第2話スタートダッシュ
君美の勢いに気圧されて思わず席を立ち上がると僕らはカフェの外に出る。
「私の家に行きましょう♡電車で一本ですからすぐですよ♡」
君美は必要以上ににこやかな微笑みを浮かべていて若干の危機感を覚えたが悪い気はしない。
美女の家に招待されるのはいくつになっても嬉しいものである。
「流さんはいくつですか?私は23歳です♡」
「25歳です。僕のほうが歳上なんですね」
「そうみたいですね♡頼りになるお兄さんって感じのイメージだったので想像通りです♡」
君美は嬉しそうな表情を浮かべると僕の腕を引いて駅を目指した。
カフェから歩いて数分で駅まで到着すると電車に乗り込んで彼女の家の最寄駅で降車する。
「もうすぐですよ♡楽しみです♡」
少しだけ息を荒くさせている彼女が妖しくも可愛らしくも映り少しだけ微笑ましかった。
駅から数分歩いた場所にあるマンションの中に入るとエレベーターに乗って彼女の部屋を目指した。
彼女は部屋の鍵を開けると僕を自宅に招いた。
「どうぞ♡お邪魔してください♡」
「お邪魔します…」
頭を下げておずおずと中に入ると想像以上にきれいな室内に驚く。
リビングに通されると君美は冷蔵庫からお茶をコップに注いで持ってくる。
「薬なんて盛ってないですから安心して飲んでくださいね♡」
「そう言われると逆に心配になってきますね…」
「あら…逆効果でしたか…でも本当に入れてませんよ?何なら毒味しましょうか?」
君美はそう言うと僕に差し出されたコップに口をつける。
一口飲むと一度微笑んでコップをこちらに差し出してくる。
「何も入っていませんよ♡」
それに頷くとコップを受け取り君美に倣って僕も一口中身を飲み込む。
「合法的に間接キスしてしまいました♡」
君美は嬉しそうに微笑むと若干照れくさそうな表情を浮かべていた。
「案外子供っぽいこと言うんですね…」
「そうですね…今まで恋愛してこなかったので憧れがあるんですよ」
「何で恋愛してこなかったんですか?君美さんなら引く手数多だったでしょ?」
「キミちゃんって呼んでください♡」
「………キミちゃん」
「ありがとうございます♡理想が高すぎたんですよ…それなので今まで恋人の一人も出来ませんでした」
それに頷くと君美の美貌からしても理想が高くなっても当然だと納得する。
「僕はお眼鏡にかなったと?」
「はい♡心の底から優しくて見返りを求めずに他人のために動ける人だと思いました」
「駅で女性を助けたのを見ただけですよね…?」
「はい♡それだけで十分伝わりましたよ♡」
「そうですか…それなら光栄です」
君美に差し出されたお茶を飲み干した所で彼女は唐突に口を開く。
「さて…それでは部屋に行きましょうか♡」
「え…早くないですか…?」
「良いじゃないですか♡どうせそのうちそういう関係になるんですから♡」
「でもまだ何も知りませんし…」
「これから知っていけば良いんですよ♡さぁ行きましょう♡」
君美は僕の腕を引くとそのまま自室へと連れ込む。
「さぁ早く脱いでください♡」
彼女は僕をベッドに座らせるとそのまま行為を始める気満々の目をしていた。
勢いに負けて服を脱いでいくと彼女も同じ様に服を脱いでいた。
「電気消しますね♡」
君美はそう言うとリモコンで電気を消して同じ様にベッドに腰掛けた。
彼女の肌が僕に触れてその反応で僕は気付く。
「無理してますよね?初めてで怖いんじゃないですか?」
「そんなことは…」
「でも震えていますよ?急いで関係を進めなくても僕は逃げたりしませんから慌てないで大丈夫ですよ」
「………ホント?」
「大丈夫です。僕だってキミちゃん程の美女を逃したくないですし」
「わかった…じゃあ今日はこのまま抱き合って眠るぐらいにしても良い…?」
「大丈夫ですよ」
そう答えると僕らは上半身裸の状態で布団の中に潜り込む。
そのまま抱き合ってしばらく眠りにつくのであった。
正直、お預けを食らって生殺しの状態だったが君美が怖がっていたので少しずつ慣れていってもらおうと思った。
それに正直な話をすると僕も少しは怖かった。
初対面の女性と出会って数時間で肉体関係に陥るのは少しだけ抵抗があったのだ。
恋人になるのであればもっとお互いを知ってから。
そんな言い訳を自分にすると僕の横で静かに眠る君美の頭を軽く撫でる。
彼女が目覚めたら今後について話し合おうと思うのであった。
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