第6話
次の日
カイは言っていた通りテリに新しいバスローブや洋服、下着やメイク道具などテリにとって必要な物全てを買い揃えてあげました。
それを見たテリは大喜びするのですが、同時に申し訳なく感じ、何故カイがそこまで自分に良くしてくれるのか不思議になりました。
その夜から今度はテリの方がカイを意識してしまいドキドキとして落ち着きません。
新しいバスローブはテリの体のサイズ似合っていて、しっかりと胸元も隠れているのにテリはカイに見えてしまっているのではないかと内心、気が気じゃなくカイの視線を意識するようになりました。
カイもテリの恥じらう姿がまた、愛おしく感じ胸の鼓動を早めます。
テリのドキドキは日増しに大きくなっていき、自身に食事を作ってくれるカイの姿や、自身の身の回りの世話を焼いてくれるカイに心が引かれていくと同時に、この人の為に自分が何か出来ることはないかと考えるようになりました。
しかし、テリはそんな感情と共に不安も大きくなっていきました。
この怪我が治ればカイの家から出て行かないといけなくなり、カイのそばにいれなくなるかもしれないと思うと胸が痛みテリは眠れぬ夜を過ごします。
同じく、カイも同じベッドで眠れぬ夜を過ごしてました。
明日は婚約者家族と両親との食事会が開かれるのです。
物心ついたときから彼女との結婚はカイの知らない間に決まってました。
特になんの関心もなかったカイはそれを承諾し、医学部卒業と同時に結婚する予定となっているのです。
しかし、今のカイは違います。
カイの心のなかにはテリがいて、次第にその存在が大きくなり今では手放す事が恐ろしくてたまりません。
カイは寝返りを打ちテリの背中を見つめます。
K「好きになっちゃったよ…テリのこと…」
そうテリの背中につぶやいたカイはそっと瞳を閉じ眠りに落ちました。
テリは突然「好きになっちゃった…」そう呟かれたカイの言葉に驚き胸を締め付けられます。
声を殺し涙を流すテリ…いつの間にかカイを想い涙するほどにまでにテリはカイへ想いを募らせていたのです。
テリはゆっくりと寝返りを打ちスヤスヤと眠るカイの手を握って呟きます。
T「もう…離れたくないよ…」
そして、テリも涙で濡れたまつ毛を輝かせながら眠りにつくのでした。
次の日
カイは実家に向かうためテリのご飯の準備をしながらテリに伝えました。
K「俺、今日は帰り遅くなるからご飯はこれね。もう、トイレは1人で行けるでしょ?お風呂は明日の朝、俺がいるときに入りな?転んだら大変だし。分かった?」
T「お父さんみたい…」
K「うるさい。」
T「うそうそ!ごめんなさい…早く帰って来てね?」
K「うん。でも待たなくていいからね?」
T「うん…」
そうして、カイはテリの頭をポンポンとなでるとテリを家に置いて両家の食事会に出席するため実家へと向かうのです。
久しぶりに訪れた大きなお屋敷の門をくぐるとメイドと執事達が集まりカイをお出迎えします。
カイは軽く手をあげて中へ入っていき婚約者のご両親に頭を下げます。
K「遅くなりました。」
テーブルにつくと少し時間におくれた事が不満だったのかカイの父親が難しい顔をして座っていました。
そんな中、淡々と過ぎていく時間。
楽しくもなく話しが弾むわけでもない…カイにとって無駄な時間。
カイの頭の中にはテリとの事が思い浮かびます。
テリと過ごす毎日はカイにとって振り回されて大変なことも多いですが、新鮮で毎日が笑いに溢れ温かいものでなのです。
父「結婚式の日取りだが…」
そんなカイの想いをかき消すかのようにカイの父親は現実的な話を切り出しました。
K「あの…そのお話ですが…アヨさんにもちゃんと一度お話ししないといけないとは思っていたのですが…この結婚は…な…」
A「私の誕生日に結婚式するっておっしゃってくれてましたもんね?カイさん?」
父「そうだったのか。話を進めるが良い…楽しみにしてるぞ。」
それはテリと出会う前、カイは結婚の話は婚約者であるアヨに全てを任せると言った結果、アヨの誕生日に結婚式をするという話になっていたのです。
アヨにとってみればカイは幼い頃からの初恋の人でもあり、アヨは何が何でもカイと結婚したくてたまりません。
しかし、カイの気持ちが自分にない事にも気付いています。
そのため、アヨは心を傷めながらもカイに近づく人間がいるかもしれないと思い、以前からカイに監視の目をつけていました。
そして、その監視によりアヨはテリの存在に気付いていたのですが、2人がどういう関係なのかまではアヨにもまだ、分からないままでした。
カイが自分と結婚さえしてくれればいいそう思う反面…
テリが来てからカイが変わったことに気づいたアヨは内心…焦りだします。
カイの父親はカイとアヨが結婚する際にアヨの父親から多大な金額の寄付をカイの父親が経営する病院に支援する約束を取り付けています。
カイもその事を知っており結婚を拒めばこの話はなくなり、カイの父親の病院は大きな痛手を負い経営そのものが困難に陥ることも理解していました。
そのためカイの口から簡単にアヨとの結婚をやめる…と強気に言う事がなかなか出来なかったのです。
その言葉をいうには…カイにとってとても大きな覚悟が必要となるのでした。
つづく
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