第9話
テリは占い師の元から帰ってきてから心ここに在らずでぼんやりとしています。
カイはそんなテリを見て不安になりそっとテリの肩を抱き寄せます。
K「ごめんね…俺が行こうなんて誘ったから辛い話…聞いちゃったね…」
カイはテリの悲しくも苦しい夢が前世での記憶だと自分のせいで知らせてしまったようで心が痛みます。
T「そんな事ないよ。前世の話が本当かどうかは私には分からないけど…聞けてよかった。」
K「ほんと?」
T「うん…今カイと一緒にいれて私はすんごい幸せだし…本当に…ありがとう…」
テリは微笑みながらそう言ってカイを抱きしめ顔をあげると、そのままカイをソファに押し倒します。
カイもはじめはそんなテリに戸惑い驚きますが、テリを受け入れテリの身体にそっと触れます。
テリはカイに跨り、愛おしそうに何度もカイの頬を撫で目に焼き付けるようにカイを見つめました。
カイも手を伸ばし自身を見下げるテリの頬に触れます。
K「前世では一緒にいらなかったかもしれないけど…今世では…離れないで…一緒にいよう…テリだって俺を見つけてくれたんだろ……?」
T「………カイ……大好き…。」
テリはカイの言葉を聞いて苦しそうに顔を歪めると、愛しいカイの名を呼びひと筋の涙を流しました。
そして、その夜…
ふたりは初めて身体を重ね合いました。
初めてだと話し震えるテリをカイは優しく抱きしめ、ゆっくりとテリの負担がないよう呼吸に合わせながら優しくじっくりと愛していきます。
カイはテリの腕にある二つのホクロにそっと口付け…
テリはカイにしがみ付き何度も何度もカイの名を呼び、涙を流しながは愛するカイに抱かれました。
テリと愛し合い、心が満たされたカイは堕ちるように眠りにつくと、しばらくしてふと微かな違和感を感じ目覚めました。
ベッドから身体を起こし、周りを見渡すと横で眠っていたはずのテリの姿がありません。
カイは慌てて起き上がり服を着て部屋中、テリを探して回ります。
しかし、どこにもテリの姿はなくカイは恐る恐る玄関を見ると、そこにあるはずのテリの靴がありません。
焦るカイはジャケットを羽織り、スマホと鍵だけを持ち外へと飛び出しました。
外はまだ、日が昇り始めた頃…
空はピンクに染まりだし鳥たちが目覚め始めます。
カイは1人静まり返った街の中、走りだしテリを探します。
車や人すら通らない街…
まるでそこはカイにとってひとりぼっちの世界に迷い込んだようでした。
スマホでテリに電話をしてみても電源が入っておらず繋がりません。
なぜかカイは嫌な予感ばかりしていました。
いつかこんな日が来るかもしれない…
そう心のどこかでずっと不安に思いながらいたからです。
どうかそれが現実になりませんように…
何事もなかったかのような顔してテリが笑顔で戻ってきますように…
何度も何度もそう自分に言い聞かせテリを探しますがテリはどこにもいません。
スマホのディスプレイを見てみると時計はAM7:00となっていました。
カイがテリを探し始めて2時間も過ぎていたのです。
すると、カイのスマホに1通のメールが届きました。
それはテリからのメールでカイは慌ててそのメールを開きます。
カイへ
今まで沢山お世話になりました。
本当にありがとうございました。
私はもう行くね。
私たちせっかく出会えたのに
今世でも一緒になれないみたい。
来世こそは…一緒になりたいな…
私の愛する人…カイ
どうかあなたが幸せでありますように。
テリ
カイはそのメールを見て全てを悟り…
絶望に突き落とされました。
もうあの人は自分の元に戻ってこない…
彼女はまるで幻のよう消えていった…
もしかしたらあれは自分が描いていた…
妄想なのかもしれない…と。
しかし、昨日の夜に交わした温もりは鮮明に身体が覚えていて微かにカイの身体が震えます。
あの時…
テリがカイの身体を求めてきたのはテリの中で別れる覚悟を心に決めていたからなのかもしれない…
カイは今…
息を詰まらせながらそう思い返しテリの行動を全て理解するのです。
俺の幸せはテリだよ
キミのいない人生なんて何の価値もない。
全てを捨ててもいい
それほど愛したのはキミだけだ。
お願い…戻ってきて…
カイは太陽を見つめテリの笑顔を思い出しながら涙をひと筋こぼしました。
つづく
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