第17話
アヨはホマの顔を見て張り詰めていた表情が和らぎ、ホマはそっとアヨの肩に手を回し自分の方へ引き寄せました。
JN「え…っと…その手は…いつの間にそういうご関係に?」
H「もう、俺も我慢するのはやめたんだ。素直にアヨに気持ち伝えて俺たちは男と女として向き合うようになった。だから、アヨに今カイと結婚されたら正直…俺のが困っちゃうな。せっかくチャンスが巡ってきたと思ったとこなのに。」
不安そうな目をするアヨをジノ達から庇うようにホマは優しくアヨに微笑みかけます。
Y「ホマ…本気なの……?」
H「もちろん本気だよ。」
A「だからテリさん…なんとしてもカイにあなたを思い出してもらわないと…私は父には逆らえない…私がどんなに拒んでも無理なの…」
T「…もう…私には無理だよ……」
テリはカイと別れる事よりも、自分との思い出がカイの中で書き換えられていたのがとてもショックで胸が疼きました。
あの日々はなんだったのだろう…
忘れてしまうようなその程度の時間だったのだろうか?
やっと自分という存在を認め愛してくれた人が自分を忘れるという現実は…
テリにとってみれば、崖っぷちから人差し指1本で地獄の中へ突き落とされたような気分だったのです。
そんなあまりにも弱々しいテリの言葉にその場にいたみんなは思わず、息を呑み黙り込みました。
そして、テリはそれから記憶ないカイの元に戻るわけにもいかず…
ジノ達もどうする事も出来ず、治療の必要がなくなったテリはまたジヨに囚われ、ジヨの家に住むようになりました…
そして、テリはジヨが仕事の時にだけ逃げ出さないよう監視の為にジノとユキの家に連れて来られるのです。
ジノとユキはジヨの前ではうまく話を合わせてテリを監視をしているように装いました。
しかし、テリはあの日から言葉数も少なく食事を拒むようになり日増しに衰弱していきます。
JY「僕の可愛い子…」
ジヨが家にいる時は衰弱しきるテリを自分の思うままに操り、日中は少しの空き時間さえあればジノとユキの家を訪れ、自分の思い通りになるテリを抱きしめ続けました…
それはまるで人形を抱きしめるように。
ジノは日増しに弱っていくテリに無理やり点滴から栄養を体内に入れていたのですが、テリは次第にそれすらも拒むようになり、窓から見える空をただぼんやりと見上げます。
ジノはそんなテリの状態を見兼ねてジヨにはテリの体の状態では入院が必要だと口実を作り…
ジヨの元からテリを離れさせるようにして半ば強引にジノの病院にテリを入院させました。
そして、カイは変わらず記憶が戻る気配はありません。
アヨはカイのそばでホマと一緒にテリの名前を出してみたりするのですが、ふたりの思い出を知らないアヨと精神科医のホマでもカイの記憶を引っ張り出すのはとても困難な作業だったのです。
A「このままカイの記憶が戻らなかったらどうしよう…私のせいだ…」
H「大丈夫…大丈夫だよ。」
アヨは自分のしてしまった事の罪の意識が深く残り毎日悔やんで過ごしていました。
そして、それをホマがいつもそばで包み込むようにアヨを慰めていたのです。
つづく
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