第4話


数時間後



JN「で?この子は知り合いなの?お前が珍しいじゃん…他人にここまで肩入れするとは…」



麻酔で眠るテリの横でジノは点滴の速度を確認しながらそうカイに問いかけると、いつの間にかカイはテリを愛おしそうな目で見つめているのです。



K「全然知らない人なんだ…たまたま街で自転車でぶつかってきて…ぶつかられた俺より大怪我して…顔見た瞬間…なぜか放っておけなかった。」



そういうカイの手はテリの手を固く握っていて、そんな様子にジノも内心驚いていました。



しかし、ジノは他人に興味を示すことのなかったカイが誰かに興味を持ったことが嬉しくも感じたのです。



JN「遊びなら何も言わないけど本気ならほどほどにしないとね…自分の首…自分で締めるだけになるんだよ。」



カイはジノの言いたい事が何なのかすぐに分かり、カイは瞳に影を落とします。



そう…実はカイにはもう…



親が決めた婚約者が既にいるのです。



K「こんなにも自分の生まれを呪ったのは…」


JN「はじめてではないよな。」


K「そうだった。」



カイとジノが苦笑いを交わしているとテリが苦しそうに顔を歪めて目を覚ました。


T「うぅ…痛い…」


JN「そりゃ切って骨を触ったからね。まぁ、目も覚ましたし顔色も悪くないし大丈夫そうだね。」



ジノはそう言って白衣を脱ぎ始め、そんな様子に気づいたカイは不思議そうにそれを眺めて言いました。



K「いや、入院しなきゃでしょ?ジノ兄さん帰るつもり?」


JN「お前がこの子の家に通って経過観察してやれば大丈夫。消毒と抜糸くらいお前も出来んだろ?」


K「それでも医者かよ!!」


T「私…家ないんだけど?」



カイはテリのその言葉で思い出します。



そうえば来るときに背中の上で野宿生活をしていると語っていたことに…



JN「は?家ないの?どういう事!?」


T「え?だから野じゅ……」


K「兄さん大丈夫!!俺に任せて!!あとは大丈夫!ありがとう…本当に助かりました!!ここの備品少し借りますが必ずお返ししますので。彼女を家に送り届けるタクシーがくるまであと、もう少しお時間をください。」



カイはテリがどんな生活を送っている人間なのかジノにはバレてはいけないような気がして、慌ててテリの言葉をかき消しジノに隠しました。



テリはそんなジノの様子をポカーンと口を開けて見ていて、ジノは納得したように薬を出していきます。



JN「しょうがないな。これ痛み止めと抗生物質ね。家に帰ってもベッドでしばらくは大人しく過ごして家族に面倒みてもらいなよ。」



T「私、家族はいな…」


K「田舎にかえってるんだけど丁度、今日戻ってくるんだよね!?病院の戸締りは俺がやっておくから!ほら、ユキちゃんのご機嫌取ってきな!」



カイはテリの言葉に重ねながらそうジノに伝えジノは嬉しそうな顔に戻ります。



JN「いいの?じゃ、お先!」



ジノは不機嫌なままのユキを連れて街へ繰り出しました。




カイは扉を閉めほっと胸を撫で下ろし椅子に腰を下ろしました。



K「あぁ…心臓止まるかと思った…」


T「ねぇ、私家ないじゃん?公園でもバイ菌ついたりしない?」



テリは真っ直ぐな瞳で少し不安そうに足を見てカイにそう言いました。



カイはそんなテリが放っておけない気持ちともどかしい気持ちが入り混じり、自分でも自分の心の変化に気付いてしまうほど無意識にテリに惹かれ始めます。



K「俺の家に来なよ。」


T「え…でも…」


K「怪我が治るまで俺の家で暮らしな…俺が面倒見てあげるから…」



その言葉にテリは驚き、ギュッと胸が締め付けられドキドキと心臓が早く動き出す事に気づくのです。



そして、テリが少し顔を赤らめているのに気づいたカイもまた、心臓の速度を早め顔が赤く染まっているのがバレないように下を向きました。



すると、ふとテリの細い腕に目がいきカイはそこに手が伸びます。



テリは驚きビクッと身体を震わせるとカイとテリはバチっと目が合いました。



なんとも言えない気まずい沈黙が流れそれを誤魔化すようにカイが口を開きました。



K「いや…なんか俺と似たようなホクロだなと思って…この腕にある二つ並んだホクロが…」


T「あぁ…同じようなホクロあるの?」


K「うん…太腿に似たようなホクロが俺にもある。ほら…」



カイはダメージジーンズの隙間から見えるホクロをテリに見せました。



T「えへへ…お揃いだね?」



テリの無邪気に笑うその顔がカイの胸をトキメかせドキドキと心臓を早めたと同時に…



カイの真っ直ぐな瞳にテリは吸い込まれそうになりました。



そして、2人はタクシーに乗ってカイの家に向かうことになったのです。



つづく

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