第3話


20XX年現在



「ちょっと危ない!!危ないってーーーー!!どいてーーーーーーー!!」



騒がしい声が街中に響き渡り、辺りの人々がその騒がしい声に注目します。



「危ないってばーーー!!」



また、そんな声が響いたのと同時に


ガチャン!!


という大きな音も響き渡りました。



*「いてぇ…危ねぇだろ!!」


「だから!どいでって言ったのに!!いた……」



歩いていた彼には怪我はなかったものの自転車に乗っていた彼女は…



「ひぇ!!血…血が出てんだけど!!!!痛ーーーい!!痛すぎるーーー(><)ねぇ!見て!!血!!やばいーーーどうしよう(><)!!」



突っ込んできたのは自分のくせにまるで被害者のような叫び声を上げるせいで、周りからみれば完全に被害者と加害者は逆転して見えます。



*「ちょ……とりあえず…立てる?」



被害者のはずの彼はタジタジになり怪我をしている彼女に手を差し出します。



「ムリぃ(T . T)めちゃくちゃ痛いーーー(T . T)死んじゃう(T . T)」


*「はぁ…もう。ほら…すぐそこに知り合いの病院あるから連れてってやるよ。」



彼はそう言ってしゃがみ込み怪我した彼女に背中を見せます。



「やったーーーラッキーーーー!!」



そして怪我をした彼女はなんの遠慮もなく彼の背中に飛び乗りました。



その瞬間…



2人の間にビリリと何か電流のようなモノが走りました。



「うぇ!静電気キタ!」


*「ちょ…電気女かよ…」



彼女は人の背中の上だというのにそんな事お構いなしで、怪我した足をばたつかせて彼の背中の上で大騒ぎします。



しかし、背負っている彼は彼女が背中のうえでどんなに暴れても平気な顔で歩き進めていました。



「いやぁさ〜ほんとごめんね?だってさ!急に自転車のブレーキ壊れるんだもん!焦るじゃん!?だから、どいてどいてーって叫んだのにキミはどかないしさ。あぁー!今日のバイト代で家の契約出来るはずだったのにこんな怪我したらバイト行けないし〜また、家の契約出来ないや〜。またしばらくは野宿生活か〜野宿って知ってる?ってか野宿したことある?もうね?めちゃくちゃ最悪なんだよ?虫に刺されるし変な人に絡まれるしゆっくり寝てらんないの!そんな生活がまたしばらく続くのか〜あぁ〜もう!!やだぁーーー!!」



彼女は1人でペラペラと喋り続け、怪我して血がダラダラと流れる足をバタバタと動かします。



*「怪我してる足…そんな動かしたら出血多量で…死ぬよ?」



おんぶしている彼は顔が見えない事をイイコトにイタズラな顔をしてそう彼女に言った途端…



背中の上の彼女はピタッと大人しくなったのです。



「え…私…死ぬの?死ぬの…やだ…」



おんぶしている彼はそんな彼女が可愛くてついつい頬がゆるんでしまいます。



*「なら大人しくしてようね?で、名前は?」


「あ!私?私の名前はテリ!!25歳!!」


*「まさかの歳上かよ。俺はカイ23歳だよ。」


T「じゃ私のがお姉さん!!」


K「年齢だけね?精神年齢は俺の方が上。 」


T「失礼だな!」


そんなやり取りのあともテリはカイの背中の上であーでもないこーでもないと色々な話をし、カイはそれにただ相づちを打つだけなのでした。




病院に着き、中に入ると午後の診察が終わり待合室には誰もいません。



カイはテリを待合室のソファに座らせると遠慮もなく奥へと入っていきます。



K「ジノ兄さん?」



微かな物音が聞こえその扉を開けるとそこには…



K「あ…お取り込み中失礼しました…」



カイがゆっくりと扉を閉めるとすぐにその扉は開き、中で愛を囁き合っていたこの病院の院長であるジノとこの病院の看護師ユキが出てきました。



このジノというのはカイの従兄弟になるのですが、兄弟のいないカイにとってジノは実の兄のような存在なのです。



JN「もう、今日は終わったんだけどなんか用?」



ジノは乱れたシャツを直しながらカイに問いかけ、ユキはチラッとカイを見て不満そうな顔をします。



K「ちょっと怪我人がいて……診察室貸してくれたら俺がやるけど……」


JN「まだ、医学部も卒業できてないくせに生意気だな〜早く連れておいで。」



ジノは少しの嫌味を言いながら診察室に入り、準備をするため看護師のユキも仕方なさそうな顔をしてジノの横でガーゼとテープの用意をします。



カイはテリの元に戻りテリを背負って診察室へと入っていきました。



T「よろしくお願いします。」



そう言ってベッドに寝かされたテリの足をみたジノは言いました。



JN「いや、これどう見ても折れてるだろ。」


K「やっぱり?そんな気はした。」


Y「手術の準備しますね。」



ユキは顔色を変えることなく淡々と作業を進めます。



T「え!!なになに!?手術ってなに!!やだ!私、死ぬの!?」


JN「骨折だからな…死にはせん。でも、複雑骨折だから手術はしなきゃだね〜。ご愁傷様。」


T「え!待って待って待って!!ムリムリムリ!!私そんな金ないもん!!手術しても払う金なんてこれしかないもん!!」



大騒ぎするテリがそう言って出したのはポケットから出てきた1000円札が一枚だけ…



それをみたジノは大きなため息をつきます。



JN「お大事に。ユキ〜手術しなくて良くなったから準備しなくていいよ〜」



ジノは基本、金にならない患者の治療はしない主義。



テリ本人も治療を望んでいないのならば尚更、なにも言わず引き止める事すらせずにテリに帰るよう仕向けます。



K「それでも医者かよ…」



それに納得しないのがカイです。



頑固でこうと思ったら絶対に折れることなんてない性格。



しかし、手術となればこればっかりはカイの手には負えず、ジノになんとかしてもらわないといけないのです。



JN「金がないなら手術はできない。」


K「俺が払うよ。」


JN「その金はお前のじゃなくて叔父さんの金だろ?」 



そう言われてカイは下唇を噛み微かに血が滲みます…



しかしそれは全て事実なのでカイには言い返す言葉が見つかりません。



T「カイ…ほんと大丈夫だよ…こんな怪我ほっといたら治るから…」


K「そんなわけないだろ!?放っておけばここから菌が入って感染症を引き起こし下手したら死ぬんだぞ!?」



カイのあまりの迫力に怯えたテリの目には涙が溢れ微かに震え始めます…



そんなテリに気づいたカイはハッと我に帰りジノに心から頼むのでした。



K「ごめん…ジノ兄さん頼むよ…一生のお願い…」


JN「……はぁもう…お前の一生は何回あんだよ……」



そうしてテリはジノの手により手術を受けることになりました。


つづく

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