第10話


テリが去ったその日の夜



テリの存在を知っているジノとユキ、そしてホマとカイの4人でカイの家に集まりました。



H「どこ行っちゃったんだろね…テリちゃん…」


JN「だから、本気になるなっていったのに。」


Y「でもおかしくない?なんで急にいなくなるの?」



三人の言葉をカイは酒を浴びるように飲みながらただ、黙って聞いていました。



Y「カイなんか心当たりないの?変なことしたとか…」



ユキのその言葉でグラスを持っていたカイの手が止まります。



K「……テリが出て行く数時間前…俺……テリのこと抱いた。」



カイの言葉に三人は息を呑み、大きなため息を落とします。



H「それって…合意だよね?」


K「俺は…そのつもりでしたけど…」


Y「カイが下手だったから嫌になって出て行ったんじゃない?」


H「ユキひどw」



ホマとユキはカイを揶揄いケラケラと笑いますがジノは難しい顔のままカイを見つめます。



K「……人ごとだと思って…」


JN「どっちにしてもお前はアヨと結婚しなきゃいけない立場の人間なんだから、これで良かったんだよ。お前だって初めからそのつもりだったんだろ?テリのことは全部夢だったと思って忘れろ。」



ジノの現実的な言葉にカイの気は更に病み、肩に重く結婚の二文字がのしかかりました。



K「結婚なんて…もうどうでもいいけど…」



カイがそう投げやりになって言った言葉にホマは一瞬、眉間にシワを作ります。



H「どうでもいいからって…アヨのこと傷つけるなよ。あいつは悪くないんだからな。」



ホマのその忠告は虚しく…



カイの頭の中をサッと通りすぎていくのでした。




それから数週間の月日は流れ



テリを失ったカイは心を閉ざしていましたが、周りからの圧力によりアヨとの結婚準備が着々と進められていました。



カイはテリが消えたあの日から心のカケラを1つ失ったように笑うこともなく悲しむこともなくただ、無表情で淡々と過ごしています。



カイのそんな様子が気に入らないアヨはカイにわざとらしい笑顔を向けながら言いました。



A「カイ?ウエディングドレスこっちとこっちどっちがいいかな?」



結婚式場でウエディングドレスを選んでいる2人はプランナーから見ればお似合いな2人なのかもしれません。



しかし、1ミリ足りとも笑うことのない無表情のカイにプランナーも不思議に思います。



K「どっちでもいいんじゃない?好きな方にすれば?」


A 「カイが好きな方にしたいの!」


K「そういうの興味ないから。そういうイチャイチャがしたいなら他の人にしてもらいな。」



カイの言葉にアヨは憤りを剥き出しにし、プランナーはただ驚くばかりで思わず聞こえなかったフリをします。



A「そんな態度私に取って良いと思ってんの?」



アヨは自分と結婚しなければカイの父親の病院が潰れる事を知っているので、カイに対して強気に出ます。



K「毎回毎回、それしか言えねぇのかよ。」



カイはソファにドカッと座り苛立ちを露わにしました。



すると、その空気を変えるように後ろから陽気な声が聞こえてきます。



「どんな感じかと思って心配してきたらこれかよ〜。ほんと仲悪いな〜もう〜!!」



そこには笑顔で立つホマがいて、カイは思わず驚きます。



K「ホマくん何やってんの!?」


H「ん?幼なじみ2人がどんなウエディングドレスとタキシード選ぶか見にきたんだ。アヨ決まった〜?」


A 「カイは私のウエディングドレス姿なんて興味ないんだって。」


H「相変わらずカイは酷い男だね〜?こんな可愛いアヨを悲しませて〜。」



ホマはそう言ってアヨの頭を撫でてやり、アヨがご機嫌になるように一緒にドレスを選んでやりました。



A「ホマくんが婚約者だったら良かったのに…」


H「なに言ってんのカイのこと大好きなアヨが。」


K「じゃ、俺との結婚白紙にしてホマくんと結婚するっておじさんに言えよ。」


A「……ほんと最低……」


H「2人とも落ち着けって。アヨもそんな顔しないの。俺と一緒にドレス選ぼう?」


A「うん…」



アヨはそんなホマのおかげで機嫌を取り戻しドレスを決めると、運転手と一緒に帰って行きました。



つづく

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