第8話


カイはホマと話し終えると病院を出て、街を歩きながらテリの待つマンションに帰ろうとしていました。



その時、たまたま通りかかった路地に小さな張り紙がしてありました。



そこには「前世占い」そう書かれてありました。



カイはなぜかその言葉に惹かれ、そのチラシをスマホで撮影しテリの待つマンションに帰ったのです。



マンションの部屋に帰るとテリが少し暗い顔をしてカイをお迎えしました。



T「おかえり…」


K「ただいま…?テリ…なんかあった?」


T「え!?な、ないない!!カイがいなくて寂しかっただけだよ!」



テリはそう言っていつもの笑顔に戻り、ギュッとカイの腕にしがみ付いて一緒にリビングに入ります。



ふたりがソファに座るとテリはカイの腕を自分の肩に回しカイの身体に抱きつきました。



K「テリほんとどうしたの?俺がいなくてそんな寂しかった?」



カイが笑いながらそう問いかけるとテリは引きつった笑顔をカイに見せ言いました。



T「カイ…大好き。」



テリのその言葉が嬉しいカイは舞い上がる気持ちを抑え、テリと同じ気持ちだという事を素直に言葉で伝えます。



K「俺も好きだよ。」


T「んふふふ…幸せ……」



テリは幸せだと口ではそう言っているのに何故か、カイの目には悲しそうに見えカイは戸惑います。



K「テリ…なんかあっただろ?」


T「ううん。何でもないよ。大好きだな〜って…出逢えて良かったな〜って思っただけ!!」



テリはそう言って笑うとカイの唇にチュウと可愛らしいキスを落としました。



K「ほんとに?それだけ?」


T「ほんとだってば!」


K「そっか。」



カイはそう言ってテリの肩に手を回して抱きしめ直します。



K「テリ、今度の休みさ?一緒にここ行ってみない?」



そう言って見せたのはさっきカイが路地で撮った前世占いの写真です。



T「前世…占い?」


K「うん。ずっと部屋に閉じこもりっきりだったしさ?リハビリがてら一緒に行こう?」


T「うん…行く。」


そうして、カイとテリは一緒に前世占いへ行く約束をしました。





数日後



前世占いに向かった二人は今



占い師の鋭い視線におどおどとして二人並んで肩を寄せています。



占い師「最近、変な夢を見てるでしょ?同じ夢を何度も…」



占い師がそう問いかけるとテリは少し目を見開きその占い師に食いつきます。



T「な…なんで知ってるんですか…?」


占い師「見えてるんですよ…全て見えてる…。愛する人ができてその人と激しく愛し合うのに…ふたりの間に邪魔が入る夢…違いますか?」



占い師の静かな声にテリの心は小刻みに震えだしとても恐ろしい気持ちになったのです。



T「そ…そうです…」



その夢の内容を今まで何も知らなかったカイはその話を聞いて驚きます。



占い師「苦しくて悲しくて切なくて…来世では一緒になろうと約束するのに…その愛する人は目の前で殺されてしまい…その悲しみに耐えられず自ら自害…する夢…」



テリは深いシワを眉間に作り、それを聞いたカイは恐ろしくて思わずテリの手を握るとテリはその手を優しく握り返しました。



T「そうです…最近…毎日のようにその夢をみます…怖くて…不安で…」



すると、占い師は深く息を吸い込みフーっとまた、深く息を吐きゆっくりと話し始めました。



占い師「それはテリさんあなたの前世の記憶です。」


T「前世…の記憶…?」


占い師「ごく稀に前世の記憶を持ったまま生まれ変わる人がいてね…あなたはカイさんと出会った事でその記憶が呼び起こされたんですよ。」



占い師がそういうとテリとカイはお互いに目と目を合わせてまた、占い師を見ました。



占い師「前世で自害をしたあなたは天からの罰としてまた、同じ過ちを繰り返さないように今世では彼と違う街で生まれ変わった。…運命の相手である彼の生まれ変わりと出会わないように…惹かれ合わないように…結ばれないように…。なのにあなたは…またその彼と出会い…惹かれ合い…愛してしまったのですね…あなたの生まれはこの街ではないでしょ?」


T「はい…生まれは…ドゥベカです。」


ドゥベカといえばこの街の真裏にある国で、テリの生まれを初めて知ったカイはゴクリと生唾を飲み込み、テリと握り合わせている手に汗を滲ませていました。



K「その…前世での運命の相手の生まれ変わりって…僕なんでしょうか…」


占い師「運命を見つけたんですよ…あなた達ふたりは…」


T「じゃ…私たちは…本当は出会ってはいけない運命だった…って事ですか…」



前世の因縁を聞いて不安に陥るテリは震えた声でそう問いかけますが、カイはもう、占い師のその言葉を聞いた時には密かに心を決めていました。



占い師「どんなに出会わないように神がそう仕向けてもふたりは出会う事ができた。お互いに引き寄せ合い、無意識に探して求めてしまう…それが運命なのではないですか?自分たちを信じるのです…自分たちの愛と運命を…」


T「愛と運命を……信じる…?」


K「俺は…前世のような過ちは犯しません…」



カイがそういうと占い師はとても優しく微笑み握り合った2人の手を優しく包み込みました。



占い師「あなた達の身近にいる2人の人間に気をつけなさい。その人たちのせいでテリさん…あなたの命もカイさんの命も危うくなる可能性があります…分かりましたね?」



テリはそれを聞いて思わず身体がピクッと反応し苦しそうに顔を歪めます。



K「…心当たりあるの?」


T「大丈夫…大丈夫だから…」


占い師「どんなに変えようとしても変えられなかったあなた達のように…その人間達が与える運命を変えるのはとても困難な事です…今世で結ばれたければ強くなりなさい…もっと強く…」



そうしてカイはギュッとテリの手を握るようにして占い師の元を後にしました。



つづく

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