第13話
テリはアヨが帰ったあと、苦しくて恐怖でひとりで泣いていました。
ようやく見つけた居心地の良い場所は誰かを不幸にしないと手に入れることの出来ない場所なんだと。
逃げても逃げても…ジヨという存在から追われ続け、まるで囚われの身のようなテリはガクガクと震えます。
…自分がカイのそばにいてカイが不幸になるくらいなら…
ジヨにカイのことを傷つけられるくらいなら…
自分がジヨの元へ行こう…
そうテリは考えました。
そして、この出来事を何も知らないカイはあの日、こんな思いを抱えていたテリに占い師の元へ行こうと提案するのでした。
テリはカイと占いに訪れる日を最後に…
カイの元を離れるとすでに心に決めていたのです。
K「何でその時にアヨが来たこと…言ってくれなかったんだよ…」
目の前で泣きながら当時の話をするテリを抱きしめてカイはテリの涙を拭きました。
T「だって言ったら…カイを苦しめると思って…」
テリのその言葉に自分の事を思ってテリが選んだ決断だったんだと知ったカイは、自分の情けなさと無力さでいっぱいになりました。
K「まさかジヨさんとテリが知り合いだったなんて…本当に今までジヨさんのとこにいたの?」
T「うん…いたよ…。」
カイは自分も知っているジヨとテリが知り合いである事に驚いていました。
しかし、テリの顔を見て違和感を感じ顔を覗き込みます。
K「ジヨさんと何があったの…なんでジヨさんはそんなにテリを追い回すようなこと…」
テリは微かに震え、カイは嫌な予感が頭の中を過ぎり思わず身体にグッと力が入りました。
テリはカイの問いかけに恐る恐る口を開きます。
T「孤児院からずっと一緒にいて、親友だと思ってたのは私だけだったの…ジヨは違った。私を…女として見てた。無理やり襲われそうになったり監禁されそうになって私はもうこれ以上、ジヨのそばにいちゃいけないと思ってジヨの元から逃げたの。でも…ごめんね…カイ…私もう…汚れちゃったの…カイだけの…身体じゃなくなっちゃた………」
そう言ってテリはぽろぽろと涙を流し、カイは頭が真っ白になり言葉が出てきません。
そう、ジヨはテリを親友としてではなく女として屈折した愛で愛していたのです。
ふたりがまだ親友だった頃、ジヨに愛を告白されたテリはその愛を拒みました。
それからジヨのテリに対する愛は歪み、テリはジヨの元から必死になって逃げたのです。
生まれ故郷を捨ててまで。
しかし、アヨによりカイの名前を使ってジヨに脅されたテリはどうする事も出来ず、自分の身体を犠牲にしてジヨの元で暮らしていたのです。
そうする事でカイの幸せを守れると思っていたから…
しかし、テリはどんな時も頭をよぎるのはカイばかりで…
テリはカイを想いながらジヨに抱かれる日々に耐え続けていたのです。
K「テリ…」
カイはテリを強く抱きしめジヨに抑える事の出来ない怒りが込み上げてきました。
K「テリは謝る事ないからね。怖かったね…ごめん守ってやれなくて…」
T「カイ……」
K「ここまでどうやって来たの?」
T「アヨちゃんがジヨの目を盗んでジヨの家に来て…私の顔を見るなりもう…限界だって泣いて…お願いだからカイの元に戻ってくれって言われたの。私はカイの元に戻ったりなんかしたらカイがジヨに何されるか分からないから戻らないって言ったら…アヨちゃんに腕引っ張られて車に無理やり乗せられたの…。」
K「アヨが…?」
T「…アヨちゃん…もうあんなカイの顔見てられない…お願いだからカイの元に戻ってって…ジヨの事は私がなんとかするからって…アヨちゃん泣きながら私に言って…ここに連れて来られた。」
K「そっか…じゃ、テリがここに逃げて来た事はまだジヨさんは知らないって事?」
T「知らない…カイ…アヨちゃんが私のせいでジヨに危ない目に遭わせられたら…どうしよう…」
K「テリ…落ち着いて聞いてほしい…。アヨのことは俺に任せて。ちゃんとなんとかするから。あと、俺とアヨの結婚だけど本人同士がやめるって言ってもおそらくそれは何の意味ももたないんだ…無理やり俺たちの親は俺とアヨを結婚させようとする…」
T「うん…」
K「だから…ここから逃げよ…」
T「え?」
K「一緒に逃げよ…誰も俺たちの事を知らない所に逃げよ?」
T「でもそんな事したら…カイのお父様の病院が…」
K「気づいたんだ…この先どんな試練があっても…テリを…離してはいけないって…俺…テリのためなら全て捨てられる。」
カイはテリの頬を優しく包み込み、微かに触れるだけの口付けを落としました。
すぐに離れてしまった唇が恋しいのかテリは思わず自分の頬にあるカイの手を包み込みます。
T「私はまた…今世でも過ちを犯してしまったね…」
テリはそう呟き…
カイの唇に自ら深い口付けを落としました。
つづく
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