第16話
ジノとアヨは一緒にカイの病室を出てすぐ、ジノはアヨを問い詰めます。
JN「アヨちゃん…これはどういうこと?」
病室から離れた所で泣いているテリを慰めるユキの横でジノはアヨにそう問いかけました。
A「怪我は大した事なかったんですけど…事故の影響で…記憶が…混乱してるみたいで…」
JN「記憶喪失…ってこと?」
A「失くしてるのはテリさんの存在だけで…でも、テリさんと過ごした時間は覚えてるみたいで…。カイはそれを私と過ごした時間だと勘違いしてるんです…」
テリはその言葉を聞いて絶望感に陥り、その場にしゃがみ込みました。
Y「それって…随分とあなたにしたら都合の良い話じゃない?」
ユキはアヨに敵意を剥き出しにしてテリの肩を撫でながらそう言いました。
A「そうですね。私にとったら都合の良いお話ですよね…カイは今、自分が愛して過ごしてきた人は私だと勘違いしてるんですから…」
Y「最低ね。」
A「でも、こんなに惨めで屈辱的な思いしたのも初めてよ…こんな事が起きないと私はカイから愛してもらえないんだもの……テリさん心配しないで?私、もうカイとはそういう関係に戻るつもりなんてないから…」
Y「よく言うわ。」
A 「うるさいわね!」
アヨはユキと睨み合うように言い返しました。
実はアヨはあの日…
カイと別れを告げたあとそのままホマの元を訪れていたのです。
A「ホマくん…私ねカイと終わっちゃった。」
そういうアヨにホマは何も言わず肩を抱きしめポンポンと頭を優しく撫でます。
アヨもホマのその寄り添ってくれるような優しさを知っているので余計に涙が溢れ、ホマの胸に顔を寄せました。
A「…私のことなんて誰も好きになってくれないんだよ…」
H「アヨは愛されてる事に気づいてないだけ……俺はずっと…子供時からずっと…アヨだけを見てきたよ?」
A「…ホマくん…」
H「本当は昔から気づいてたくせにアヨはズルイな…俺にこんな事言わせて…好きだよ。俺のこと男としてみてよ…」
そうホマに言われたアヨはホマの温もりを感じ、穏やかな気持ちになれる自分にようやく気づいたのです。
そして、アヨはカイの事をキッパリと忘れることにした矢先のことでした。
なので正直、カイがテリとの思い出を自分との思い出と勘違いしてる事に戸惑いしかありませんでした。
しかし、アヨがカイ自身にそれは自分との思い出ではないと言えなかったのは…
アヨの父親から余計なことは口にするなと強く釘を刺されていたからなのです。
ジノはため息混じりにアヨに問いかけました。
JN「1つ聞いていい?」
A「なに?」
JN「テリを連れ去って俺の病院に運んできた男たちに誰の指示か聞いたらジヨって言ってたんだけど…」
アヨはその言葉を聞いて顔色が変わります。
JN「やっぱり…ジヨとアヨちゃんは繋がってるんだね?」
A「…正直に話すと…繋がってました。私はカイの行動を把握する為に監視を付けてて、そこでテリさんの存在を知ったんです。そしたらたまたまジヨさんの秘書室に飾られてる写真にテリさんが写ってるのを見つけたんです…ジヨさんにこの人とお知り合いなんですか?って聞いたら…心から愛してる人だけど行方不明になって今、必死で探してるって言うから…」
JN「ジヨにテリの居場所伝えたの?」
A「はい…だけど!!ジヨさんはテリさんの居場所を知っても迎えに行くなんてしなくて…私に言えって…テリさんがカイのそばにいたら不幸になるから…ジヨさんの元に戻るよう伝えろって…そうすれば、私はカイが手に入るし僕にはテリが手に入るからって…でも私は!!」
JN「今さら言い訳するつもり?」
A 「私は…耐えられなかった…テリさんを失ってからのカイのあの目をみたら胸が引き裂かれそうで耐えられなかったの…だからテリさんをジヨさんに黙ってカイの元に返した。だから連れ去ったのには私は関わってない!!」
JN「ほんとかな?信じられないけど?」
T「私をカイの元に返して来れたのはアヨちゃんだよ…それはほんと…」
テリの弱々しい声でジノは仕方なく納得しアヨもホッとします。
JN「でも、ふたりが海外に逃げる事…ジヨに言ったのアヨだろ?ジヨが知るはずないのに。」
A「…あの人ならどんな手段を使ってでもそんな情報すぐ手に入れる…自分の手元にいたはずのテリさんがいなくなってから私をどんなに責め立てたか…。私は勝手に逃げたんじゃない?ってシラを切ったけど…あの人はテリさんを意地でも見つけ出すって人が変わったみたいに言ってたし…何がなんでも私とカイを結婚させたがってた…それは仕事上の立場としてもだけどテリさんのことが欲しい…1人の男としても…だと思うけど。」
JN「でも…どうやってジヨは知ったんだろ…」
A「たぶんGPSじゃない?私と会ってる時に何度かスマホでテリさんがちゃんと家にいるかジヨさんが確認してるところ…見たから…」
JN「あぁ…なるほど…」
A「秘書のジヨさんなら…お父様からの指示でふたりを別れさせるよう言われてるのもあるし全て辻褄は合うでしょ?でも、証拠がないからなんとも言えないけどね。だけど、1つだけ私にも分かることはある。」
Y「なんだよ…」
A 「私とカイの結婚は親もジヨさんも諦めてないって事よ…。私とカイの結婚式が前倒しになったの…私がどんなに父に話しても無駄だった…このままだと私とカイは本当に結婚する事になる。」
Y「あなたにとったら願ったり叶ったりね…」
A「……だから私はもう……!!」
「アヨ?俺から話すよ…」
そうアヨに声を掛けたのはホマでした。
つづく
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