第3話「チートスキルが欲しいと君は言うが」(中編)
そいつの名前はAとしよう、特に特徴もない平凡かつ平民の彼だったが、5-6歳に入った頃に既に彼の特異性の片鱗が見えていた。
「特徴も無い平凡な彼とかいう時点で何かのフラグにしか思えない」
「黙って聞いてろ」
Aは女の子にモテた、特に気が利くとか容姿に優れているとかそういう事は無かったが、女の子からの人気が高かった。
その頃はまだ両親も「Aは人気者ね」「将来はハーレムだな」なんて呑気に構えていた、しかし彼が10歳になった時、流石にそうも言ってられなくなった。
騎士学校の初等部での授業参観。そこで親が見たのはクラスの女子生徒が授業中であるにも関わらずAの周辺を囲みながら授業を受けてる姿だった。
両親は衝撃を受けた、今までもモテる事はあったがここまで露骨じゃなかったからだ、娘の親たちからどういう事かと突き上げられたが両親だって何が何やら分かる筈がない。
すぐに両親はAを医者に連れて行き検査を受けさせた、その結果分かったのが、彼には何故か異性を引き付けるフェロモンが大量に出ているという事だった。
何故そうなったのかまでの原因は分からず、治療魔法も効果が無いままAは中学へと進学した。
中学生になってもAの周りには女の子が絶えなかった、その頃には上級生や他のクラスの女子までもがAに群がっていたので、男子からは勿論嫉妬の対象になっていた。
「それでいじめられたり攻撃されたりしないのか?」って?そういう事は全く無かった、理由は単純、女子が守ったからだ。Aには常に複数の女子がついて回っていて、Aに危害を加えようものなら即座に他の女子に袋叩きにされた。
女子に嫌われると言う事は……まぁ男にとっちゃは非常に屈辱的かつ避けたい事態だからな、Aは特にいじめられる事は無く学生時代を過ごした。
「……ちょっと待って」
「どうした」
「女子に嫌われる云々のくだりでトラウマが」
「……続けようか」
そして中学生と言えば、そう、思春期であり一番性欲の強い時期だ、当然のごとくAは複数の女子とヤっちまってたし更に複数の女子を孕ませてしまっていた。
当然女子の両親たちは激怒、学園まで乗り込みAを殺そうとせんばかりに責め立てた、しかし肝心の被害者の女性達が団結しAを守った、それどころか両親たちに罵りながら攻撃を加えた。
なんとか力づくで引き離そうと思ったが、ここは異世界ファンタジーの世界、男子と女子の差はフィジカルぐらいのもので中学生女子と言えど戦闘力に秀でており流血沙汰は避けられない、
……本来ならばここで騎士団等に訴えて、Aを強制隔離、然るべき施設に研究させれば何とかなったかもしれない、しかし両親たちはまだ幼い娘たちが妊娠してしまったと言う事実を広めてしまうのは世間体が悪いと涙を呑んで泣き寝入りしてしまった。
ここまでの事態になると、当人のAも流石に自身の特異性にはとっくに気が付いていた。……自身のこの力を呪ったかって?いやいや、健康優良中学生男子だぞ?歪んだ成功体験はむしろ逆に自分は神に選ばれた特別な人間だとどんどん思いあがらせていった。
暫くしてAの過剰なフェロモンの原因が分かった、14歳になると行われるスキル選定の儀でようやく判明したのだ。スキル名はまんま”魅了”、男ならば皆一度は欲しがるスキルの代表格だ。
スキル内容はシンプルで、自身が思うままに異性を惹きつけるという物だ、しかし通常の魅了スキルは精々2~3人の所……
「2~3人でも十分すぎるぐらい羨ましい能力だが」
「スキルが効く時間も精々2~3分だぞ」
「ゴミスキルじゃん」
しかし通常の魅了スキルは精々2~3人の所、Aのソレは百人以上の女を、しかも効果時間がほぼ永久というぶっ壊れ性能だったんだ。
高校の頃になると更なる変化が訪れた、なんと女子だけでなく男子たちまでもがAの魅了にかかってしまうようになった。
Aはゲイではなかった、至ってノーマルの男だ、でもその時点ですでに女に飽き始めていたAは、男までも抱き始めちまった。
「地獄絵図」
「ああ地獄絵図だ」
更に高校2年生になる頃には結局生徒を男女問わず虜にし、3年になる頃には魅了は更に成長し、なんと教師たちまでもが彼にメロメロになった。
同世代の人間に飽きたAの矛先は中年に向かう事になってしまった。
「男女問わず?」
「男女問わず」
「うっへ……」
さてここで大学受験という人生でもかなり大きな壁が立ちはだかる、通常なら大抵のこの世代はこの時期だけは大抵真面目に勉強し、大学入学に備えるのが常だわな?
「俺はしてない」
常だわな?だけど中学高校と異常とも言えるほどの性生活を満喫していたAに勉強など出来る筈がない、しかし彼の成績は毎回ほぼ満点だった、何故か?答えはシンプル、魅了された他の学生たちが協力し試験問題をコピー、更にテスト中も教師にバレないように答えを教えていたから。
何故か唯一魅了の影響を受けていなかった親は、もうやめろと口酸っぱくして言ってたんだが調子に乗ったAは最早どうしようもない。流石に大学受験でズルはできない、そう思われていたがAはオープンキャンパスの日に大学に堂々正面から侵入、魅了の力で教授たちに取り入った、Aは筆記どころか推薦入試すら受ける事無く特例であの某有名大学に苦労する事無く入学してしまった。
「ここまで聞くと普通に羨まし過ぎて嫉妬で狂い死にしそうなんだけど」
「まぁ待て、”ざまぁ”はここからだ」
―後編へ続く
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