第40話

ミラサイド


おデコに冷たさを感じて重いまぶたを開けるとそこには悲しそうな顔したイチがいた。



I「ねぇさん…熱出てきてる。病院行った方がいいよ?」


*「うん…ごめん…イチにまで迷惑かけて…ジュイは?話の途中で私…意識失っちゃって…。」


I「ねぇさん…ジュイはやめときな…ねぇさんが傷つくだけだよ。」



思いもよらないイチの言葉にまた、涙が溢れそうになるのをグッと堪えた。



*「なんで…そんな事言うの……?」


I「ねぇさんの泣いてる顔…もう見たくないからだよ?」


*「ねぇ…知ってる?」


I「ん?」


*「女が泣くのはね…それだけその人を愛してるからだよ……。」


I「ねぇさん…」


*「でも…イチの言うとりやめといた方がいいね…私は女としてジュイのそばにいたらきっとジュイをダメにしてしまう……私が傷つくんじゃなくて…私がジュイをボロボロに傷つけてしまう…。」



ゆっくりと痛む脇腹を押さえながら私は起き上がった。



*「病院行ってくる。ごめんね心配かけて…」



私は下を向いたままのイチを置いて部屋を出た。


私は脇腹の激痛に耐えながら自分の鞄を探して事務所の中を彷徨う。


すると、会議室でトウジと事務所の幹部達が話してるのが見えて、私は咄嗟に身を隠し聞き耳を立てた。



T「ミラさんとジュイのあの動画はリノンの仕業です…」


「ミラは今どこで何してるんだ!」


T「実は男に襲われて怪我をしてます。この公園での写真は男に襲われたその直後の写真です。リノンはジュイとミラさんの動画を使って俺を脅してきました。だから、この動画を持ってるのはリノンだけ…そして、この写真も同じアカウントから流出してる…おかしいと思いませんか?」


「証拠は…あるのか?」


T「この男に関する証拠はありませんが…俺を脅した証拠ならあります。ボイスレコーダーで撮ってあるので……」



そう言ってトウジが流したボイスレコーダーを聞いて…私は息を飲んだ。



📱📲


「トウジが私の言う通りにしてくれたら動画消してあげてもいいわ…。脅さないと私と付き合ってくれないでしょ?あんな女なんか消えたらいいのに…今日だってちょっとヤケドしたぐらいで大袈裟な…みんなに心配されて本当ウザい。あの人が消えてくれるなら私はなんだってする。」


T「それが…お前の本心なんだな…」


リ「えぇそうよ。これが私の本心…私は私が幸せだったら誰が不幸になっても構わないの。」


T「そっか…好きにしろ。俺はもう、付き合いきれねぇわ…。」


リ「!?あんたがずっと片思いしてるミラがどうなってもいいの!?」


T「あぁ…いいよ。俺にはこれがあるからな。」



私は微かに聞こえてきたボイスレコーダーの内容をすぐには理解ができなかった。


トウジが……私に片想い…?


トウジは私とジュイのために…自分を犠牲にしようとした?


その事実に驚いたのと同時にまた、脇腹に激痛が走りまた気が遠くなるのを歯を食いしばり堪える。


そして、私が今までトウジにしてきた事や言ってきたことを思い出して、私は心の奥底から後悔した。


私…1番最低じゃん…


自分に呆れ果てため息を落とすとズキっと脇腹が痛み…こうなったのも自業自得だなと思った私は見つからないカバンを諦めてデスクに行こうとエレベーターに乗った。


マネージャー室の階にエレベーターが着き壁伝いにエレベーターを降りると、息を切らしたソラと会った。



SR「ねぇさん!!やっと見つかった…探したよ!?」


*「ソラほんとごめん…病院に行きたいんだけどカバンが見つからなくて…」


SR「私の車にあるから…ほら、ねぇさん病院行くよ!」


私はソラに支えられながら病院に向かいソラの運転で病院に着くと診察を受けた。


診断の結果、骨折…


しばらくは絶対安静と診断された。


そして、またソラの車に乗り込むとソラの運転する車が私の家とは逆方向へと向かう。



*「え?ソラ?方向違うけど?」


SR「合ってるよ。ねぇさんはしばらく会社…行かないでいいことになったから。」


*「え…」


SR「ねぇさんこれ見て?」



赤信号で止まった隙にソラが自分のスマホを私に差し出し、それを見た私は息が止まるかと思った。



*「これ………。」


SR「騒ぎが収まるまで自宅謹慎になった。怪我の事もあるし…」


*「どうしよう…私のせいであの子たちが……」


SR「どうしようもないじゃん…好きなでしょ!?ジュイのこと…」


*「1番…ダメな形で知れ渡っちゃったな…この事…」


SR「ねぇさん、ジュイに酷いこと言われたでしょ?あれ全部リノンの仕業だから。リノンに嘘を吹き込まれてた。ジュイ今頃、寮で泣き崩れてるよ。」


*「え……もしかして……」


SR「寮に向かってる。」


ソラにそう知らされた私は無言のまま寮へと向かった。


寮の部屋に入るととても重い空気が漂っていて、それだけで私は圧倒されて倒れてしまいそうだった。



N「ねぇさん…怪我どうだった?」



ナオが心配そうに私にそう問いかけた。



*「うん…骨折してた…。」


H「ねぇさん…ほら、そこ座りな。」



ハヤトが私の顔を見て少しため息をつきながらソファに座るよう促す。



*「みんな…本当にごめんね…私のせいでこんな事になって…本当にごめん。」



立ったまま謝る私をユウが腕を引っ張るようにしてソファに座らせた。



Y「こうなったのはお前の責任なんだろ?下ばっか向いてねぇでどうやって責任とるのか話せよ…ねぇさんの前で。」



そう言って下を向くジュイにユウが圧をかけるのを見かねた私がつい、ジュイを庇うように助け船を出してしまう。



*「違うの。これは私のせいなんだよ…全部私が悪いの…だからジュイに責任はな……」


Y「ねぇさんはそうやっていつまでもこいつの事、甘やかすのか?そうやってまた、こいつを庇えばこいつはいつまで経っても自分の好きな女すら…守れない男のままなんだぞ?それでいいのかよ?」


*「いいのよ…私のことなんか守らなくていいの…」


Y「はぁ?」


*「私のことなんか…切り捨てればいいの…」



私の言葉を聞いて下を向いていたジュイが顔を上げて目に涙をためる。



*「あなた達はこんな事でぐらいでつまづいたらダメなの…もっと高みを目指さなきゃダメなグループなのよ…夢の邪魔をする人間は誰だとしても切り捨てなさい…それがたとえ…私だとしても…」



私の言葉を聞いたジュイは震える声で言った。



J「ミラにとったら…俺とのことは…こんな事ぐらいで終わらせれるってことかよ…。」


*「そうよ…寝たぐらいで勘違いないで…責任とか守るとか…そういう言葉でこの業界やっていけたら誰も苦労しないわ。私もこの事…会社に否定するからジュイも否定して。私たち本人が否定すればなんの問題もない。分かった?全てなかった事にするの。」



私が無表情のままそう言って立ちがるとジュイは私の前で縋るように泣き崩れた。



つづく

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