を購入したま■こ、剣と盾を装備しようとメニューを開いた
「なんとなくそうじゃないかと思ったけどやっぱりこの”もちもの”って項目って……」
「ああ、間違いない……”インベントリ”だな」
「という事はこの”つよさ”は……」
赤髪がつよさの項目にカーソルを合わせてボタンを押すと、ま■このステータスが表示される
「”ステータスオープン”も完全再現か……」
「転生者や転移者が言うには向こうの世界には存在しないんだってな、ステータスオープン」
「俺らからすると幼稚園児の頃から慣れ親しんだもんだからな、驚きはしないんだが、何も知らない筈の転移者がこれを作るってのは何なんだろうな……」
「外人が前知識抜きに箸を完璧に操って飯食うようなもんだな、百パーいないとも言い切れないがにわかにはそんな存在いるのか信じられん」
「リアリティがウリのオラクエシリーズだけど、まさかこの時代からここまで作り込んでるとはなぁ……」
「シリーズが20年以上も続くわけだわ……」
そしてま■この冒険は続く、それは険しく苦しい旅であった……
そして諸々があってまず中盤の山場、姫を助ける所だ
「おー、ここも歴史通りか」
「配下のドラゴンに竜の見張りさせる……今だと何考えてんだ魔王ってなるよな」
「昔だから出来た事だよな、ドラゴン
「逃げ場の少ない狭い洞窟で火炎放射吐けるドラゴンを勇者にぶつけるのは賢いんだけどな、味方も巻き添えにする可能性あるからドラゴン一匹しか配置できねーんだよなぁ」
「まぁでもゴブリンとかオークとか亜人型やローパーみたいな触手型の魔物じゃなくて良かったよな、見張らせたら大事な人質傷物にされてたかもしれんし」
「ゴーレムは狭い洞窟に入れねーしな、割とあの時代じゃこの配置がベターだったかもしれんな、戦略もスキルも魔物も進化した今の時代だともっと効率的かつピッタリな魔物がいるけど」
そんなこんなで、ま■こはドラゴンを倒しお姫様を助けたのだった
ああ わたしをたすけてくださる ひとがいるなんて!
わたしは スルワ16せいのむすめ ローターです。
わたしを おしろまで つれかえってくれますわね?
「なんでこの女連れて帰って貰う前提で話してんの?自分で歩けや」
「あー確かこの時代のお姫様って今と違って政略結婚の道具扱いだったからな、美しくする為に蝶よ花よと育てられてて、自分で歩くより馬車で運ばれるのが当たり前だったんだよ」
「マジかよ、今の時代なんてお姫様なんて英才教育がてら大抵騎士とか剣士とか兼ねてて下手な男よりつえーのに」
「魔法使い以外でも魔力を応用して諸々できるって発見されてからは最早ただのお姫様じゃ生き抜けねえ時代になっちまったからな、実際ローター姫を”最後のお姫様”と呼ぶ奴も多い」
「ただのお姫様も技術革新の波には逆らえねえのか……世知辛いねぇ……いいえ、と。」
そんなひどい……
わたしを おしろまで つれてかえってくれますわね?
はい
▶いいえ
そんなひどい……
わたしを おしろまで つれてかえってくれますわね?
はい
▶いいえ
そんなひどい……
わたしを おしろまで つれてかえってくれますわね?
「圧がつええなぁこのお姫様はよぉ!!??」
「スルワ16世の娘ってだけはあるな、唯我独尊を地で行ってやがるこの女、やっぱおしとやかなお姫様なんてのはあの時代でもファンタジーなんだな、諦めろ相棒、歴史通りに進めろってこった」
「歴史再現に重みを置いたリアル志向のゲームだとは分かってはいるんだがな……はい、と。」
ま■こはローターをだきかかえた
うれしゅうございます。ぽっ
「相手がいいえを連発しても、折れるまで食らいついた挙句勝手に頬染めるとか超肉食系やんこのお姫様、そのメンタルなら余裕で歩いて帰れるだろ」
「ヘタレ主人公に遠慮してあっさりと寝取られた挙句、『私の気持ちに気付いてたくせに!』とか『好きって言ってくれなかった癖に!』とか逆ギレする今時のエロヒロイン共もこの精神を見習えばいいのにな」
「しかしコレ抱きかかえてるっていうか右手に装着してるって感じあるよな」
「さすがに時代が時代だしな……」
ま■こはローターを付けたまま洞窟を脱出、モンスターを倒しつつ、近くの村に休憩に訪れた
「HP消費したから宿屋止まるか」
画面は暗転、宿屋に泊まった時特有のSEが響く
宿屋の主人がローターを付けたま■こに語り掛ける
おはよう ございます。
ゆ う べ は お た の し み で し た ね
「やりやがった!!コイツ等やっちまいやがった!!??」
「やっぱいつの時代も勇者ってのはヤリチン野郎ばっかだなおい、この時代に
「大丈夫なんかそんなんして、確か王の可愛い一人娘だろ?」
「あー、その辺の記憶は定かじゃ無いけど、確かスルワ16世でスルワ政権って完全に終わってた筈だぞ、しかも勇者が王権に組み込まれたとかそういう話も全くない……」
「闇を感じるなおい!!……てか宿屋の主人もしっかり聞き耳立ててんのな」
「この時代の宿屋ってそういう意味合いもあるからな、むしろヤらない方がおかしい」
「最近のオラクエだと一般層に広まったせいでその辺普通にカットしてっからなぁ……リアル志向のゲームでその辺のリアリティを無視するってどうなんよ……ああ古き良き時代だ」
おお ま■こよ! よくぞ ローターをたすけてくれた! こころから れいをいうぞ!
さあ ローターよ わしの となりへ
おまちくださいおとうさま ま■こさまに おわたししたいものが あります
ま■こ さまを あいする わたしのこころ どうか うけとってくださいませ
ああ たとえ はなれていても ローターは いつも ま■こと ともに あります
「この女……父親の目の前で一晩寝ただけの男に実質告白しやがった!!」
「可愛い一人娘の命を救ってくれた男だから流石のスルワ16世も文句言えねぇみたいだな、まぁ今まで誰も姫救出を達成出来なかった事を思うと、コイツや姫にへそ曲げられでもしたら竜大魔王を誰も倒せねーからな」
「つーか受け取る受け取らないの選択肢も無いとかこの女どんだけ強い圧を勇者にかけたんだよ……」
「周りの衛兵たちもしっかり見てるから勇者も勇者でもう逃げ道ねーな。外堀をしっかりと埋めてやがる、今時の寝取られヒロインもこの積極性を(以下略」
ローターを城に置いてきたま■こ、さぁ後は竜大魔王を倒すだけだ、長くつらく険しい道中を終えて、遂に竜大魔王の目前までやってきた
よくきた ま■こよ。わしが おうのなかの おう りゅうだいまおうだ。
わしは まっておった。そなたのような わかものが あらわれることを…
もし わしの みかたになれば……
せかいの はんぶんを ま■こに やろう。
「おおコレは世界で一番有名な魔王と勇者の問答じゃん、自分の事を王の中の王とか言ってるけど歴代魔王で一番弱いんだよなコイツ」
「勇者はこれに毅然といいえと応えて竜大魔王を倒したんだっけか、有名な逸話だよな」
「じゃあこの選択肢はまた”いいえ”一択か……。じゃあ試しにはい、にしよっと」
▶はい
いいえ
ふっかつの じゅもんを おしえよう……
ではせかいのはんぶん やみのせかいを あたえよう
突如メニュー画面が赤くなり、そのまま画面が暗くなりゲームは終了してしまった
「え」
「え」
そしてタイトル画面となった
「えええええええ!?ちょ!?は!!??」
「え、なにこれ、は?バッドエンド??」
「え、ちょっと待てよ、さっきは『歴史改変はできない』って話だったじゃん!!これは”いいえ”って言うまで問答を繰り返すんじゃないのか!?」
「おおおおお、落ち着け!おちおちおちお落ち着いてててて、いいあいまの、ふっかつのじゅもんをにゅにゅにゅにゅ入力」
「お前が落ち着け」
赤髪は冷静にツッコむと、竜大魔王から教えてもらった復活の呪文のパスワードを入力した
「ええと、と、゛、と、゛、ん、は、゜、ち、た、゛、い、お、う、し、゛、よ、う、さ、い、し、ゆ、う、き、ち、く、へ、い、き、と、゛、う、む、……な!?」
「どうした!?」
「レベル1,所持金、経験値ゼロで最初から、だと……!?」
「今までの苦労……全部パー……?」
見た目だけ美少女な異世界底辺弱者男性共の会話劇 四図○ @ninnnikukamen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。見た目だけ美少女な異世界底辺弱者男性共の会話劇の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます