第4話「そして悪霊の神々が伝説で導かれし者たち」(前編)

夜も更けた所、街中を青髪ショートヘアの美少女が1人歩いている、手にはビニール袋、中には酒とツマミが沢山入っている。

Tシャツ短パンと言うラフな格好で、サンダルをペタペタ鳴らしながら歩く姿、まるでおっさんだが一応この小説は美少女が主役である、そう見えるだけではあるが美少女なのだ。

青髪はあるアパートにたどり着いた、そこの二階に住んでいる人物に会いに来たのだ、呼び鈴を鳴らすと中からドアが開く、赤髪のロングヘア美少女剣士が出迎える、こっちはタンクトップに短パンというこれまたラフな格好だ。


「おー上がれあがれ~」

「うぃーっす」


二人は同じギルドに所属している同僚であり、居酒屋や食堂などで一緒に飲むことも多い間柄であった。

コンビを組んでからは、クエストを終えた後この町のちょっと大きい酒場でまるでおっさんのように酒と飯をかっ食らいながらまるでおっさんのような会話をするのが日課になっていた。

しかし今回は居酒屋ではなく赤髪の住んでいる部屋で宅飲みするようだ。


「つーわけでかんぱーい」

「かんぱーい」


赤髪はノンアルコールビール、青髪は普通のビールで乾杯する、カコン、と缶が小気味いい音を奏でる。

お互いゴクッゴクッと喉を鳴らして一気のみをする、ぷはぁ~っと息をつく二人。


「そんで、遂に手に入れたんだって?」

「そうそう、コレの為に大好きな諸々を我慢してようやく手に入れたぜ……」


赤髪は少しもったいつけてから、ドン!と自分の口で言いながらそっとテーブルにそれを置く、それは白い本体に所々赤いラインが入った古い感じのするゲーム機だった


「うおおおぉぉぉぉぉ……!お前マジで手に入れたんか……!?伝説の”原初のゲーム機”!!??」

「ふっふっふ、そのレプリカだがな、だけどそれでも20万もしたぜ……!」

「今の俺達が遊んでるゲーム機やスマホもコレが無かったら産まれなかったって言う伝説の”アミリ―コンピューター”……!!すっげぇ……なんかどことなく高貴な雰囲気すら感じるなぁ……」

「50年前に突然異世界から複数個次元を超えて召喚され、使い方が全く見当もつかずに当時の魔術師達を大いに困惑させた伝説の存在、……あ、やべ、泣きたくなってきた」

「流石に本物の方じゃねえのは残念だがまぁ仕方ねえ話ではあるな、アレはもう1000万円とかで取引されてた筈だし……ソフトは!?」

「勿論あるぜ……ドーン!!」


赤髪はゆっくりとソフトをテーブルの上に置く、それは、鎧を付けた青年が赤い目をした緑色のドラゴンと対峙ている絵が描かれた物だった。

それを見た瞬間、青髪のテンションは爆上がりしていた


「こ、これは!!まさか!!あの有名なRPGシリーズの原点!何も知らない筈の異世界人が、と言う事で激震させたあの!!」

「ああ!『オラゴンクエスト』だ!!!!!!」


そう!このゲームは勇者が魔王を倒す為、モンスター達を倒しながらレベルを上げつつ冒険をして最終的にはラスボスを倒して世界を救う!と言う

シリーズの原点である!!


「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!??お前コレもいくらしたよ!!??」

「ソフトは10万円……合計30万円だ!」

「バカじゃねえの!?バカじゃねえのお前!!??因みに褒めてんだぞこれ!?」

「分かってる分かってる……俺はこの日の為にずっと貯金してたんだよ……、クエストの数2倍にしたり、バイトも増やして……ぐすっ」

「泣くな泣くな!お前の苦労は痛いほど伝わった!さぁ、早速テレビに繋いで……、あ、お前変換器を忘れてたなんてオチはないよな?今の規格だとテレビに繋げれないから……」

「俺がそんなヘマするかよ!こっちはちゃんと準備してあるぜ!」

「よっしゃあ!じゃあ早速繋いでテレビ画面に映そうぜ相棒!」

「任せろ相棒!!」


2人は談笑しながらテレビにコードを繋いでいく、そして後はテレビを付けるばかりになった


「さぁそれでは赤さん、リモコンをどうぞ」

「ありがとうございます青さん、スイッチオン!」


テレビを付けるとニュース番組がやっていた


「あれ?」

「ああ入力切替でビデオ1にしないとな」

「んも~うっかりさんめ♡」

「てへぺろ♡」

「きめえんだよ早くしろ」

「急にドストレートに辛辣で草」


ニュース番組などに興味は無い、さっさと入力切替しようと思ったら


『続いてのニュースです、ゲーム業界の最大手、エヌ天道から重大発表ダイレクトがあるそうです』

「ん?エヌ天道どうした?」

「あの会社ほんとなんの予告もなく急に色々発表するからなぁ」


エヌ天道は創業70年になる魔法おもちゃ屋の老舗であった、しかし45年前異世界から来たアミコンを一目見て、当時の創業者一族にして社長である通称”山下番長”はこれからの時代はアミコンが来ると確信、多額の借金をした上に当時反対していた血族の連中を大量解雇、そしてその代わりにその筋の研究者を外から大量に雇用、当時40代以下の中堅~若手社員を中心に徹底的な研究を行った、そして見事アミコンがどのようなものかの解明に成功、アミコンのレプリカを大量生産し世界中に販売、それだけにとどまらずアミコンのソフトを自分達でも大量に開発、世界的な大ヒットとなる。そして更にその熱に呼応するかのように多くの天才達がエヌ天道に集まった、エヌ天道に続けとライバル会社も多く登場し、今も続く群雄割拠の一時代を築き上げた。40年の間に何度も倒産の危機に遭いながらも、娯楽を追及する通称”エヌ天道イズム”が”山下番長”無き今も社員たちに受け継がれており、名実ともに世界を代表するゲーム会社にして最大手で最老舗である


「そのエヌ天道がなんのニュースだ?」

「タコゲーの新作でも出るんか?」


タコゲーとはエヌ天道が誇る大ヒットシリーズの1つである、エヌ天道が苦境に陥った時若手が中心となり「新しいコンセプトのゲームを作ろう」と作り出し、ゲームベテランである幹部や上司達を見事に虜にして、会社の威信をかけて全力で売り出し、そして見事既存のファンだけでなく新たなファン層開拓に大成功した有名ソフトである、因みに今回の話には全く関係ない。

画面には現社長の古下さんが映っている、何やら神妙な面持ちでカメラを見ている、一体何が始まるのだろうか?2人が興味深く見てると古下さんは口を開いた。


『最近我が社の原点であるアミリ―コンピューターが高値で取引されている事が幹部会で話題になりました、しかし我々にとってゲームとは誰もが手軽に遊べる娯楽、やはり敷居が上がる事は我々の本位ではありません、月額200円で50タイトル遊びたい放題、子どもの小遣いでも安心、更にソフトはどんどん追加予定です、そしてこのニュースダイレクト終了後から開始します、お楽しみください』


そして遊べるソフトのラインナップが次々に画面に表示され……中には『オラゴンクエスト』も入っていた


『いやービックリしましたね、まさかアミコンのソフトが現代に蘇るとは!』

『あの当時子どもでしたから、我々としても感慨深いですねぇ』

『私産まれて無いんですよ~、ずっと興味あったので楽しみです!帰ったら早速遊ぼうかと思います!!』


アナウンサーたちがテンションを上げて会話する中青髪は赤髪をゆっくりと見た


「……あ、赤さん」


赤髪は俯きながら涙を流していた、畳を毟り取らんとする勢いで爪を食い込ませながら泣いている、一番泣きたいのは大家だと思うが


「エヌ天道ぉぉぉあああぉぉぉぉおぉ…………!!!!!!」

「落ち着けエヌ天道は何も悪くない、ユーザーの事を第一に考えた企業の鏡だ」

「三十万円がぁぁぁぁ(月額)二百円だとぉぉぉぉぉぉ……奉仕精神も程々にしとけやあぁぁぁぁ……」

「うわ、血の涙流してる奴初めて見た……ま、まぁ気を取り直してやろうぜ、こういうのは所有してる事それ自体に価値が有るんだよ、ほら元気出せよ!」

「……うぅ……うん……」


赤髪が泣きながらコントローラーを握った、今度こそビデオ1にしてから電源を入れるとファンファーレと共に古めかしいドット絵が表示された

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